概要
2019年6月6日、写真週刊誌「フライデー」誌上で、カラテカの入江慎也が2014年12月に渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで行われた振り込め詐欺グループの忘年会に参加するという「闇営業」を吉本興業の所属タレント11名(後にワタナベエンターテインメントからもザブングルが関わっていたことが判明)に仲介していたのを暴露され、吉本との契約を解除されたことが発端で表面化した問題である。
振り込め詐欺グループの忘年会に参加した芸人の中には雨上がり決死隊の宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号の田村亮という冠番組を複数抱えた芸人もいたことや、実際には計300万円を受領していたにもかかわらず仲介役の入江と共に口裏合わせをして「ノーギャラ」と嘘を吐いたことから批判が殺到。
また、これとは別にスリムクラブの両名が2016年に知人の他社所属芸人を通じて反社会的勢力の人物が参加した飲食店オーナーの誕生日パーティに出演し金銭を受け取っていたことが発覚しこちらも無期限謹慎処分を受けている他、楽しんごも別件の闇営業が多数発覚して闇営業常習犯とみなされ解雇処分となった。
元々、吉本興業の過剰なテレビ番組の占拠や、株主が全在京マスコミであること(ひな壇芸人の項目も参照)から所属芸人が何か不祥事を犯してもマスコミの忖度により批判をぼやかされやすい形態、ほぼブラック企業と呼んで差し支えない所属タレントの低賃金など企業としての在り方を問題視する声は多く、次長課長の河本準一が売れっ子芸人になってからも母親が生活保護受給を続けていたことが発覚するなど散発的に社会的問題が浮上していたが、ここにきてそれが爆発することとなった。
そして、7月19日付で宮迫が契約解除。翌20日の15時、宮迫と亮が独断で会見を開き「6月8日に吉本社員と弁護士に受領金額を明かしていたが、『今さらひっくり返せませんよ』『静観でいきましょう』と口止めさせられた」「岡本社長に『会見を開いたらお前ら全員クビ。俺には力がある』『在阪在京5社は俺の味方』と脅された」など吉本興業の内部事情を暴露した。
これを受けて、ダウンタウンの松本人志が当日夜に吉本上層部と直接労使交渉し、翌週のワイドナショーを緊急生放送に切り替え、結果を報告した(※)。また、加藤浩次も21日のスッキリで、不祥事をパワハラで解決しようとする社長の下には居たくないと啖呵を切って吉本上層部への乗り込みを予告し、その日の夜に吉本上層部と約3時間におよぶ交渉を行う。
この2人の「お説教」とも言える行動に遂に吉本上層部が折れ、岡本社長が緊急会見を開いて宮迫と亮の処分撤回を発表した。
(※これについては、突然の生放送変更であることや鮮度が非常に問われる案件であったため、番組唯一の通常時遅れネット局では放送されず別の番組に差し替えられた)
事の背景
結果的に事務所に申告せず、あろうことか振り込め詐欺グループという反社会勢力組織と携わったことで世間から大々的に報道される事になる芸人であるが、そもそもこの闇営業の発端は上記のように事務所側が与えるタレントへのギャランティの低さが原因とも言われている。
元々芸能界で活躍する俳優、歌手、タレント等の職業は決して収入が安定した職業とは言えず、仕事も選ばれる立場であるため毎回仕事も必ず入って来るとは限らない為、一般企業のサラリーマンやOLと比べて無名の者は月収は遥かに低く、当然それだけでは生活出来ないのでアルバイト等の副業で生活するのが殆どである。加え、特にお笑い芸人は収入の差が激しく毎月数千万円以上稼ぐ売れっ子に比べ売れない無名は数千円から無収入の者も少なくない。
そして、この闇営業を起こした芸人全員は芸能事務所の大手である吉本興業に所属しており、この吉本興業は数多くの番組や劇場をプロデュースしている反面、ギャラより高い交通費として有名な程ギャランティが低く、特に入所したて若手は500円にも満たない事が多く、場合によってはノーギャラのケースも少なくない。その為、芸人の仕事だけでは到底生活出来ずアルバイトを余儀なくされるが、毎回のように事前連絡も無く突如として交通費にも満たない仕事が入り、事あるごとにアルバイトを休まなければならず、その結果バイトをクビになり、生活に困窮する芸人も少なくなかった。
