話数について
pixivコミック連載時と単行本収録時で、ナンバリングの方式が異る(各話リストの項を参照)。
本記事では、参照しやすさを優先し、特に断りのない限り単行本準拠で話数を記す。
作品概要
奈川トモ氏によるハートフルタヌキストーリー。pixivコミック内のcomicPOOLで連載されている。
悩みを抱える現代人たちと、人間社会に紛れて生きる化け狸や化け狐たちの交流が描かれる。
一話完結式のオムニバスパート、野々原雪を中心としたユキパート、そしてこがね丸の過去に関わる妖パートの三パートがローテーションする。(外部リンク)
タヌキをはじめとする動物たちのかわいらしさが前面に押し出されており、癒し系漫画としての性格が強い。
その一方で、いじめや自殺、因習や差別といった生々しい問題も掘り下げて描かれている。"明"(救いのある展開)と"暗"(シリアスな世界観)のコントラストを強調するのは、奈川氏お得意の作風である。
また、妖怪漫画としての性格も帯びており、凝ったクリーチャーデザイン、怪奇色の強い演出も見られる。
総評として、癒し系動物モノであると同時に妖怪ファンタジーでもあるという、ジャンル分けの難しい作品である。
食事シーンが多いのも特徴。
主な登場人物
※タヌキやキツネが人間に化けた状態に、特に決まった呼び名は無い。
ここでは便宜上「人間態」と表記するが、これは公式の呼称ではないことに注意されたい。
こがね丸
(初登場:第1話)
オスの化け狸。
本作のメインキャラクター。人間をタヌキに変えることができる。
山のタヌキが減ってきたことを憂え、都会で人間をスカウトしている。
回想シーンを含めると、16話と59話を除く全話に登場している(16話はタヌキチ夫妻を、59話はリンと栗之助を主役としたスピンオフ)。
詳細は当該記事参照。
野々原雪
読み:ののはら ゆき
(初登場:第1話)
タヌキになりたがっている人間女性。
こがね丸に次いで登場回数が多い。
他者に心配をかけまいとする性分。
それが災いし、心身ともに追い詰めてしまい、踏切で飛び込み自殺を図ろうとしていた。
そこをこがね丸に助けられ、タヌキとして生きる道を選んだ(人間としての生活も捨ててはいない模様)。
こがね丸に好意を寄せているようだが、まだ恋愛には発展していない。
タヌキやキツネに対して、基本的に敬語で話すが、仲の良いリンには例外的に対等に話す。
山が好きだが虫は苦手(幼少期のトラウマが原因)。
グッズ化の機会も多く、公式筋からももう一人の主人公級の扱いがなされている。
タヌキ態
ユキがタヌキに変化した姿。
他の本物のタヌキたちに比べて濃い毛色であり、頭に術の込められた木の葉が乗っているのが特徴である。
当初は自力で変化できず、こがね丸にタヌキに変化させてもらっていたが、14話以降、こがね丸から託された木の葉を使い、半自力で変化できるようになった。
作者いわく、彼女のタヌキ態が本作のタヌキたちのデザインのベースであり、これにアレンジを加えることで他のタヌキをデザインしているという。
長老
(初登場:第2話)
高齢のオスの化け狸。小豆丸の祖父。
本名は銀杏丸(ぎんなんまる)だが、本名で呼ばれることは稀。
非常にノリの良い性格。
「キンタマ踊り」が得意で、宴会でよく披露する。これは長らく本編未描写だったが、第67話でついにその衝撃的な全容が明らかになった。
鶏皮焼きが好物。
文字は読めないらしい(3巻)。
いわゆる霊感があり、霊的な存在を見ることができる。
他の化け狸にも見えるのかは不明。
後述のように、化け狸の社会には上下関係はほぼ見られず、長老とは言え特に高い地位にあるような描写はない。精々慕われている程度である。
長老人間態
様々な人間に化けるが、基本的にはニット帽を被った老人の姿になることが多い。
ちなみに、初期デザインでは仙人のような姿であった(外部リンク)。
小豆丸
(初登場:第6話)
オスの化け狸で、長老の孫。
こがね丸や長老ほどではないが、変化の術に長ける。
自称「都会の闇に紛れ人の姿を借り、この世界を陰から動かす闇の獣」。
ラーメンが好物。
本人は認めないが、関わる者に幸運をもたらす体質であるらしく、「縁起のいい小豆まめ」と渾名されている。
