「カガリはああ見えてもそれほど馬鹿な娘ではありませんよ。まだ、子供なだけだ」
CV:野島健児
人物像
オーブ連合首長国を治める五大氏族の一つ、セイラン家の出身。
父はオーブの宰相を努めるウナト・エマ・セイラン。カガリ・ユラ・アスハの婚約者でもあった。
父親の権威を傘に着たような言動の目立つやや傲慢な性格で普段は高飛車だが、根は気弱で臆病。一国の宰相を父親に持つ御曹司としてはいささか以上に情けないヘタレ男。
本人なりに国を率いる者としての立場を弁えた覚悟や矜持はあるものの、いざ恐怖に直面すれば狼狽し保身に走ってしまう辺り、結局のところ表面的なものでしかない。
こう見えて戦略ゲームを趣味としており、しかも結構な腕前らしい。
カガリの婚約者ではあるが、その実態は彼女に自由な行動を一切許さず、人格否定を繰り返し髪型や喋り方まで矯正しようとするモラハラ男。
アスラン・ザラ(アレックス・ディノ)がカガリのもとを離れるとそれを良いことにカガリを徹底的に孤立させ、自信を失わせ、自由な行動を許さず双子の弟のキラ達にも会わせずに正常な判断を奪って彼女を「人形」の花嫁にする策を練る。
カガリの侍女のマーナがカガリの窮状をキラ達に知らせなければ、カガリはこの男の毒牙にかかっていただろう。
実際にダーダネルスでカガリが現れた際、連合に後ろから撃たれる恐怖もあったとはいえ「ちゃんとした自分の妻のカガリが夫の自分に恥をかかせるわけがない!」という旨をトダカ達に喚いており、公人としても私人としても最低な姿をさらした。
要はこの男が愛しているのは『前大戦の英雄というカガリのブランド』と『自分の思い通りになるカガリ』であり、アスランのようにカガリ自身を愛しているなどとは言えない。
ミネルバ追撃の際には代表代行としてオーブ軍に同行し、正規軍人ではないので仕方が無かったとはいえ作戦中は終始狼狽し、トダカ一佐に頼り切りという何とも情けない醜態を晒している。
小説版にて
「DESTINY」小説版によると、上述の趣味が高じて戦術指揮に関する知識は豊富な一方、軍事訓練の類は受けていなかったようで、彼の実家であるセイラン家はウズミによるオノゴロ島自爆後に暫定政権(ウズミの弟のホムラ)が戦後処理とその引責辞任を行った後、繰り上がる形でトップに躍り出たとのこと。
また、他者に責任転嫁する傾向も描かれており、自身の失態でザフト軍に侵攻されてもなおソレを変えなかったことからその場にいた軍人達から嫌悪されてしまう。
他にも自分は特別な人間だと思い込んでおり、カガリを「あんな小娘」と嘲る場面もある。
ユウナはカガリが気に入っているがそれは英雄としての人気と最大首長アスハ家の後継者という肩書き目的、そして「素材は悪くないのだから磨けば光る」「女など男によっていくらでも変わる」と、要は顔と体だけが好きで内面は尊重する気が無い旨が地の文で書かれていた。
尚、「ASTRAY」スニーカー文庫版2巻ではオーブの上流に位置する五大氏族は実子を次期当主に出来ないしきたりがあるとされるが、ユウナ本人がウナトの実子・養子であるかは不明。
動向
ミネルバに乗って帰国したカガリを迎える形で登場。
ブレイク・ザ・ワールドに世界が揺れる中、父ウナトと共に大西洋連邦との同盟に向けて動いており、
代案を出せないカガリを会議で孤立させ連合との条約締結を認めさせる一方、フィアンセとして味方面してみせている。
その後、連合への手土産と言わんばかりに『カガリを救助してくれた』ミネルバ出港の情報を漏らし、再寄港を防ぐために*『首長であるカガリに無断で』軍を出動させる。
これに対して非難するカガリを
「国は貴女のオモチャではない!いい加減感情でものを言うのは止めなさい!」
……と一喝した。
しかし、首長のカガリに無断で行われたこれらの行為は国際常識的にも、国内外の法的にもアウトであり、ミネルバ艦長タリア・グラディスからも
「領海内に戻ることは許さないと…つまりはそういうことよ。どうやら土産か何かにされたようね。正式な条約締結はまだでしょうに。やってくれるわね、オーブも」
と苦々しい顔をされる。少なくとも彼女とは比較的良い関係を築いていたカガリの面目丸つぶれである。
