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組織概要

機動戦士ガンダムSEED』シリーズにおける、ナチュラルコーディネイターの共存、あるいは戦禍拡大の防止を主張する中立派・非戦派で構成された勢力を指す。

当事者たちが命名を行わなかったため作中において特定の呼称で呼ばれるようなことは無く、関連資料ではほぼ一貫して「三隻同盟」と呼称されている。しかし、例外的にC.E.内ではマーシャンからは「〈歌姫の騎士団〉」と呼ばれる(ガンダムウォーでもこの呼称が使われるケースがある)。

「三隻同盟」の名を冠するように、その母艦は地球連合軍の脱走艦であるアークエンジェルオーブ連合首長国オーブ国防軍クサナギザフト脱走艦のエターナルとなっている。特にアークエンジェルとエターナルは、三隻同盟の顔のような立ち位置となっている。

元々は『SEED』物語後半(C.E.71年5月8日以降)において大戦の交戦勢力である地球連合、ザフト双方での過激化と絶滅戦争へのエスカレートから、これら過剰思想に反感や危機感を覚えた脱走兵、および同じ感覚を覚えていたウズミ・ナラ・アスハの意志を継ぐオーブ関係者達により構成された寄り合い集団である。そのためラクス・クラインカガリ・ユラ・アスハなどに代表される、諸勢力の有力家系の出身者もメンバーに名を連ねるが、横の繋がりの強い組織である。(主に元所属勢力から持ち逃げする形で)強力な新型兵器を保有する一方で、後ろ盾そのものは希薄な組織であったため、その補給の手配はマルキオ導師やプラントに残留したクライン派が行った。また、補給や整備にはジャンク屋組合も協力していた。

ブルーコスモスによるバイオテロに遭い、放棄されつつも設備自体は生きていたL4宙域のコロニー・メンデルを当面の水源を確保できる拠点として定め、C.E.71年7月5日に結集した彼らは、7月12日にドミニオンやザフトの追手と交戦・逃走した後、9月23日のボアズ攻略戦にて地球連合がMk5核弾頭ミサイルを使用したのを契機に「今後の戦況が核戦争へ発展する」と考え、その懸念通りに9月26日にプラントへ大量のMk5核弾頭ミサイルが発射され、それを迎撃する形で第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦に武力介入する。連合による核攻撃の阻止や、ザフトのジェネシス破壊に成功し、絶滅戦争を止め停戦の契機を作った実績から、軍人や一部の民間人からは英雄として扱われている。

しかし、オーブ関係者を除いて脱走兵の寄り合いであったため、各勢力の政府的には英雄として担ぎ上げるわけにもいかず、プラントではその活動情報を抹消または降格する代わりに「厄介払い」されてしまった(もっとも、これは本来なら処分され兼ねない三隻同盟関係者を慮った、アイリーン・カナーバ臨時議長の手による所も大きかった)。そのため、停戦後は三隻同盟のメンバーの多く(特にアークエンジェル組)がオーブ連合首長国へ亡命し、身分を隠して生活している。他のメンバー(特にエターナル組)は降格の上でザフトに出戻ったり、ターミナル(後述)に所属したりしている。尚、唯一脱走兵ではないオーブ関係者は、そのままの身分や立場でオーブ連合首長国に戻っている。

第1次連合・プラント大戦の折に人類の戦争活動が絶滅戦争まで発展した実例から、各国家上層部の非戦派によって、調停・介入する組織として誕生した非政府組織。

地球連合・プラント(主に旧クライン派)双方の有力者がこれに参画しており、秘密工場ファクトリー等も保有し、正規軍の主力兵器にもそこまで劣らない兵器の開発能力や、各国政府の情報機関に匹敵する情報収集能力を持つ。

その参画者は国家に留まらず民間の組織にも点在する。

構成員

各元所属先で分類

機動戦士ガンダムSEED DESTINY

地球連合軍

  • マリュー・ラミアス
  • キラ・ヤマト
  • ムウ・ラ・フラガ(ネオ・ロアノーク)
  • ミリアリア・ハウ
  • アーノルド・ノイマン
  • ジャッキー・トノムラ
  • ダリダ・ローラハ・チャンドラII世
  • ロメロ・パル
  • コジロー・マードック