人里に下りてきては悪事を働こうとするが、結果的に図らずとも人間に幸運をもたらしてしまうなど、毎回何かしらのオチが付く。
常に金欠に悩まされており、コマ上に所持金が表示される演出がなされる。
一人称は「僕」。一度だけ「俺」と言ったことがある(5巻)。
小豆丸人間態
自称「始まりと終わりを司る者、AZ(アズ)」。
黒尽くめの青年の姿をしている。
かなりの美形で、雪からは「雰囲気のある人」、ラーメン赤石の客らからは「イケメン」と評されるなど、女性にモテる(本人は全く頓着していないが)。
イメージカラーの「黒」に強いこだわりがあるようで、衣服からアクセサリーに至るまで黒系で統一している。
職には就いていないらしく、しばしばこがね丸に食事をたかっている。
小豆丸の悪行一覧
- 自殺志願者を言葉で後押ししようとする(自殺教唆)
- 子供が見つけた百円硬貨を横取りして自動販売機でおしるこを購入(拾得物横領)
- 無銭飲食しようとする(詐欺)
- パンを咥えて逃走(窃盗)
いずれも大事にこそ至っていない(それどころかプラスに働くことが多い)が、意外にしっかりと悪意ある行動をとっている。
タヌキチ
(初登場:第2話)
(下がタヌキチ。上は妻のリク)
オスの化け狸。
大怪我したところを人間であるリクに助けられ、紆余曲折を経て結婚(法的には事実婚)。
人間に化けて幸せな生活を送っているが、タヌキとしてアイデンティティーも捨ててはいない。
その意味で、タヌキに助けられてタヌキとなった野々原雪とは対照的な境遇と言える。
常識人であり、天然ぞろいのタヌキたちのツッコミ役に回ることも多い。
アジの開きが好物で、すごい勢いで頭から丸ごと食べたこともあるらしい。
田沼小吉(タヌキチ人間態)
専業主夫。愛妻家で、料理が得意。
人間の生活様式を模倣しているが、リンのように完全に人間社会に溶け込んでいるわけではない。
文字はまだ十分に書けないらしく、小学生向けの教材で練習している。
リク
(初登場:第8話)
人間の女性。フルネームは不明。タヌキチの妻。
野犬に襲われて怪我をしていたタヌキチを助けたのが馴れ初め。
作中の描写から、在宅ワーカーと思われる。
両親は彼女が幼少の頃に他界している。
ゲームが趣味で、プロ並みの腕前を持つ。
リン
(初登場:第12話)
(左:本来の姿 右:人間態)
メスの化け狸。野々原雪とこがね丸の共通の友人。
明るく勤勉な性格。
レギュラーキャラの中では、唯一完全に人間社会に順応しているタヌキである。
頭に付けている小さな花がトレードマーク。
タヌキ形態で装飾品を身に着けているのは今のところ彼女のみ。
子狸のころに排水溝で溺れていたところを和一に助けられ、以来、彼に想いを寄せている。
作者いわく、作画コストが最も高いとのこと。
リン人間態
正体を隠し、文福薬湯堂で働いており、薬湯の調合もこなす。
おばあちゃんのことを本当の祖母のように慕っている。
人間社会にほぼ完全に順応しており、私服のセンスも現代人とほとんど変わらない(実際に着ているのか、化けているのかは不明)。
これは、子狸の頃から人間について熱心に学んできた成果であるという。
初期案では「鈴」という名(読みは同じ)で、こがね丸の妹という設定だったらしい(当該ツイート)
栗之介
(初登場:第15話)
オスの化け狸。
変化はできず、人間態も持たない。
おっとりとした性格で、一人称は「オラ」。
おばあちゃん
(初登場:第12話)
人間の女性。名前は不明。
文福薬湯堂の店主で、夫は既に他界している。
若い頃、黄金丸(=こがね丸?)に助けられた過去を持つ。
和一
(初登場:第12話)
人間の男性。おばあちゃんの孫。大学生。
フルネームは不明。
雨紺
読み:うこん
(初登場:第22話)
オスの化け狐。
YouTuber「コンちゃん」としての顔を持つ。
登録者は22話時点で1万人以上。
かつては寂れた社に住んでいたが、取り壊されてしまった。
動画の収益で神社を建立することを夢見、奮闘している。
諜報員や工作員を輩出している家で生まれ育った。
しかし、当の雨紺には裏稼業の才能がまるでなく、変化も不得手であったため、家族に疎まれて家を出た。
家族の中では、姉の朱陽が唯一の味方だった。
雨紺人間態(男性)
雨紺の標準的な人間態。
鳥居のマークの入った上着を着、耳には多数のピアスを着けた派手な美青年。