四面楚歌の状況のミネルバ隊だったが、この戦いで追い込まれたシン・アスカがSEEDを覚醒させ一騎当千の活躍をしたことにより、ミネルバは包囲を突破しカーペンタリア基地へ。結果的にユウナは敵に塩を送ることになってしまった。
その後も懲りず、カガリを花嫁修業の名目でセイラン邸に留めて孤立させ、政略結婚を推し進めようとするが、結婚式にキラが駆るフリーダムガンダムが乱入してカガリを連れ去られてしまう。
ユウナはフリーダムに怯えて喚き散らし、セイラン家の一族、セイラン派の軍人達は我先にと逃げ出した。
かくして腐敗を極めた政略結婚式は破壊されたが、代わりにカガリは「国を捨てた姫」となってしまい、ユウナは事実上の首長代理に上り詰める。
クレタ沖海戦では、フリーダム及びアークエンジェルの武力介入、インパルスの猛威で艦隊が壊滅。
オーブの理念に殉じるトダカに投げられ気絶し、旗艦のタケミカズチから強制退艦させられた。
その後残存部隊と共にオーブに帰国したが、ヘブンズベースで大敗を喫したロード・ジブリールを匿うという暴挙に出てしまい(但し実際はウナトがジブリールを匿った)、更には引き渡し要求に対し「ジブリールはオーブ国内に存在しない」という真っ赤な嘘の声明を出す。
この策はかつてオーブが連合時代のアークエンジェルをザラ隊から匿った件を流用したものだが、前回が上手くいったのは単に規模が小さかったため。
それに対し、今回は世界規模で目を付けられ、さらにあらゆる情報網からジブリール隠匿の証拠を押さえられている状況であり、普通に考えたら言い逃れなど出来るものではなかった。仮にいないとしても、その証拠さえ提示されていないのだから実力行使に出るのも当然の帰結。
結果、ザフト軍によるジブリール奪還作戦もといオーブ侵攻戦の引き金をひき、オーブを再び戦場にしてしまう。勿論こうなる事を想定していなかったため、住民の避難や迎撃の準備など、為政者としてやるべきことを何もしていないという情けない醜態を晒す結果となった。
慌てて国防司令部で指揮を執ろうにも、クレタ同様的確な指揮など取れず、諫言するソガら士官たちに責任を押し付けようとする有様だったが、そこに亡きウズミが遺したアカツキでオーブに凱旋するカガリの通信が入る。
これ幸いと今までの手のひら返しをして「通信の相手が本物のカガリである」ことを認めるが、それを言質とした彼女に国家反逆罪を宣告され、その言葉を理解する間もなく士官たちに逮捕・拘束される。
この時、喜んで命令に従ったソガにノータイムで殴り飛ばされた上、逃走防止のため軍人数人に抑え込まれ、カガリが来た時は既に後ろ手に尋問された上に顔面も腫れ上がっていたことから、今までの失態の数々で軍部から相当な顰蹙を買っていた様子が窺える。
おそらく、この時点で既にジブリールの脱出に協力した側近クラス以外のセイラン派の軍人達にも見限られていたと思われる。
「自分はカガリの留守を一生懸命に守ってきたのに、あんまりな仕打ちだ」と訴えるが、自分達の失策をまるで自覚していないその態度と言動はカガリを更に激怒させただけであり、彼女からも殴られた上に、国を守ることよりも保身を優先したことを糾弾され、ここでようやく「まずい」と思ったようだが、まともな言い訳も出来ない上にジブリールの居場所も知らず、用済みとみなされたカガリの命令で軍のシェルターへ連行される。
自身の失脚を受け入れることが出来ず、更には「避難するならセイラン家のシェルターにしろ」など散々駄々をこね続け、隙を見て脱走するも、この時既にセイラン家のシェルターは敵MSの襲撃によって崩壊しており、先に避難していた両親は非業の最期を遂げていた。
そして、何も知らないまま迂闊な行動に出たユウナも、友軍のムラサメが撃墜したグフイグナイテッドの頭部に潰され圧死する末路を辿り、(自業自得とはいえ)セイラン家は最悪の形で滅亡したのだった。
小説版ではウナトと共にジブリールと脱出する予定だったようだが、その段取りを全く認知していないなど指導者としてのメッキはもはや完全にはがれていた。