仮に売れたとしてもそのギャラは決して多いとは言えず、番組レギュラーを持つ芸人でもその稼いだギャラの大半は事務所側に差し引かれてしまい、ピースの綾部祐二曰くタレントと事務所で1:9 という破格な割合だったという。
また、当時の吉本興業はもはや支配と言っていい程タレントに対する束縛が強く、会社の方針に反くタレントは即解雇と言われる程芸人に対する締め付けが厳しかったという。それに加え、コンビやトリオは売れ具合によってメンバー個人に対し待遇が異なるという不平等化が進んでいたという。
後に闇営業の発起人でもある楽しんごは「大したギャラも貰えていないのにオネエキャラを無理やり作るよう強調され嫌気を指していた」とコメントしており、同じ入江慎也も相方の矢部太郎がメディアで大々的に活躍しているのに対し、自分はメディアでの仕事が減らされている上コンビでの活動をも休止させらてる事に反感を抱いており、「相方が活躍しているなら自分もメディアに出させてくれ」と吉本に問いかけたがそれに対し吉本側は「お前は矢部と比べて頭も良くないしこれと言った面白味や特徴もないから無理」と平然と返されてしまい相方のとの差別化に恨みを抱いていたという。
このように闇営業の背景には事務所側からの目に余る圧力と権力に加え事務所とタレントとの不協和音が重なったと考えられている。
賛否両論
この闇営業の事案は各芸能界からの賛否が相次ぎ、特に大物芸能人からは貧困や連絡不足による同情派や反社会勢力に関わるという問題を起こし糾弾する反対派に分かれ、芸能界に波紋を翻した。
- 同情、賛成派
お笑い界の重鎮でもあるビートたけしはこの闇営業に対し、同情の声を上げており、「闇営業をしなきゃ食えないような状態にする事務所もおかしいと思う。最低限の金銭補償くらいすればいいなと思うんだけれど」とコメントしており事務所がタレントに対するサポート不足を問題にしていた。
同じく明石家さんまも吉本興業がギャラさえ上げれば、闇営業に行かなくても済むとコメントしており、吉本興業に対するギャランティの低さを問題にし、かつて自分も後輩芸人と共にギャラを上げるように当時の社長に直談判したが、結局のらりくらりで断られてしまったという。
また、岡村隆史も自分が事務所に入所した頃から先輩芸人の無申告による闇営業らしき事が度々あったが、当時の吉本興業は特に問題にせず、その事に対して直接報告しても事務所側は「よくある事だから気にすることはない」と関心を示すことは無く、結局それに関わっていた芸人は特に何ら咎めも受けることは無かったという。その為、吉本興業の管理体制は昔から緩かったとコメントしていた。
- 反対派
その一方で、闇営業に関わった芸人に対し徹底的に非難し、逆に事務所側に対しても擁護する者も多くいた。
その中でも関西の女帝とも呼ばれる上沼恵美子はこの闇営業は芸人の金銭苦難による出来事だと報道されたのに対し、彼女は「それは芸人さんのわがままやと思うし、売れないのはあんたらの力がないからや!」と一喝し、どんな状況においてもそれを決して事務所や周りのせいなどにしてはいけないと示していた。上沼曰く吉本興業は関東は勿論、在阪局を中心に数多くの番組や劇場をプロデュースしており、彼らが真面目に努力を重ね続ければいつかメディアに注目され、それなりの安定した収入を得られるのは間違いないとコメントしていた。
同じく吉本興業に所属しているゆにばーすの川瀬名人も自身がデビューした頃から事務所から世話になっており、売れない頃からもマネージャーを含め事務所側から徹底的にアドバイスを受けられたお陰で芸人としての仕事を得ることが出来たとコメントしており、当時メディアでは全く注目されていないにも拘らず月収は37万だったという。その為、彼自身は吉本興業に対し不信感はおろか恩義を感じていると事務所側に対し擁護する見方を示していた。
また、爆笑問題の太田光は自身の番組において闇営業に関わって宮迫に対し彼が有名になるつれて徐々に驕りが出てしまった結果がこれだとコメントしており、既に天狗になっていた宮迫が身近に落とし穴が常にある事にも気づかず、その警戒心すら薄れてしまったいたと表現し、他の芸人に唆され泥沼にハマってしまった彼に対し芸人としてのプロ意識の低さを指摘した。
闇営業芸人のその後
相方の田村淳のサポートもあり、翌年1月30日に復帰。