先述の通り変化が不完全であり、しっぽを隠せておらず、牙もあるが、開き直ってコスプレということで押し通している。
人間社会生まれの人間社会育ちだからか、気を抜くとこの姿になる。
雨紺人間態(女性)
視聴者受けを狙って作った動画配信用の姿。
こがね丸との出会いで心境が変わり、キツネ本来の姿で動画配信することになったため、以降は登場していない。
アライ
雨紺の動画のファンの一人。
女性に化けた雨紺のことを「色気ない」と評したり、こがね丸を見て「鍋にするのか」と言ったりと、中々の毒舌家である。
プロフィール画像はアライグマ。
正体は不明。
朱陽
読み:あけび
化け狐の女性。雨紺の姉。
弟思いであり、彼にスマートフォンを買い与えたのも彼女である。
化け狐の多分に漏れず、人間社会に紛れて人間として生きている。
裏社会の工作員としての顔も持ち、その筋では「キツネの掃除屋」として恐れられている。
仕事の際は、男性獣人のような戦闘形態に変化する。
本来のキツネ姿は未登場。
藤万
読み:とうま
(初登場:第24話)
貂(『世界観・用語』の項参照)の男性。
普段は白髪の美青年の人間態で活動している。本来は白いイタチの姿だが、ダメージを受けた場合などを除き、この姿に戻ることは稀。
幼くして祠守り(後述)に選ばれ、自由の無い人生を強いられてきた。
そのためか、感情を表に出さないクールな性格をしている。
妖(後述)から「黄金丸を殺せば自由を与える」と唆され、こがね丸を付け狙う。
野心のために手段を選ばない一方、美々子に(超絶不器用ながら)優しさを見せたり、遭難した雨紺を助けたりすることもある。
また、家柄を重視する貂の一族の中ではめずらしく、部下を家柄で差別しない潔い精神の持ち主であり、一識たち兄妹の恩人でもある。
特に、美々子のことはかなり気にかけているようで、彼女のことになると冷静さを失う傾向にある。
総じて、本来は紳士的で思いやり深い人物でありながら、自由を得るために敢えて冷酷な決断をせざるを得なかったと言え、事程左様に過酷な環境におかれてきたことがうかがえる。
朝は肉派。
一識
(初登場:第24話(人間態は35話))
藤万の側近を務める貂の青年。
「下賤」と呼ばれる家系の末裔であり、差別されてきた過去を持つ。
そのため、家柄で差別しない藤万への忠誠心は非常に強く、崇拝にも似ている。
九人兄弟の長男であり、九世は妹。
初期案では、ツインテールで髭面の成人男性というインパクトの凄まじいデザインだった(作者ツイート)。
九世
(初登場:第24話(人間態は35話))
藤万の側近を務める貂の女性。
九人兄弟の末っ子であり、一識は兄。
岩十
(初登場:第43話)
貂の女性。人間態は老婆の姿だが、実年齢は不明。
貂の一族を牛耳る実質上の最高権力者である。
生花が趣味のようだが、素人目にも珍妙な作品を作る。
また、藤万に贈ったシャツがあんまりなデザインだったりと、美的センスが壊滅的なようである。
藤万の母・百櫛に対する忠誠心が非常に強い。
登場当初は高圧的で保守的な態度であったが、物語が進むにつれ、多少態度の軟化が見られる。
黄金丸
過去編に登場する化け狸。
こがね丸と瓜二つの人間態を持つ。
詳細はこがね丸の記事を参照。
緑雲
柿葉寺の住職。
こがね丸の力でタヌキ化した人間たちのフォローを務める。
端正な顔立ちの若い男性に見えるが、実年齢は不明。
こがね丸とは旧知の仲であり、彼の数少ない理解者である。
こがね丸の過去や過去の戦いについて知悉している様子であり、作品全体のキーパーソンと言える。
紫雲
大昔(恐らく江戸時代頃)の僧侶。
妖怪と互角以上に戦える戦闘力を有し、貂の妖を封印した。
こがね丸は、二巻の時点で既に彼を知っていたようだが、面識の有無は不明。
土竜が緑雲を「紫雲」と呼び間違うシーンがあり、緑雲とよく似た容貌だったと思われる。
土竜
モグラの妖怪。
人間態は、サングラスとストールを着用した美青年の姿だが、本来の姿は未登場(柿葉寺の屏風に紫雲と戦っている姿が描かれているのみ)。
かなりの高齢であり、貂の妖や紫雲とも面識があるらしい。
凄まじい妖力を持っており、少し霊感のある人間なら、近付いただけでただならぬ気配を感じ、体調を崩してしまう。
同じく上位の妖怪であるこがね丸すら、初対面時には少し後ずさりしたほど。
