概要
NHK大河ドラマの第14作目で、1976年の1月4日から12月26日まで放送された。
主人公は平将門、舞台となる時代は10世紀前半(平安時代中期)。2024年までに制作される大河ドラマの中では最も古い時代を舞台とした作品である。書籍『大河ドラマの黄金時代』(春日太一著)によると、番組内容の決定より先に加藤剛の主演が決定しており、その加藤が将門を演じることを希望。そこから海音寺潮五郎の小説『平将門』、将門と同時代に朝廷に反旗を翻した瀬戸内の武将藤原純友を主人公とした『海と風と虹と』の二本を、足して一つにする形で原作とすることが決まった。
NHKに全話の映像が残っている最古の作品でもある。行方知れずだったVTRが2000年代に入ってからNHKの倉庫から全話分見つかり、それにデジタルリマスター処理を施した全話収録の完全版DVDが2007年7月に発売された。
主要登場人物
主人公
平小次郎将門(たいらの こじろうまさかど)
性格は純朴で武芸・学問ともに優れ、理不尽な事には毅然として立ち向かう漢。
平氏一門
平良将(たいらの よしまさ)
演:小林桂樹
鎮守府将軍。将門の父。
正子(まさこ)
演:新珠三千代
将門の母。愚直で一本気な将門を母として案じている。
良子(よしこ)
演:真野響子
良兼の娘。
平三郎将頼(たいらの さぶろうまさより)
将門の弟。上洛した将門に代わり家を守る。
平四郎将平(たいらの しろうまさひら)
将門の弟。学問に秀でている。学問を学ぶため、将門のいる京へ上る。
豊太丸(とよたまる)
演:磯永明彦
将門の子。
伊和員経(いわの かずつね)
演:福田豊土
平良将・平将門の郎党。将門の上洛にも付き従う。坂東に戻ってからも将門の側近として活躍する。
老郎党
演:日野道夫
将門家の下男。将門が京から帰っても妻を娶らないことを気にかけている。
老乳母
演:関京子
将門の老郎党の妻で将門の乳母。将門が京から帰っても妻を娶らないことを気にかけている。
桔梗(ききょう)
演:森昌子
葦津江郷の娘。源扶に襲われたところを玄明と将門に助けられる。
子春丸(こはるまる)
演:島米八
桔梗と同時期に将門の館に仕えるようになった若者。
将門の側近たち
鹿島玄明(かしま はるあき)
演:草刈正雄
玄道の弟。将門と親しくなる。驚異的な脚力を持っており、将門と純友の間を往来する。
実は武蔵武芝の子で、武蔵とは姉弟だった。
鹿島玄道(かしま はるみち)
演:宍戸錠
お尋ね者で、初対面では将門と喧嘩をするが、将門を気に入り、源扶に将門と貞盛が襲われた時には玄明と共に助ける。
興世王(おきよおう)
演:米倉斉加年
勘解由判官→武蔵権守。
皇族だが官僚としてはパッとしない人物。盗賊たちを捕らえ将門が京で評判になっている時、単に顔を見たいという理由でいきなり屋敷を訪れ将門と対面する。後に武蔵権守を命じられ坂東に下る。反乱を起こした将門の参謀役になり自身の権威を高めようとする。
菅原景行(すがわらの かげゆき)
演:高橋昌也
菅原道真の三男。京から常陸の荘園に移る。その際、京に来ていた将平、三宅清忠も同道する。坂東に将門が戻ると、開墾などのことで将門へ世話になる。
三宅清忠(みやけ きよただ)
演:近藤洋介
小一条院藤原忠平家人→菅原景行家臣。
将門の小一条院の同僚。将門に目をかけているが、実は純友とも関係がある。純友の影響で官位のことは気にしていないと言っていたが、将門の任官の際には「正直言って妬ましい。不思議なものだ」と複雑な心中を将門に語った。その後、景行とともに坂東に下り、将門の側近になる。
