概要
ザフトが開発した新型エンジン。C.E.73年10月2日から74年1月初頭にかけて行われた第2次連合・プラント大戦において幾つかの高性能モビルスーツに採用された。
ファーストステージシリーズで実用化されたMS用ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核エンジン(核分裂炉)と、セカンドステージシリーズで実用化されたデュートリオンビーム送電システムを併せ持ったハイブリッドエンジンである。
プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルが、最新鋭の次世代MS群『サードステージシリーズ』開発の折に「最高の技術を全て盛り込む」ことを指示したためにその一環として開発された。
名称だけではわからないが核分裂炉であるため、使用にはニュートロンジャマーキャンセラーの併用が不可欠である。しかし、第1次連合・プラント大戦の停戦条約「ユニウス条約」では、MS等の兵器へのニュートロンジャマーキャンセラーの搭載が禁止されている。それにもかかわらず導入に踏み切ったのは、第2次大戦開戦のきっかけとなった連合のMk5核弾頭ミサイル発射以降条約が形骸化していることが大きい。
なお、ユニウス条約はあくまで連合・プラント間の停戦条約であるため、どちらにも属していない機体には関係ない。
仕組み
主動力となる核分裂炉には、ファーストステージシリーズに搭載された従来型核エンジンよりも小型・高出力化した超小型原子炉(ウルトラコンパクト・ニュークリア・リアクター)を採用している。その上でデュートリオンビーム送電システムに対応する高性能なバッテリーも併載している。2つの動力が相互補完し合うために、理論上は戦闘中のエネルギー切れ(パワーダウン)が発生することはなく、従来型核エンジンの数倍の出力を発揮する。要するに、従来型バッテリーが抱えていた「短時間でエネルギーが切れる」という欠点を核エンジンの余剰エネルギーを適宜供給することで解決し、従来型核エンジンが抱えていた「消費量が供給量を上回った瞬間にパワーダウンする」という欠点を不足分をバッテリー側から供給することで解決している。これにより、ストライクフリーダムはフリーダムでは不可能だったミーティアの「MA-X200 ビームソード」の大延長を実現している。しかし、デスティニーのように兵装周りの出力調整が不十分なために不要なエネルギー消費が多い場合はバッテリー側のエネルギーを使い切ってそのままパワーダウンしてしまうこともある。
また、デュートリオンビームビームを受信する装置も頭部に備え付けているが、デュートリオンビームを照射できる母艦はセカンドステージシリーズ専用運用艦ミネルバしか存在しないため、デュートリオンチャージを用いるにはミネルバ艦載機である必要が出てくる。なお、作中ではどの搭載機も相互補完が間に合っていたためか、デュートリオンチャージを行ったことはない。
専用コックピット&OS
本エンジンのポテンシャルを最大限活用するために、専用コックピットと「Gunnery United Nuclear Deuterion-Advanced Maneuver (SYSTEM)(核・デュートリオン統合先進機動砲撃システム)」という専用OSが用意されており、サードステージの2機に搭載されている。これにより搭載機は通常モードとハイパーモードの二種類に機体出力の調整を行うことができる。少なくともシン・アスカの戦闘スタイル的にデスティニーについては常時ハイパーモードだった可能性が高い。しかし、搭載機のロールアウト直後は調整が不十分だったため、エンジンへの高負荷時に相互補完が乱れてパワーダウンを起こすといった問題が生じていた。
また、バッテリーを併載していることからバッテリー周りの計器は従来のバッテリー機のものを踏襲しており、従来通りにバッテリー側のエネルギー残量が少なくなるとアラートを表示するようになっている。
一方、ファーストステージの機体とデルタアストレイに搭載されている核動力機専用OS「Generation Unsubdued Nuclear Drive Assault Module (Complex)(抑制されていない核駆動を使っている強襲モジュール複合体)」をアップデートするだけでも単なる高出力な核エンジンとしてなら問題なく運用できる。こちらは多様な機体で長期間使われてきたOSであり信頼性が高いためか、専用OSのように何らかの問題が生じることはなかった。
採用経緯
エンジン自体の具体的な開発時期は不明だが、採用自体はC.E.73年10月以降にザフトが第2世代ドラグーンシステムの性能実証を行うため製造したZGMF-X3000Q プロヴィデンスザクにて、ドラグーンの性能を最大限に発揮するために採用されたのが初となる。その後、サードステージシリーズの1機としてプロヴィデンスザクをアップデートする形でZGMF-X666S レジェンドが完成した。また、ZGMF-X56S インパルスのシルエットバリエーションの1つであるZGMF-X56S/Θ デスティニーインパルスでみられたエネルギー不足問題を解消するために一から再設計されたZGMF-X42S デスティニーにも採用された。デスティニーとレジェンドは完成してから間を置かず実戦投入され多大な戦果を挙げた。
このエンジンの設計データはターミナルへ流れており、ファクトリーで開発中だったZGMF-X20A ストライクフリーダムとZGMF-X19A インフィニットジャスティスの動力として採用された。この2機はC.E.73年12月下旬頃にオーブ連合首長国所属の機体となるが、オーブはユニウス条約を批准していないため条約違反にはあたらない。
搭載機
ザフト製
ファクトリー製
余談
ストライクフリーダムとインフィニットジャスティスに用いられている技術は最新のものでもセカンドステージシリーズまでなため、本エンジンはセカンドステージシリーズが開発されていた時点で既に開発・完成していた可能性が高い。
ユニウス条約の条文的に、ニュートロンジャマーキャンセラーを兵器に搭載しなければ条約違反にならないため、エンジン単体としての開発自体は問題なく行える。