寡黙であり、人間や他の妖怪とのコミュニケーションはやや苦手。
かつては悪事を働いたこともあったらしいが、現在は大人しく、何だかんだで人間に対して友好的である。
人間と距離を保っているのも、自分の妖気で迷惑をかけてしまわないよう配慮してのことである。
東美々子
読み:あずまみみこ
(初登場:第7話)
人間の少女。小学生(学年不詳)。
文福薬湯堂に客として出入りしている。
山で長老に助けられたり、ひょんなことから藤万と文通を始めたりと、何かと化け動物と縁が深い。
母親は故人。
ハヤト
(初登場:第4話)
人間の男性。職業はホスト。
登場当初はかなり乱暴な人物で、知人からは「金に汚くて女に薄情で子供はゴミとしか思っていない男」として知られていた。
4話の一件でユウタに助けられ、彼から優しさを学んだ。以来、彼を「心の師匠」と呼んでいる。
度々こがね丸に化かされているが、今のところ彼との面識は皆無であり、化かされている自覚もない。
ゲストキャラにしては意外に登場回数が多く、現時点で、彼のメイン回は合計4回。
日向ユウタ
(初登場:第4話)
読み:ひむかいゆうた
人間の男子小学生。
4話の一件以降、ハヤトから「師匠」と呼ばれる。
なぜかこがね丸と面識があり、「こがね丸くん」「ユウタ」と呼び合う。
彼と仲良くアイスクリームを食べる場面も。
大福
高齢のオスの化け狸。
本作の化け狸としては異例なことに、動物園で飼育されている。
「ここのタヌキおもしろい」「見てると元気出る」と評判。
本人曰く、化けて脱出しようと思えばいつでもできるが、来園者たちの喜ぶ顔を見ることが楽しみになったらしい。
隣の檻のアライグマと張り合うことも。
チョコ
若いメスの化け狸。
大福とともに動物園で飼育されている。
大福のことは親のように慕っている。
おじさん
(初登場:第2話)
人間の男性。名前は不明。
家族とうまくいっていない。
飛び降り自殺を図ろうとしていたとき、こがね丸と出会った。
以降、徐々に家族との関係が改善している。
度々タヌキの宴会に参加しているらしい(5話)。
ラーメン赤石店主
(初登場:第5話)
人間の男性。名前は不明。
こがね丸の行きつけのラーメン店「ラーメン赤石」の店主。
命に関わる持病を患っているが、回復の兆しがみられる。
ラーメン赤石店主の娘
(初登場:第5話)
人間の女性。名前は不明。
サバサバした性格。
こがね丸の行きつけのラーメン店「ラーメン赤石」の店主の娘。
こがね丸の正体について、薄々気づいている様子である。
原田
(初登場:第11話)
人間の高齢女性。フルネームは不明。
肝が座っており、面倒見も良い。
こがね丸を「たぬ太郎」と呼ぶ。
こがね丸は、なぜか彼女の前で人語を話そうとしない。
元強盗犯
(初登場:第11話)
人間の青年。
生活に困り、原田を人質にコンビニ強盗を働いたが、後に改心した。
カナコ
(初登場:第15話)
人間の女性。
外見にコンプレックスがあり、自暴自棄になっていた。
栗之介との出会いがきっかけとなり、変わりはじめる。
嵐山
人気男性アイドル。ジョニーズ事務所所属。
世界観・用語
本作はファンタジーであるため、多彩な独自設定を持つ。
以下に、物語を理解する上で重要と思われる設定を概説する。
化け狸
人語を解する知的な種族。
作中では、単に「タヌキ」とも呼ばれる。
所謂妖怪であるが、「妖怪」とはあくまで人間側の概念に過ぎず、彼らに妖怪としてのアイデンティティがあるわけではないことがリンの口から仄めかされている。
食性は通常のタヌキと変わらないが、人間用の食品も摂取できる(パフェ、ラーメン等)。
飲酒も可能で、宴会シーンが度々登場する。
非常におおらか且つ寛容な種族であり、元人間の野々原雪や、2話のおじさんも快く受け入れられている。
「オス同士の番(つがい)」や「女みたいな男」も普通に存在するらしい。
登山客からもらったおにぎりの礼にマツボックリを渡すシーンがあり、彼らにとってマツボックリに何らかの価値があるとも取れるが、詳細は不明。
上下関係はあまり見られず、同族間で敬語を使う場面は少ない。
こがね丸に至っては、敬語を使おうとすると不自然な文法になることから、少なくとも彼は敬語を使い慣れていない模様。