復帰会見は宮迫と会見を行ったのと同じ場所で開かれ、淳が設立した吉本興業傘下の株式会社LONDON BOOTS所属になることが発表された。元々の亮の人柄の良さに加え淳の亮を復帰させるまでの手順が的確だったため、復帰に異論を唱える声は少なく、むしろ淳の手腕が高く評価された。
4月に冠番組の「ロンドンハーツ」にも復帰したが、淳の意向でしばらくは研修生扱いで裏方での参加。2021年より晴れてスタジオへ戻った。
この騒動で最も変化があった。
会見後一度は吉本から再契約を約束されたが、強盗犯と写真を撮っていた第2報が流れたことで取り消され、明石家さんまが個人用に立ち上げた「オフィス事務所」の一時預かりとなる。
そんな中、亮の復帰会見前日に株式会社Guild制作のYouTubeチャンネル「宮迫ですッ!」でYouTuberデビュー。最初は批判が殺到したが、半年後にはチャンネル登録数が100万人を突破するなど人気チャンネルになった。
その一方、再生数稼ぎや話題作りのために2年前のVALU騒動で詐欺同然の行為を働いているヒカルや偽パワハラ騒動で炎上を引き起こしたレペゼン地球といった一般的にグレーゾーンと見られているYouTuberとばかりコラボしたことからさらなる非難を浴びる羽目に。
その後、相方・蛍原徹との話し合いの結果、2021年8月17日の「アメトーーク」配信にてコンビ解散を発表。ロンブーとは対照的な結果となった。
宮迫博之が声優担当したアニメ、ゲームは南雲剛以外全て交代を取る形で降板になった。
8月に全員が復帰。
契約解除後は事実上芸能界を引退し、表舞台から姿を消す。それから1年間清掃業のアルバイトに精を出し、Twitterにおいてその経験を自分の会社に活かしたい、また、もう二度と同じ過ちを繰り返さないように歩んでいきたいと綴った。その後、故郷の小平市において清掃会社を立ち上げ、現在は清掃事業を中心に活動している。
元々整体師の資格を取得しており、契約解除後はフリーでの活動の傍ら整体師としても活動している。現在は東京、横浜、名古屋にマッサージ店を出店しており、その他にもエステティシャンの資格も取得しており、エステも兼業で行っている。その為、芸能人御用達の店になる程有名となり、年収は芸人活動時代を遥かに上回っており、新車を数台買うほどに成長した。
他と違い吉本興業所属ではなかったため、当時吉本をターゲットにしていたマスコミからはあまり報道されず、一時期の活動休止処分は受けたが9月に復帰。
この騒動で三重県四日市市の観光大使を解任されたが、復帰後再任命されている。
その後、ツッコミ役である松尾のモチベーション低下を主な理由として、2021年3月をもってコンビ解散を発表。松尾は芸人を引退して放送作家に転身、ボケ役の加藤は引き続きピン芸人として活動。
影響
国の行政機関である公正取引委員会(公取委)は、ジャニーズ事務所に独占禁止法違反で注意を行った直後にこのトラブルと、日本を代表する大手芸能事務所2社にメスを入れることに。闇営業以上に書面の無い契約が常態化していたことを特に問題視していた。
公取委はこの騒動を重くみて、芸能事務所全社に緊急調査を実施。折しも独占禁止法の改正(=フリーランス労働者への適用)を審議していた最中であり、改正内容に多大な影響を与えることになった。
この影響から、翌年以降芸能人の事務所独立が急増することになり、前述の加藤浩次も吉本から独立している。また、ラランドやフワちゃんなど、既存の芸能事務所に頼らないタイプのタレントが世に出てくることとなった。また、TV局も吉本芸人以外の芸人やタレントを起用するケースも増え、またM-1グランプリでも以前は吉本芸人が制するジンクスを打ち破る形で2021年に錦鯉が制する形で吉本芸人以外の芸人が活躍するケースが増えてきたのである。
関連タグ
徳井義実、木下隆行、渡部建:闇営業とは無関係だが、騒動と同時期、1年足らずの間に別の不祥事で干されることとなった芸人。なお、前者は復帰している。
上岡龍太郎:引退したお笑い芸人。現役時代に「芸人とヤクザは一緒」、「楽して儲けたいという考えの人が芸人とヤクザになる」というジョークを交えて語っていたが、それが数十年後に現実のものとなってしまったことで当時のネットニュースでも話題になった。
大相撲野球賭博問題:名称が似ているが、心境や事の発端などは異なる。