ザフトによるオーブ侵攻の事態も「結果としてこうなったが、自分の判断は間違っていない」などと、自分のせいでこうなったという自覚もなければ失敗ということさえまるで理解していない有様で、自分が特別な人間であるという自負で、物事は全てドラマの台本通りに動くものだと信じて疑わない視野の狭さと幼稚な考えが描写され、この期に及んでもまだカガリを言いくるめる方便を考え続け、自分の上にMSが墜落してくるという事態に直面しても、誰にでも死は不意に訪れるということさえ最期まで理解出来ないままだった。
死後、ユウナが更生する機会もなく死んでしまったことにカガリが心を痛める様子が描写されている。
政治家としての技量
ファンの一部からは政治家としての技量をそれなりに評価され、作中での扱いを同情されている。
しかし実際のところは、カガリに対してトーン・ポリシングを行い、不当に印象操作を行って貶めている節がある。
「国は貴女のオモチャではない!いい加減感情でものを言うのは止めなさい!」
「そのような子供じみた主張はおやめいただきたい!」
「そしてまた国を焼くのですか?ウズミ様のように」
これらの発言は、カガリの主張の正統性の有無ではなく、カガリの人格否定、今は亡きウズミへの誹謗中傷である。
そしてオーブ軍司令部もユウナの口車に乗って騙し討ちのような形で地球軍とオーブ軍でミネルバを挟み撃ちにした。
地球軍優勢であるからそうするのが当然、正式な条約締結はまだであっても構うものか、というのがユウナの目論見であった。
だが、ザフト軍優勢になった時のリスクを何も考えてなかったとしか言いようがない。
その見通しの甘さから中立主義を安易に捨て、大局を見ようとしなかった時点で、セイラン家の末路は決まっていたも同然だったのだ。
「THE EDGE」では逆に開き直った態度で、追い出される際も『ザフトの対応も父の言う通りにしただけ』、『君は何も知らない』などとふて腐れて、カガリはおろか父ウナトをも詰る有様であり、別の意味でみっともない姿をさらしていた。
余談
カガリの侍女マーナの台詞によれば、カガリとユウナの婚約は双方が幼少期に決まったようだが、流石にカガリの養父ウズミ・ナラ・アスハに人を見る目が無さすぎたのでは?とツッコまれている。
もっとも、戦争で五大氏族の力関係が変わってしまったことから、セイラン家が器以上の権力を持ってしまいユウナ自身も「家の力が自分の力」と勘違いしてしまったという点では彼もまた不幸であったと言える。
ウズミが健在であればユウナの「運命」はどうなっていただろうか…。
野島氏は同作にてバート・ハイムの声も担当している。
スーパーロボット大戦シリーズでは原作同様に死が描かれたのは「Z」のみ(その最期は、オーブ戦でウナトと共に輸送機で逃亡しようとした姿がギム・ギンガナムの逆鱗に触れ、ターンXに撃ち落とされる、というもの)で、他の登場作品では何とか生還(父ウナトの出番は無い)しており、「K」では原作以上のやらかしをするも、成長に恵まれた。
関連タグ
イオク・クジャン:ガンダムシリーズにおける後輩で、ユウナ同様に由緒ある家系の生まれで最初の内は真っ当な面を見せていたが、性格上の欠点のせいで致命的な失策を犯し、最期は戦場で迂闊な行動に出た結果MSに潰されて圧死と共通点が多い(家系も壊滅)。
一方、彼は勇敢な性格でパイロットとして前線に出るタイプであり、人望がある点がユウナと異なる。
ゾルザル・エル・カエサル:『ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』のキャラクター。ユウナと同じように女性蔑視的な馬鹿皇子であるが、保身が目立ったユウナと違い国を愛する気持ちだけは本物で人望だけはある無能な働き者であり、それが災いしてユウナ以上に自国に深刻な被害をもたらした。
フレッド・リーバー:中の人繋がりのガンダムキャラ。『機動戦士ガンダム外伝 ミッシングリンク』の登場人物。
シクラーゼ・マイアー:中の人繋がりのガンダムキャラ2。『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズG』の登場人物。
アンドリュー・フォーク:世界観は全く違うが、わがままで幼稚で自己中心的、口先だけで自分の発案への責任や自覚がまるでない美点など皆無の無能者という点で共通。加えて、こちらは本当に国家が滅亡しかねない事態を招いた張本人という部分まで共通。