本来は山中で独自の社会を営んでいるが、近年は人間に擬態して町で暮らす個体(タヌキチなど)が増え、過疎化が進んでいる。
通常のタヌキとの違い
本作の世界には、通常のタヌキも生息していることが言及されている。
化け狸の毛並みは、通常のホンドタヌキにおける夏毛と冬毛の中間のようなもので、季節変化はしない。幼体と成体の毛色もほぼ同じである。
(註:現実のタヌキの幼体は短毛で黒っぽく、タヌキらしからぬ外見をしている)
ただし、作中で和一が化け狸の子供をクマか犬と誤認するシーンがあることから、上述の外見は読者向けの描写に過ぎず、作中の人物には通常のタヌキと同じ姿に見えている可能性もある。
メタ的には、読者の混乱を避けるためにこのようなデザインになったという(作者ツイート①、作者ツイート②)。
変化の術
化け狸や化け狐などが行使する術の総称。
本作の重要なキーワードである。
「化け術」とも。
化け狸や化け狐だからと言って、必ずしも変化の術を使えるわけではなく、栗之介のように一切使えない個体や、雨紺のように不完全な個体も存在する。
一般的に、
イタチ(貂)>タヌキ>キツネ
の順に化ける力が強いとされるが、こがね丸や栗之助のように例外もある。
尚、化ける動物たちの寿命や老化のスピードは、変化能力の嘉多に比例する。
(例:変化に秀でた藤万は、弟の暁万より若い外見をしている)
「匂い」
化ける獣同士が個体を識別する要素。いわゆる嗅覚と同一のものかは不明だが、鼻炎になると識別が難しくなるらしい(第77話)。
他者に変化の術をかけると、その者にも術者と同じ「匂い」が移る。
このため、ユキはタヌキたちから度々こがね丸と誤認される。
また、親子の「匂い」は似ているらしい。これが遺伝的なものなのか、先述の「匂いが移った」結果なのかは不明。
番(つがい)
人間における婚姻に相当する社会的関係。詳細は不明。
一般には認知されていないが、人間と他種族の番も存在する(例:タヌキチとリク)。
また、化け狸の社会ではオス同士の番も問題なく受け入れられているらしい。
化け狐
化け狸と同様、人語を解する知的な種族。
化け狸と異なり、化け狐は独自の社会を持たず、人間社会に密かに潜伏して生活している。
化けイタチ
化け狸と同様、人語を解する知的な種族。
本来は人間と敵対する種族であった。
現代では、妖を封印し人間と共存する道を選んだ「貂」と呼ばれる一派が支配的である。
化けイタチは一枚板ではなく、「貂」への反逆を企てているグループも存在する。
貂
本作では、化けイタチのうち支配的な一派を「貂」と呼ぶ。
化け術に長け、人間にほぼ完全に擬態して生活している。
非常にプライドが高く、他種族を見下している節がある。
家柄や格式が厳守され、貂社会の内部にも差別や迫害が存在する。
個人名には、「一識」「六甲」「九世」「岩十」「百櫛」「藤万」「億成」など、必ず漢数字が含まれる。
貂の妖/緋壽々
強力で邪悪な貂。江戸時代の日本で猛威を振るっていた。
あるとき突然力を失い、僧たちによって貂烟山に封印された。現在でも、貂の一族から選び出された「祠守」が、封印を守る役割に一生を捧げている。
貂の妖が力を失った経緯には黄金丸(こがね丸?)が大きく関与しているらしい。
地名・施設名
どんぶり山
こがね丸たちの住む山、およびその周辺の地域名。ユキの母が「上京」と言ったことから、恐らく首都圏内と思われる。「ドンブリン」なるゆるキャラが設定されている。また、クリームハムカツプリンなる名物が存在するらしい。
確認されている限り、以下の施設が存在する。
- どんぶりやまどうぶつえん:化け狸のチョコと大福が住んでいる。
- ドンブリヤマ遊園地:アトラクション「ドンブリヤマウンテン」の頂上で虹を見たカップルの恋愛が成就すると言われている。
- ドンブリゾートスパ:プールや浴場を備える。
文福薬湯堂
化け狸たちが集う薬湯店。
店主であるおばあちゃんは人間だが、若かりし日に黄金丸と出会ったこともあり、化け狸に深い理解がある。
リンが従業員として住み込みで働いている他、薬草の業者であるこがね丸の得意先でもある。
貂烟山
読み:てんえんざん
「貂の妖」が封印されている山。
文福薬湯堂のおばあちゃんと黄金丸が出会ったのもこの山。
貂の一族が支配しており、タヌキの立ち入りは禁止されている。
