概要
C.E.71年9月26・27日に、プラントの最終防衛ライン「ヤキン・ドゥーエ」宙域で行われた第一次連合・プラント大戦の事実上の最終決戦。連合側の最高指揮官はウィリアム・サザーランド(大佐)とムルタ・アズラエル(ブルーコスモス盟主)、プラント・ザフト側の最高指揮官はパトリック・ザラ(プラント最高評議会議長兼国防委員長)。
同月11日に連合が発動したエルビス作戦に伴い、極秘裏に各方面より連合の戦力が月面プトレマイオス基地に集結し。この中には2か月前にとあるルートで入手したデータを基に大量生産されたニュートロンジャマーキャンセラーを搭載した核兵器が含まれており、これらをもって同月23日にザフトの宇宙要塞ボアズが陥落したことにより勃発した。
地球連合軍は核攻撃部隊として「ピースメーカー隊」、ザフトは大量破壊兵器「ジェネシス」をそれぞれ投入しており、双方が核兵器を用いて敵対者を族滅させようとする絶滅戦争一歩手前まで発展した。
また、これを止めるために第三勢力として、オーブ国防軍の残党と連合・ザフトの離反者からなる三隻同盟も参戦している。
26日(1日目)
両軍のモビルスーツ・モビルアーマー部隊の衝突をもって開戦する。衝突後、頃合いを見計らった連合はピースメーカー隊を出撃させ、後期GAT-Xシリーズ3機に護衛させる。ザフト側は後方に配備していたジュール隊を中心にこれを迎撃するも間に合わず、大量のMk5核弾頭ミサイルがプラントに向けて発射されるが、その場に急行した三隻同盟のジャスティスとフリーダムが、その装備していたミーティアを用いた弾幕攻撃により全て迎撃したため事なきを得る。
しかし、この核攻撃によりパトリックが激怒し、ジェネシスを発射する。この一撃により、連合はプラント攻略部隊総旗艦「ワシントン」を含む戦力の40%以上を撃破される大打撃を受けてデブリベルトに一時後退を余儀なくされ、これに合わせ三隻同盟も一時撤退を開始する。連合は撤退の際にザフトの追撃に遭い更に多くの艦船とモビルスーツを失うも、この追撃に対して三隻同盟側も介入しており、追撃を行ったザフト軍モビルスーツの多くも無力化されている。
この一時撤退をもって1日目の戦闘は終了した。
各陣営の対応
連合
あまりの損害に月面プトレマイオス基地への撤退を考慮するも、ドミニオンに乗艦していたアズラエルは地球上の生命がほぼ死滅しかねないジェネシスの威力を恐れて再度の総攻撃を指示し、残存戦力の再編後に再度の進行を決定する。
ザフト
パトリックが核攻撃に対する非難とジェネシスに対する称賛を軸とした演説を行い、ザフトの士気が更に高まる。
三隻同盟
ジェネシスの被害シミュレーションを行った他、連合・ザフト双方が核兵器を用いた=核抑止が崩壊したという事実を再認識し、双方の核攻撃を阻止(特にジェネシスを破壊)する決意を固める。
27日(2日目)
連合の再出撃を合図に開戦する。双方の前線部隊が衝突する中、プトレマイオス基地へジェネシスが発射され、補給を兼ねた第2陣の半数諸共プトレマイオス基地が消滅する(この直後に三隻同盟全戦力も前線に到着して両軍を相手に戦闘開始)。アズラエルはこれに憤慨し、ピースメーカー隊による再度のプラント核攻撃を行おうとし、艦隊の進路を変更する。その動きを察知した三隻同盟が戦力をジェネシス破壊とプラント防衛の二手に分け、プラント防衛を担当したジャスティスとフリーダムらが核攻撃を妨害することに成功し、ピースメーカー隊を護衛していたフォビドゥン、カラミティも相次いで撃墜、さらにピースメーカー隊も母艦「ドゥーリットル」を含めて全滅させ、アズラエルの腹心でありピースメーカー隊指揮官であったサザーランドも戦死する(なお、フォビドゥンとサザーランドはザフトのデュエルの戦果)。この時点でプラント本国への攻撃が不可能となったため地球軍の勝利は潰えることとなり、これを確認した三隻同盟のプラント防衛隊は対ドミニオン用の戦力だけを残してジェネシスへ向かった。最終的に、地球連合を実質指導していたアズラエルもアークエンジェルのローエングリンによりドミニオンを撃沈され、死亡した。しかし、ザフトの実質的勝利が決まってもパトリックはジェネシスによる攻撃を中止しなかったため、残存の連合艦隊は独自判断によりジェネシスの破壊に奮戦する。
