同名の小説、漫画、アニメ作品についてはスーパーカブ(小説)を参照。 |
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概要
日本のみならず世界中で愛されている、ホンダを代表する傑作である。
登場したのは1958年。
以降、60年以上に渡ってモデルチェンジや仕様変更を繰り返しながら生産されている。
一般ユーザー以外にも新聞屋や郵便屋などが日常的に使っている為に誰でも一度はその姿と排気音に覚えがあるはずである。
海外でもアジア圏を中心に根強い人気を誇り、ベトナムなどでは「カブ」・「ホンダ」がバイクの代名詞になっている程である。
発売当初はアメリカでも大ヒットして「バイクは不良の乗り物」という当時のイメージの払拭に多大な貢献をした。
2017年には、シリーズの総生産台数が1億台を突破。
この数字はT型フォード(1500万台)やビートル(2152万台)を遥かに上回るもので、単一車種としては世界一売れた乗り物である。
特徴
操作性
開発時の目標に「蕎麦屋の出前が片手で運転できること」があった為にMTのバイクでありながら実際に左手を使わずに運転できる。
スイッチ類は右手側に集約され、クラッチ操作をせず足踏みだけで変速できる自動遠心クラッチを開発。
これは靴のつま先を傷めないというメリットもあり、支持を広める一因となった。足先を動かす方向自体は非シーソー式の他社バイクと同じ。
ちなみにクラッチ操作が不要なため構造はMTでありながら道路交通法上はATとして扱われ、原付二種のモデルはAT限定免許でも運転可能。
エンジン
発売当時は原付の主流は2ストロークエンジンで4ストロークエンジンの採用はカブが初めてであった。
一般的にパワーで劣る4ストロークながらも当時の2ストロークを軽く凌駕する4.5馬力という高出力を叩き出した。
加えて非常に低燃費である事も有名で労って走れば90km/L、飛ばしても60km/L程度を記録する。
現在では環境規制の強化に対応してパワーが落ちており、高出力なイメージは無くなったものの低燃費は健在である。
余談だがホンダは毎年「エコマイレッジチャレンジ」というカブのエンジンをベースにした自作車両での燃費大会を開催している。
市販車無改造クラスでは最高541.461km/Lでカブのエンジンをベースとした競技車ともなると3000km走る強者も少なくなく、大会公式記録では3,644.869km/L(平成11年度)という燃費を打ち立てたこともあった。
車体
乗り降りのしやすさを考慮し、アンダーボーンフレームと呼ばれる股下を通るフレームを採用している。
このアンダーボーンフレームはビジネスバイクのみならず、現在ではアジア圏のスポーツバイクにも普及しており、バイクの新しい形態を築いた。
足元を水や風から守るレッグシールドも特徴の一つである。
カブ特有のこのような車体形状は2014年に立体商標登録として特許庁に認定されている。
耐久性
カブを語るうえで欠かせないのが常識破りなまでの耐久性である。
特にアジア圏においては過積載が日常的に行われ、およそ原付が積むようなレベルを超えた荷物を日常的に背負っているが、全くと言っていいほど故障とは無縁である。
これは発売当時の日本の道路が整備されておらず不整地でも問題なく荷物を積んで走れるよう冗長性を持たせて設計した為である。
度を超えた頑丈さは数々の伝説を生みバイクに詳しくない一般人にも「壊れないバイク」というイメージを広めた。
とある海外番組で「カブいじめ」とも呼ぶべきあらゆる酷い仕打ちを受けても壊れず、最終的にビルの上から落とされたが、ちゃんとエンジンはかかりギアも入り、タイヤが歪みながらも前進して見せた。
これに驚いた実験者は「高性能爆弾でも使わない限りカブは壊れない」というコメントを残している。
漫画やアニメでもその耐久性をネタにされることがあり、ばくおん!!漫画第24話では自転車にも乗ることができなかった三ノ輪聖がスーパーカブで何度も転倒することにキレてハンマーで叩き壊すシーンがあるがそれでもエンジンがかかったほか、アニメ映画MEMORIES内の最臭兵器では主人公が運転中に自衛隊の総攻撃を受け、直撃はしなかったものの爆風や振動で本来ならすぐ壊れるはずがボロボロになりながらも30km走行したという話がある。
ホンダ自身もカブの耐久性は未知数だとしている。
現況
長らく国内生産してきたカブだが、2009年にはフルモデルチェンジを受けたスーパーカブ110が登場。
それまでのアイデンティティだった鉄板プレス構造のフレームから、鋼管フレームにプラスチック外装を被せるスタイルとなった。
この頃になると片手で運転するような人もほぼ居なくなった為なのか、一般的なバイクと同じように左手側にもスイッチを配置した。
2012年には50cc共々モデルチェンジの際に同時に生産が中国に移管された。
デザインは世界基準に合わせるためにアジア寄りになり、これは日本では賛否が分かれた。
性能面では全車が4速ミッションになり、セルモーターも標準化するなど進化した。
2017年には再度のモデルチェンジを受けて生産が再び日本に戻った。
デザインもスーパーカブの源流ともいうべき伝統ある様式に戻り、原点回帰を果たしたと言える。
度重なる環境規制対応と技術の進化により価格は原付にしては高価になってしまったが、今まで築いた多種多様な実績からホンダを代表する看板商品として走り続けている。
「カブ」の名称について
スーパーカブという名称はこれ以前に発売されていた自転車用外付けエンジン(現在のモペッドの前身)である「カブF型」に由来する。
ただし現在では「カブ」と言えば基本的にスーパーカブの事を指す。
あまりに売れて普及しすぎてしまった為にビジネスバイクの代名詞的存在となってしまい、しまいには他社のバイクでさえも詳しくないユーザーからは「ヤマハのカブ」や「スズキのカブ」と呼ばれていた。
関連項目
- 原付東日本縦断ラリー:水曜どうでしょうの企画。使用された原付がスーパーカブ。
- だるま屋ウィリー事件:上記の企画中におきた。
- 原付萌奈美:当該キャラクターの愛車。
- YOUは何しに日本へ?:来日した外国人がスーパーカブで日本を巡る旅に、密着取材を行った。
- スーパーカブ(小説):カクヨムの小説。書籍出版され、漫画化および2021年4月よりテレビアニメも放送。
- 秒速5センチメートル:種子島の高校生の通学バイクがカブに指定されており、作中で実際に主人公たちが乗って登下校する。
- 須賀夏美:天気の子の登場人物。スーパーカブ110が愛車。
- 三ノ輪聖:ばくおん!!の登場人物。最初期はスーパーカブ50が愛車だった。
- ケンヂ:20世紀少年の登場人物。実写映画版で後半に乗っていたチョッパー風のバイクはスーパーカブである。
- スーパーカブ(映画):2008年公開の斎藤慶太主演の映画。元走り屋の主人公が諸々の事情から住み込みで働くこととなった蕎麦屋の出前用カブをフルチューン+魔改造して爆走するストーリー。劇場未公開の続編もある。作中での「スーパーカブ」の呼称は店の名前に由来した主人公の二つ名として一度使われたのみで、車名は「SC(Super Cubの頭文字)」や「90㏄の出前バイク」などと呼ばれていた。
関連車種
同じ「カブ」の名を冠するバイク
カブの(横型)エンジンを使用したバイク
カブのエンジンは汎用性に優れており、細かい仕様変更を受けて様々な車種に流用されてきた。