とは言え、こがね丸らはお構いなしに出入りしており、祠守りである藤万も苦言を呈する程度に留めているため、この掟はザル法化している。
本格的な初登場は40話だが、21話の回想シーンの石碑に「貂烟山」の文字が確認できる。
柿葉寺
通称「タヌキ寺」。
こがね丸の力でタヌキになった人間のうち、野生生活に適応できなかった者が修行を兼ねて共同生活する、いわゆる「駆け込み寺」。
緑雲が住職を務める。
室内には貂の妖や黄金丸と思しきタヌキの姿が描かれた絵屏風が安置されている
余談
- タイトルの「お前、タヌキにならねーか?」はこがね丸の決め台詞であるが、実は、一言一句この通りのセリフが登場するのは第13話(単行本2巻)と、意外に遅い。その他は「人間やめるならタヌキにならねーか(ならないか)」「タヌキになるか」等。
- シノプシスは2018年時点で既に完成していたという。タヌキたちの人間態の初期デザインは、より獣人然としたものだった。該当ツイート
- 作者の奈川氏によると、Pixivでは女性読者が多く、Pixivコミックでは男性読者が多いという。該当ツイート
- 35話に「いとのこシャーク」なる漫画本が登場する。おそらくは同作者の「愛しの故・シャーロット」のセルフパロディと思われる。
- ストーリー作りについて、奈川氏は「励まそうとして価値観を押し付けない、説教臭くならないように」気をつけているという。
- 単行本描き下ろしのエピソードには、コマ外のどこかに狸の足跡が描かれている。
- 単行本の表紙は、今のところ毎回「人間型のキャラ」+「タヌキ型のキャラ」の組み合わせを強調したものである。
連載状況
連載中。
Twitterにて、毎月1日と15日に連載され、その後pixiv、comic POOLの順に掲載されることが多い。
各話リスト
- 巻数、話数は一迅社comic POOLの単行本準拠
- 回数はpixivコミック準拠
- 単行本には、ほぼ全てのエピソードに描き下ろしの後日談が併録されるが、ここでは割愛。
- Twitterにて掲載された番外編のうち、「ひといき」として単行本に収録されたものを併記する。書誌未収録のものは割愛。
- 店舗購入特典等、一般公開されていないエピソードは割愛。
巻数 | 話数 | 回数 | サブタイトル | 外部リンク |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | 1 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたOLさん | pixivコミック |
1 | 2 | 2 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたおじさん | pixivコミック |
1 | 3 | 3 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたOLさん② | pixivコミック |
1 | 4 | 4 | タヌキに化かされた残念なお兄さん | pixivコミック |
1 | 5 | 5 | タヌキにスカウトされたラーメン屋の娘さん | |
1 | 6 | 6 | 人間を破滅へ誘う闇のタヌキ | pixivコミック |
1 | 7 | 7 | 迷子の少女と長老タヌキ | pixivコミック |
1 | 8 | 8 | 恩返しにきたら専業主夫をすることになったタヌキ | |
1 | 9-1 | 9 | タヌキに化かされた いじめっこといじめられっこ | |
1 | 9-2 | 10 | タヌキに化かされた いじめっこといじめられっこ② | |
1 | 10-1 | 11 | タヌキになりたいOLさん | |
1 | 10-2 | 12 | タヌキをおもてなししたいOLさん | |
2 | 11 | 13 | ハラペコタヌキとハラペコ強盗 | |
2 | 12 | 14 | 薬湯屋の看板娘とタヌキたち | |
2 | ひといき① | |||
2 | 13 | 15 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされた新社会人 | |
2 | ひといき② | |||