ザフト

オーブ連合首長国

  • カガリ・ユラ・アスハ
  • レドニル・キサカ
  • エリカ・シモンズ

保有兵器

第2次連合・プラント大戦

アークエンジェル

クサナギ

  • MVF-M11C ムラサメ(複数機)

敵勢力目線による立ち位置

このように、彼らは『戦禍拡大(特に民間人虐殺)を未然に防ぐ』ために活動しているものの、当事者ではない軍人達の目線で見れば「『戦禍への抑止力』を名目とするテロリスト」とも評価できてしまう。

第1次連合・プラント大戦時は民間人の居住するプラントへの核攻撃が行われるまで、積極的な戦争への介入を行っていなかった(介入したのも第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦のみ)。

第2次連合・プラント大戦時は前大戦において後手に回り過ぎたためにプラントへの核攻撃を許してしまい、その報復として地球へジェネシスが発射される事態となったこと(どちらも間一髪で阻止は出来たが)を鑑み、「今僕たちに分かってるのは、このままじゃ駄目だっていうことだけです」と、ジブリールに協力するウナトやユウナによって地球連合軍の一員としてザフトと戦わされることになったオーブ国防軍の停戦・撤退を当初の目的として戦争への介入を開始。その際、戦闘を停止させるためとはいえ、連合、ザフト双方へ無差別に攻撃を行ったことから両軍に敵視・危険視されてしまう。

実際、彼らの軍備は下手な小国を圧倒する上、それら兵器を駆るパイロットの方もスーパーコーディネイターであるキラを中心とした各軍のエースによって構成されているため、質だけで言えばC.E.における最高戦力と断言しても過言ではない。

無論、彼らも極力負傷者を出さない配慮はしているが、実戦である以上不運にも死亡してしまった者も少なからず存在する上、無力化による強制的な停戦を狙う都合上、地球連合軍とザフトの双方に攻撃する必要があるため、たとえ死者が出なくても両軍に甚大な損害を与えているのは厳然たる事実である。

何より、彼らが相手取る勢力は基本『徒に戦禍を拡大する可能性を持つ豊富な軍備を持つ組織=国家あるいは、それに準ずる大規模な政治的統治によって纏められた自治勢力』に限定される以上、相手からすれば「こちらの都合を完全に無視した上、逆に自分勝手な理念を押し付けて来る襲撃者」でしかない(尤も戦争における敵勢力とは総じてそのような存在ではある)。

そのため、彼らの立ち位置は極論すれば歌姫の騎士団の介入によって、戦禍拡大を防いだ実績」を出し続ける事実でのみ守られた、極めて危うい存在と評価できる。

……尤も、これはあくまでも「極論」であり、そもそも彼らの介入してきた戦争どころか、コズミック・イラ全体の戦争において戦っている地球連合軍、ザフトの双方が、核を始めとする無差別虐殺可能な殲滅兵器を躊躇しない形で使用したり、報復感情から戦時条約を意図的に無視して無抵抗の捕虜を虐殺(あるいは私刑の黙認)する等々、あまりにも倫理面や道徳観を軽視した、常軌を逸脱する内容ばかりであった(SEEDの作品群に登場する軍事組織の大半は、高い確率で「敵対勢力『自分達と異なる種族であり絶対的に排除すべき存在』」として、倫理を容易く放棄する)。

たとえ一定の決着に至っても、然程時が経ることなく戦争が再び勃発し、それまで以上の大規模な犠牲が出るという、正に「泥沼の堂々巡り」と化す一方であり、放置すれば停戦や終戦へ向かうことなく、第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦の様に最悪な事態となる可能性が高い以上、強引な介入によって両軍を停戦させることも止むを得ない部分がある。

また彼らは現れた途端に武力介入を行うわけではなく、両軍による民間人虐殺などの火急の事態には最優先で対処しつつも、真っ先に戦闘停止するよう忠告ないし対話を行っており、それでも行動を改めず戦闘を継続した相手に対し、最終手段として実力行使による強制的な無力化に及んでいる。