ジェネシスの持つ装甲の硬さから破壊は困難と判断した三隻同盟のアスラン・ザラにより、ヤキン・ドゥーエの制圧が提案され、少数精鋭(モビルスーツ4機)による突入作戦が敢行される。
パトリックが地球(大西洋連邦首都ワシントンD.C.)に照準を定めるが、地球に向けたジェネシスの発射と射線上のザフトの部隊をも巻き添えにしようとする彼のやり方に疑問を抱き、地球への照射の中止を具申した直後に銃撃されたレイ・ユウキが、息絶える直前でパトリックを射殺する。この直後にヤキン内部に突入していたアスランたちも駆けつけたため、戦意を喪失したザフト兵達はヤキンを放棄する。
しかし、パトリックは死の間際にジェネシスの発射に連動したヤキン・ドゥーエの自爆システムを作動させていた。この事実を把握したアスランはジェネシスを止めるためにその内部にて乗機のジャスティスを核爆発させる苦肉の策を思いつき、実行するためにジェネシス内部へ向かう。
自爆シークエンス開始から30分後、ヤキンは内部爆発により崩壊し、要塞としての機能のほとんどを失った。その自爆から間髪入れずにジェネシスも発射されたが、その眼前にフリーダムによって機能停止に追い込まれたプロヴィデンスがおり、同機の核エンジンを誘爆させてしまったため一次ミラーが損傷して射程と威力が大幅に低下(これにより地球へ届くことはなかった)、さらには発射直後にその内部にてジャスティスが核爆発したためジェネシスも完全に破壊された。
ヤキン自爆とジェネシス破壊直後にクーデターにより実権を掌握したアイリーン・カナーバが残存の連合艦隊に停戦を申し入れ、これが受諾されたことにより戦闘は終了した。
その後
戦闘終了から半年ほどの月日をかけて「ユニウス条約」が締結され、第一次連合・プラント大戦終戦を迎えた。これには兵器へのNJC搭載禁止やMSの保有制限などが盛り込まれており(詳細は当該記事参照)、以降の軍備は大きく制限されることになった。
第三勢力であった三隻同盟はこの戦闘が最悪のシナリオになるのを防いだ功労者であることは確かだが、両軍にとっては(オーブ国防軍のメンバーを除き)裏切り者の集まりであることもまた事実であり、社会的には危ない立ち位置にあった。このため元連合・ザフト所属のメンバーの多くはオーブ連合首長国へ亡命し、偽名を用いて生活していた(ディアッカ・エルスマンのみはザフトへ復隊)。カナーバもこれを考慮し、三隻同盟に関する記録を消去して罪に問われないよう配慮している。彼らが他勢力から横流しする形で保有していた戦力についても、エターナルはクライン派の拠点として秘匿、フリーダム・アークエンジェルはオーブへ渡り、バスターは一旦ザフトに戻った上でデュエル共々破棄されるなど、表舞台から姿を消している。
余談
- 事実上の総力戦かつ核戦争であり、両軍に大量の戦死者を出したことから、生存者から脱柵者が多く出た他、生存者の多くがこの戦闘を悪夢のように思っている。
- この戦闘に最前線にて参加して同胞の死を目の当たりにしたカガリ・ユラ・アスハは極度の軍縮派になった他、同じく最前線にて戦っていたキラ・ヤマトもこの2年後に連合とプラントが戦争を起こした際には再びこのような戦闘が起こることを懸念して武力介入による戦闘の調停を行っている。
- 一方、これを生き残ったパイロットは半ば英雄視されており、相応の操縦技術を持っていることが多い。さらに、これを止めるのに貢献した三隻同盟は(特にプラントとオーブから)英雄として扱われている。
- この戦闘による大活躍・大戦果からフリーダムは「ヤキン・ドゥーエのフリーダム」とも呼ばれている。
- 何度も大規模な戦争をしてきたC.E.だが、人類が滅びかけたのはこの戦闘だけである。