2 | 14 | 16 | タヌキになりたいOLさんの休日 | |
2 | 15 | 17 | タヌキに化かされた見た目がコンプレックスのおねえさん | |
2 | 16 | 18 | 恩返しにきたタヌキと結婚しました | |
2 | 17 | 19 | 化けタヌキ、はじめてのラーメン | |
2 | ひといき③ | |||
2 | 18 | 20 | タヌキからの贈りもの | |
2 | 19 | 21 | つまらない日々を送るお兄さんと小学生。(時々タヌキ) | |
2 | 20 | 22 | 化けタヌキと動物園の暮らし | |
2 | 21-1 | 23 | 薬湯屋とタヌキの言い伝え① | |
2 | 21-2 | 24 | 薬湯屋とタヌキの言い伝え② | |
3 | 22 | 25 | 動画配信しようとキツネにスカウトされたタヌキ | |
3 | ひといき | |||
3 | 23-1 | 26 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたOLさんも、そろそろ退社します | |
3 | 23-2 | 27 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたOLさんが退職しました | |
3 | 24-1 | 28 | 人間に化けきれなかったキツネの話 | |
3 | 24-2 | 29 | 人間に化けきれなかったキツネとタヌキたち | |
3 | 25-1 | 30 | 化けタヌキと温泉旅行へ出発 | |
3 | 25-2 | 31 | 化けタヌキとふしぎな温泉旅館 | |
3 | 25-3 | 32 | 化けタヌキとひみつの露天風呂 | |
3 | 25-4 | 33 | 化けタヌキと温泉旅館の夜※1 | |
3 | 26 | 34 | かわいいものが大好きな少年とタヌキ | |
3 | 27 | 35 | 思いがけず薬湯屋ではたらく野々原さん | |
4 | 28 | 36 | 薬湯屋と化けタヌキの諸事情 | |
4 | 29 | 37 | 化けタヌキだとバレてしまった看板娘 | |
4 | 30 | 38 | クラスメイトがタヌキに化けていた理由が知りたい | |
4 | 31 | 39 | 復讐してやろうとしたらタヌキに化かされた人たち | |
4 | 32 | 40 | 化けタヌキと遊園地デート | |
4 | 33 | 41 | 化けタヌキと遊園地のジンクス | |
4 | 34 | 42 | 化けタヌキと祠守りの貂※2 | |
4 | 35 | 43 | 祠守りの貂と 化けタヌキたちのお祭り※2 | |
4 | 36 | 44 | タヌキと貂の化け祭り | |
4 | 37 | 45 | タヌキと貂と妖の化けくらべ | |
4 | 38 | 46 | (同上)※3 | |
4 | 39 | 47 | 祭りのあとのタヌキと貂(テン)※2 | |
4 | ひといき① | |||
4 | ひといき② | |||
4 | ひといき③ | |||
4 | ひといき④※4 | |||
5 | 40 | 48 | 化けタヌキとカフェデート | |
5 | 41 | 49 | 死のうとしたらタヌキにスカウトされたミュージシャン志望 | |
5 | 42 | 50 | タヌキたちのパン争奪戦線 | |
5 | 43 | 51 | 化けイタチの兄妹 | |
5 | 44 | 52 | 化けタヌキのなかよし作戦 | |
5 | 45 | 53 | 化けタヌキとのんびり芋掘りの日 | |
5 | 46 | 54 | 化けタヌキとキツネの神社 | |
5 | 47 | 55 | 化けタヌキの郵便屋さん | |
5 | 48 | 56 | 人間に戻りたくないタヌキの行く先 | |
5 | 49 | 57 | ふしぎな駆け込みタヌキ寺 | |
6 | 50 | 58 | 野球部をやめたらタヌキにスカウトされた高校生 | |
6 | 51 | 59 | 化けタヌキの恋わずらい | |
6 | 52 | 60 | 上京してきたお母さんと化けタヌキ | |
6 | 53 | 61 | タヌキに化けた娘とその母 | |
6 | 54 | 62 | 化けイタチのお守り | |