多治経明(たじの つねあきら)
演:金内吉男
羽生御厨の豪族。下野国境で将門が良兼等の軍を破ると、将門の元に押しかけて将門の弟分と名乗る。
文屋好立(ぶんやの よしたつ)
演:大宮悌二
相馬の豪族。下野国境で将門が良兼等の軍を破ると、将門の元に押しかけて将門の弟分と名乗る。
国香・貞盛一門
平太郎貞盛(たいらの たろうさだもり)
演:山口崇
左衛門少志→左兵衛少尉兼検非違使尉→左馬大允。
国香の嫡子。将門の幼馴染み。将門と同時期に京へ上洛する。坂東へ帰るつもりはなく、都での栄達を望んでいる。
平国香(たいらの くにか)
演:佐野浅夫
前常陸大掾。
良将の兄。将門の伯父であるが、領地を横領したりしている。
秀子(ひでこ)
演:丹阿弥谷津子
国香の妻で貞盛の母。将門の土地を横領し、仮病を使い将門との対面をうやむやにしようとする国香に「いっそ土地をお返しなされ」と諭す。
侘田真樹
演:藤巻潤
平国香の家臣。
小督(こごう)
演:多岐川裕美
源護の三女。神社の祭礼で将門と関係を持つが、その場では名を告げず立ち去る。後に貞盛の妻になる。
良兼一門
平良兼(たいらの よしかね)
演:長門勇
前上総介。
良将の兄で将門の伯父。将門の留守中、国香とともに領地を横領する。
詮子(せんこ)
演:星由里子
護の長女。良兼の後妻として嫁ぐ。
公雅(きみまさ)
演:高野浩幸
平良兼の子。
公連(きみつら)
演:森井信好
平良兼の子。
公元(きみもと)
演:佐藤健一
平良兼の子。
良正一門
平良正(たいらの よしまさ)
演:蟹江敬三
将門の叔父。将門の留守中、国香とともに領地を横領する。
良正の妻
演:平井道子
定子(さだこ)
演:新藤恵美
源護の二女。良正の側室となる。
良文一門
平良文(たいらの よしふみ)
演:渡辺文雄
将門の叔父。武蔵に領地を持つ。遠方ではあるが、良将の兄弟の中で唯一将門のことを気にかけている。
源氏一門
源護(みなもとの まもる)
演:西村晃
常陸大掾。
小督の元に通ってきた将門と出会う。
源扶(みなもとの たすく)
演:峰岸徹
護の嫡男。女好きの乱暴者で知られ、神社の祭礼に来た将門と貞盛を襲う。
源隆(みなもとの たかし)
演:神太郎
護の二男。良子が将門に奪われると兄と共に将門を騙し討とうとするが、敗北し将門に討たれる。
源繁(みなもとの しげる)
演:牧村襄
護の三男。良子が将門に奪われると兄と共に将門を騙し討とうとするが、敗北し将門に討たれる。
関東の豪族たち
田原藤太(たわらの とうた)
演:露口茂
将門が少年時代に父・良将とともに陸奥へ下向する際、縛られ馬で連行される藤太と出会う。後に藤太は下野国の有力豪族となる。成長した将門に好感を持つ一方で、彼の政治力に疑問があることを懸念し、また坂東の大地を将門と朝廷との争いで荒廃させたくないとの判断から、涙を呑んで将門を追討する。
佐野八郎
演:松村彦次郎
藤太の側近。藤太には「爺」と呼ばれている。
武蔵武芝(むさしの たけしば)
演:宮口精二
足立郡の郡司。興世王、経基と対立し将門の仲裁を受ける。
国司・役人たち
下野国府
大中臣全行
演:林昭夫
下野守。良兼が将門との戦いの前に豪族たちと誼を通じるため、下野国小山郡に進出した時に下野守として抗議した。
武蔵国府
源経基(みなもとの つねもと)
演:菅野忠彦
清和源氏初代。興世王とともに武蔵に介として下向する。
常陸国府
藤原惟幾(ふじわらの これちか)
演:横森久
常陸守。
将門に常陸国府を占領され、なおも公の権威を信じていたが、高飛車な態度が将門の怒りを買い、あっけなく降伏する。