少なくとも、口先で意見を並べるだけで何も行動しないよりかは、遥かに良いはずなのは事実である(これはラクスが我が身で痛感した現実もあるだろう)。

事実、第1次連合・プラント大戦においては(元凶の1人の扇動もあってだが)彼らの行動がなければ確実に人類どころか地球上の生物の大半が絶滅していた

また、第2次連合・プラント大戦においても、地球の全生物絶滅ほどの最悪な事態にならないものの、ギルバート・デュランダルの暴走を阻止しなければオーブが滅ぼされるだけでなく、世界全体が「デスティニープラン」により「遺伝子解析で決められた」優秀な一部のナチュラルと多くのコーディネイターが社会の上位を占めるディストピアと化し、それによってナチュラルとコーディネイターの対立をかつて無いまでに高めてしまう可能性もあった(そもそも戦争の根本的な切っ掛け自体が、ナチュラルがコーディネイターの才覚に嫉妬・恐怖して迫害したからである)。

  • あるいは、戦争が無くなりナチュラルとコーディネイターの格差も無いが、職業選択の自由も、恋愛の自由も無くなり、全世界に婚姻統制が敷かれ、全てがコンピューターに人生が決められる「平和だが生きながら死んだ世界」になっていたかもしれなかった。

確かに彼らが話を聞かない相手を力で抑え込んでいるのは事実であるが、武器を無くせば平和になるわけではない。ラクス自身も「平和を叫びながら、その手に銃を取る。それもまた悪しき選択なのかも知れません。でもどうか今、この果てない争いの連鎖を、断ち切る力を!」と独白している。

また勘違いされがちだが、ラクスが自分達の行動を「悪しき選択」と評しているように彼らも自分達の行為が「絶対的な正義」などとは一切思っていない

キラも第2次連合・プラント大戦時には「僕たちが間違ってるんですか? 本当にアスランの言うとおり、議長はいい人で、ラクスが狙われたことも何かの間違いで…。」「僕たちのやってることの方がなんか馬鹿げた、間違ったことだとしたら…。」と自分たちの行動が果たして本当に正しいのか確信しきれずにマリュー相手に不安を吐露したり、「だから憎しみが止まらない。戦いが終わらない。僕たちも、戦い続けるから。本当は駄目なのかもしれない」と再度和解したアスランに述べている。

これらからも三隻同盟(歌姫の騎士団)の存在やその活動は「決して絶対的な正義で無いが、悪でも無い」と言える。またそれでも戦わなければ容易に世界が滅んでしまうために、取り合えず戦い続けるしかない」とする、ある種の必要悪的ポジションとも言えるかもしれない(というかガンダムシリーズにおける主人公側の勢力は多くの場合そのような存在である)。

関連タグ

機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY

地球連合 地球連合軍 オーブ連合首長国 オーブ国防軍 プラント ザフト

アークエンジェル クサナギ エターナル ラクス・クライン

ターミナル ファクトリー

三隻同盟 ラクシズ ニュートラル 中立 第三勢力

世界平和監視機構コンパス:劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』に登場する世界平和監視機構。大西洋連邦・プラント・オーブ連合首長国の共同で創設した組織だが、主要メンバーの殆どは歌姫の騎士団で活動していた人物が参加している。

サンクキングダム完全平和主義新機動戦記ガンダムW):歌姫の騎士団の思想を、より非暴力に特化した思想を掲げた国家とその思想。こちらは「戦争に携わるあらゆる存在の完全否定」であり、それを自ら実践すべく自衛の戦力すら保持していなかったため、本編前と本編の2度に渡って国として衰退・滅亡した。歌姫の騎士団以上の理想を掲げているが、やはり現実を直視していない脆弱さから、一部クロスオーバー作品では敵対勢力に一方的に蹂躙された挙げ句、現実を思い知らされた民衆から見限られた

ソレスタルビーイング機動戦士ガンダム00):立ち位置は近いが、「憎しみを自分達に向けさせる事で世界の統一を促す」という目的があるため、規模の大小に関係無く紛争と見れば見境無く介入し、「自分達が悪」だとする自覚は組織内にはある。更に世界の支配を目論んだ身内の裏切りを招いた挙句、最終的に世界全体を巻き込む壮大かつ傍迷惑な内輪揉めにまで発展させた点を考慮すると、歌姫の騎士団とは比較にならないほどの被害を出しているが、一応こちらは「世界を統一させ戦争を抑止する」目的は果たしている(C.E.は問題が根深過ぎるために、カズイが老齢になっても尚「ナチュラルとコーディネイターの紛争は続いている」との証言があり、根本的な解決には至っていない)。

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