6 | 55 | 63 | 化けキツネの家庭の事情 | |
6 | ひといき① | |||
6 | ひといき② | |||
6 | ひといき③ | |||
6 | ひといき④ | |||
6 | ひといき⑤※5 | |||
6 | 56 | 64 | 化けタヌキのおやしき探検 | |
6 | 57 | 65 | 化けタヌキのおやしき探検② | |
6 | 58 | 66 | 化けイタチの母が遺したもの | |
6 | 59 | 67 | タヌキとイタチのあたたかい夜 | |
7 | 60 | 68 | ソロキャン好きのお兄さんと化けタヌキ | |
7 | 61 | 69 | タヌキとはじめる商品開発 | |
7 | 62 | 70 | 化けタヌキと思い出の香り | |
7 | 63 | 71 | 化けタヌキとフェスティバルのおてつだい | |
7 | 64 | 72 | タヌキになって改心したお兄さん、師匠と動物園へ行く | |
7 | 65 | 73 | 想いを伝える勇気がなかった少年と化けタヌキ | |
7 | 66 | 74 | 化けイタチのあたらしい棲み処 | |
7 | 67 | 75 | 化けタヌキと古着屋で雨宿り | |
7 | 68 | 76 | 化けタヌキと古着屋で雨宿り・後編 | |
7 | 69 | 77 | 化けタヌキを化かしたい | |
7 | ひといき | |||
78 | タヌキにスカウトされた先生 | |||
79 | 化けタヌキ、リゾートスパへ行く | |||
80 | 化けタヌキ、リゾートスパで大騒ぎ | |||
81 | 化けタヌキ、リゾートスパで賑やかな一日 | |||
82 | 化けタヌキと行き倒れの土竜(モグラ) | |||
83 | 化けタヌキと人間嫌いのおばあちゃん | |||
片腕のイタチの子 | ||||
疲れたアイドルと長老タヌキ |
※1 この回は後日談が3話付く。
※2 単行本では、物語の核心に関わるセリフが変更・加筆されている。
※3 37, 38話は、作者のpixivアカウントおよびTwitterの先行公開では一つの回として掲載された。正式な連載時に分割され、上記のナンバリングとなった。
※4 4巻巻末には、過去編全体の後日談となる描き下ろしエピソードが付く。
※5 初出時期は5巻以前だったが、ページ数の関係か5巻での収録は見送られ、6巻での収録となった
受賞歴など
- 次にくるマンガ大賞 2021 Webマンガ部門 ノミネート(2021)
- 第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞 7位(2022)
- 次にくるマンガ大賞 2023 Webマンガ部門 5位(2023)
- WEBマンガ総選挙2023 6位(2023)
書誌情報
単行本(一迅社comic POOL)
お前、タヌキにならねーか?: 1
2021/05/01発売
(全148ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 2
2021/11/25発売
(全156ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 3
2022/05/25発売
(全156ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 4
2022/12/26発売
(全172ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 5
2023/07/25発売
(全148ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 6
2024/03/26発売
(全148ページ)
お前、タヌキにならねーか?: 7
2024/08/26発売
(全140ページ)
外部リンク
これらの他、各種漫画サイトでも連載されている。
関連タグ
狸 狐 ファンタジー 現代ファンタジー ローファンタジー 優しい世界 化け狸 化け狐
お前も鬼にならないか?、素晴らしい提案をしようシリーズ:本作のタイトルから、やや似通っているこれらを思い出す者も少なからずいると思われる。