藤原為憲(ふじわらの ためのり)
演:中島久之
惟幾の子。戦の経験がないのにもかかわらず、重税にあえぐ民人をかりたて将門と戦おうとする。
京の人々
藤原忠平(ふじわらの ただひら)
演:仲谷昇
京に上洛した将門が仕える。将門が坂東に帰ると、貞盛が仕える。
藤原仲平(ふじわらの なかひら)
演:永井智雄
忠平の兄だが、出世は遅れをとる。その代わりに財を蓄えているとの評判がある。純友が仕えている。
藤原師尹(ふじわらの もろただ)
演:清家栄一
忠平の五男。
貴子(たかこ)
演:吉永小百合
荒れ屋敷に住んでいるが、歴とした嵯峨天皇の曾孫にあたる女性。その出自に恥じない気品と、凛とした美貌の持ち主だが、明るく天真爛漫な性格。その反面、男に対する依存心が強く、嫉妬深い一面もある。将門は足を怪我した際、彼女の乳母から水を貰い、御礼のために訪れたところで貴子と対面する。
ある時、貴子は病にかかるが、将門の手配で医者が派遣され事なきを得た。それから将門はしばしば貴子の元へ通うことになる。そして将門の紹介で貞盛も屋敷を度々訪れるようになる。
貴子の乳母
演:奈良岡朋子
荒れ屋敷を気にかけた将門が屋敷内で足を怪我すると、手当の水を用意した女性。そのことがきっかけで将門と貴子が接近する。
貴子の屋敷に仕える婆
演:春江ふかみ
貴子の家が焼けた後、坂東への旅にも付き従い、貴子が遊女に売られた後も従い続ける婆。
武蔵(むさし)
演:太地喜和子
盗賊の頭領。純友とは深い仲。純友が伊予に下る際、伊予に来るよう誘われるが、純友は盗賊の頭である自分が好きであるとの思いから同行しなかった。
死の直前に玄明とは姉弟だった事が判る。
大中臣康継(おおなかおみのやすつぐ)
演:村上不二夫
小一条院藤原忠平家司。
紀豊之(きの とよゆき)
演:綿引洪
学生の殿といわれている。
藤原子高
演:入川保則
山陽道巡検使として海賊の取締にあたり、山陽道の国司を督励する。
小野道風(おのの みちかぜ)
演:小池朝雄
京に上洛した将平が師と仰ぐ人物。酒が好きで、部屋は散らかり放題の変わり者。
季重(すえしげ)
演:沢竜二
武蔵を頭領と仰ぐ盗賊。季光を殺されたことから将門を仇と見なす。
季光(すえみつ)
演:無双信
武蔵を頭領と仰ぐ盗賊。季重の弟。
良高(よしたか)
演:伊藤正博
多治比の文子
演:杉浦悦子
右近の馬場の火雷天神の巫女。貴子の運が東国の男によって開かれると神託を授ける。
恒明王
演:小林英樹
宇多天皇の血筋を引く皇族だが、盗賊をはたらく。将門に討ち取られる。
藤原良資
演:西山直樹
中納言の次男という高貴な身分だが、盗賊をはたらき将門に討ち取られる。
源祐
演:芳賀喜信
参議家である高貴な身分だが盗賊をはたらき将門に討ち取られる。
傀儡
螻蛄(けら)
演:吉行和子
「けら婆」とも呼ばれ、純友に通じている傀儡の一人。年齢不詳の婆で稚児姓にも変装する。京から坂東へ帰った将門に助力する。
美濃(みの)
演:木の実ナナ
傀儡の一人。純友が挙兵した際備前で藤原子高を襲う。
西国の人々
純友と海賊・民人たち
藤原純友(ふじわらの すみとも)
演:緒形拳
将門とは京で出会い、肝胆相照らす。貴族のことを「国家という大木に巣食うシロアリ」と呼んでいる。
藤原恒利(ふじわらの つねとし)
演:今福正雄
淡路島・小豆島を統べる海賊の首領。伊予に下る純友と神崎で出会い、親交を結ぶ。
千載(せんざい)
演:五十嵐淳子
神崎の遊女であるが恒利の娘。藤原恒利の元へ純友を案内する。
重太丸(しげたまる)
演:早川勝也
純友の子。
くらげ丸
演:清水綋治
