概要
1968年2月15日生まれ。兵庫県西宮市出身。吉本興業所属。
月亭八方門下の4番弟子に当たり、系譜上では上方落語の復興と発展に生涯を捧げた『上方落語四天王』の一角である3代目桂米朝一門に連なる。2018年時点の序列は二つ目。定紋は『結三柏』、替紋は『月』。
特技は剣道で段位は1級。
その腕前は、故郷である兵庫県西宮市での剣道大会で優勝した実績を持つほど。
本名は「やまさき」だが、「やまざき」と呼ばれることが多い。
来歴
改名以前
元々は漫才コンビ『GSX』(ガスペケ)としてダウンタウン(浜田雅功・松本人志)よりも一足先に東京芸能界へ進出し、関西若手芸人の登竜門『ABCお笑い新人グランプリ』で第12回最優秀新人賞を獲得するなど若手の実力派漫才コンビと目されたが、1993年にコンビを解散してピン芸人の道へ進む。
本人が「奇跡のベビーフェイス」と称する愛嬌ある童顔、渾身のギャグで客席を沈黙させる「スベリ芸」や自身のポンコツ振りを徹底的になじられる「いじられ芸」、怒りの矛先が明後日の方向に逸れる「空回り芸」など「『本人の努力に反して面白くない』という事実が面白い」なる独特の立ち位置でタレント活動を展開した。
一方、1998年4月に本放送を開始した『学級王ヤマザキ』の主題歌『ヤマザキ一番』『パイあるかぎり』で歌手デビューを果たし、同時期に元来の子ども好きと面倒見の良さを買われてリサ・ステッグマイヤーと共に1998年4月から2001年3月末まで『天才てれびくん』『天才てれびくんワイド』3代目総合司会を務める(番組リニューアルを跨いで司会を続投したのは山崎・リサ組のみ)など、出演する番組によって「ポンコツ芸人・山崎邦正」と「マルチタレント・山崎邦正」を使い分けるようになった。
面倒見の良さについてはかつてウエンツ瑛士が芸能活動を続けるか悩んでいた頃に相談に乗った事があったという。
転機
ダウンタウン最長の冠番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』初期から続投する最古参のサブレギュラーながら半ばイジメのような扱い(ダウンタウン曰く「鍛えている」)を受け続け、年を追う毎にそれが天井知らず(代表例:『さようなら山崎邦正』『蝶野ビンタ』)となっていっても自身のポジションであるという責任感から全て受け止めていたが、40歳を目前に控えて芸人としての自身の在り方に対する諸々の悩み(本人曰く「俺の20年は一体何やったんや。このままやったらアカン」「『笑わせる自分』と違う『笑われている自分』しかいてない」)が噴き出し、同時に新たな世界への挑戦意欲が湧き出していた折、ほぼ同期に当たる先輩で同い年の東野幸治へ相談した際に勧められた古典落語(山崎本人は2代目桂枝雀の『高津の富』を特筆し、本人曰く「こんなにおもろいの?!」)に感銘を受け、落語こそが自身の求めていた答えであると導き出した。
当初は聞いているだけで面白く感じ、台詞の言い回しや返し、ボケを差し込むタイミングの教科書としていたが、程なくそれだけでは満足できずに実際に演じてみたいと願うようになり、後輩の月亭八光を通じて八方に弟子入りを嘆願してこれを受理された。すでにタレントとしての芸能活動を長く展開し、吉本興業所属の芸人としても中堅の位置にある事から他の芸能活動で時間が空いていない場合には前座仕事を免除する「預かり」(この場合は仮入門)の形で入門が許可され、2008年5月に高座名『月亭方正』を拝命した。
入門して間もなく、立川志の輔に『鼠穴』の稽古を強引に願い出た事がある。志の輔からすれば「前座が他門派への出稽古に通う」(師匠に対する不敬の表れ)が落語界のタブーである事を重々承知していたものの、今ある立場に関わらず落語界に飛び込んで修行に明け暮れる勇気と熱意に感じ入り、敢えて方正の願いを聞き入れて噺が上がる(=落語を習得する)まで稽古に立ち会った。
2012年に入ると、落語家活動を本格化するために家族ともども東京から大阪へ移り、2013年1月から芸名を高座名で統一した。
落語家として
6代桂文枝襲名直前の桂三枝最末期に18番弟子となった桂三度(前・世界のナベアツ)同様、すでに芸歴20年以上の実績を持つ特異な前歴から真打並みの知名度を持ち、大勢の観客が注目する中で朗々と喋る舞台度胸も同列の二つ目とは比べものにならない。さらに、観客や視聴者の大多数は眼前の人物が「山崎邦正である」と知っているため、認知度の高いキャラクター性と芸歴の長さを活用して「まくら」(落語の本題に入る前の雑談)に出演番組のこぼれ話や苦労談を持ち込む。
7代目立川談志からは「阪神ネタさえやらなけりゃ本当に上手い」、笑福亭鶴瓶からは「一番まくらの上手い噺家」と評され、表で見せる明るい笑顔とは裏腹に芸事の指導には厳しい八方の直弟子として古典に主軸を置いている。大抵は20歳前後で足を踏み入れる落語界にあって40歳での出発という埋め難いハンデを背負っているものの、師匠の八方曰く「まるで取り憑かれているように落語に打ち込んでいる」「彼は真面目で努力家だが、何よりも落語に対する意識が高い」と評しており、遅出の落語家と自覚しつつ歩みを進める真剣な姿勢を物語っている。当の本人も、これまでとは全く異なる土俵での辛さ、特に記憶力の低下に苦しむ事実を飲み込んだ上で「今も楽しい。今も青春なんかなって感じる」と語り、真摯に落語と向き合う日々を送っている。
また、着物を着る事によってこれまでのキャラクターではない「落語家・月亭方正」として大人になれたとも述べており、ガキ使の定期的なコーナー・自著のアオリ文となった「さようなら山崎邦正」が現実になったと言える。
持ちネタ
古典落語
など東西限らず多数
新作落語
- えんま大王(作:山崎邦正) ※別名『天国か地獄か』。地獄を題材に取った噺に見られる「閻魔の裁き」を素地としており、サゲ(オチ)の型が決まっているために登場する亡者の入れ替え次第で内容を自在に変えられる。
関連タグ
月亭可朝:3代目米朝の2番弟子にして八方の師。幕末以来断絶していた月亭号を復活させた月亭中興の祖。
本村健太郎:弁護士兼俳優。『行列のできる法律相談所』で当時の司会・島田紳助から「邦正に似ている」といわれ物まねをするようになった。実は芸歴は本村が3年先輩。