西海道海賊の頭目の一人。反権力思考。中島で追捕使の佐伯清辰らを討ち取る。都に純友と共に攻め上る途中、将門の死を知り撤退を決断した純友に掴みかかった。
鯖(さば)
演:宇津海仙
恒利の使いとして、純友の元へ来るが太刀を受け取る時の態度が悪かったため殴られる。
鮫(さめ)
演:丹古母鬼馬二
西海道海賊の頭目の一人。追捕使として伊予に佐伯清辰が来た際には、海賊と純友との連絡役を務める。
大浦秀成(おおうら ひでなり)
演:中丸忠雄
西海道海賊の頭目の一人。中島で追捕使の佐伯清辰らを討ち取る。
小野氏彦(おのの うじひこ)
演:大橋一元
西海道海賊の頭目の一人。
鯒麻呂
演:大塚吾郎
西海道海賊の頭目の一人。追捕使として伊予に佐伯清辰が来た際には、海賊と純友との連絡役を務める。
陳之謙
演:戸上城太郎
中国の海賊の頭目。けら婆が日振島に連れてきて純友と引き合わせた。
高麗の頭目
演:加藤精三
けら婆が日振島に連れてきて純友と引き合わせた。
紀秋成(きの あきなり)
演:平田守
純友の側近。
役人たち
平維久(たいらの これひさ)
演:森塚敏
伊予掾となった純友の上司にあたる。伊予国府で西国に下った純友と面会する。純友の初対面は「人の良い老人」という印象で、どもるような口調が特徴。口癖のように「それが法の示すところ」と言う。
藤原正経(ふじわらの まさつね)
演:寺田農
伊予掾となった純友の上司にあたる。伊予国府で西国に下った純友と面会する。純友の初対面の印象は「油断がならぬ」だった。
紀淑人(きの よしと)
演:細川俊之
伊予守に任じられると、海賊を懐柔して普通の民人になるよう懐柔策をとる。
漢部倉麻呂(かんべの くらまろ)
演:北浦昭義
佐伯清辰と共に伊予の中島へ海賊追捕に向かうが、霧の中討ち取られる。
佐伯清辰
演:渥美国泰
兵庫允・西海道追捕使。西国の海賊討伐を命じられる。伊予の中島で海賊を一気に攻めようとするが、霧の中討死し、京から来た軍勢も全滅することになる。
その他
多治助実(たじの すけざね)
演:中山昭二
京から源経基の訴えを確認する使者として将門の元に赴く。
下総守
演:小沢重雄
多治助実と共に坂東へ同道した。
上野介
演:大矢兼臣
小米
演:池波志乃
上野、総社の巫女。将門が上野国府を降伏させた宴の席で神懸かりし、八幡大菩薩として「自分の子として帝になれ」と叫ぶ。
子春丸の女
演:藤田弓子
良兼に籠絡され、子春丸に裏切りを勧める。
征東軍武将
演:平野元
かや
演:遠藤真理子
葦津江郷の娘。桔梗の友人。後に将平と恋に落ちる。
いね
演:近藤雅子
葦津江郷の娘。桔梗の友人。
よし
演:山内千鶴子
葦津江郷の娘。桔梗の友人。
たみ
演:大森佳代
栗麻
演:神田正夫
葦津江郷の長百姓で桔梗の父。
関連タグ
月歌の始まり:小雨大豆の妖怪漫画。作中で本作「風と雲と虹と」を構想元にしたと思われる人物達や武将が登場する。そして平将門を追討する軍団の大将や猛将の一幕も描写される。
炎立つ:1993年〜1994年に放送された大河ドラマ。本編は平安末期から鎌倉初期における奥州藤原氏の興亡を描いたものであるが、プロローグにて平安初期に行われた坂上田村麻呂による奥州征伐および阿弖流為の処刑という大河ドラマ史上最も古い時代を描写したシーンが存在する。
いのち:1986年に放送された大河ドラマ。放送当時の現代である1985年と言う大河ドラマ史上もっとも新しい時代までを描いている。
光る君へ:同じく平安後期を舞台とする2024年放送の大河ドラマ。承平天慶の乱から約半世紀後に活躍した紫式部を主人公とする。