概要
UBISOFTがリリースしているアクションゲーム『アサシンクリード』シリーズに登場する架空の暗殺用暗器。日本ではアサシンブレードと呼ばれているが、海外ではhidden blade(ヒドゥンブレード)というのが一般的である。
特徴
様々な時代によって様々な形状・使われ方をしているが、
基本的には飛び出し式の小型の剣が篭手の内側の鞘に収納されている構造になっており、
敵に怪しまれない内に敵の身体に触れつつ飛び出し刃を首や背中などの急所に突き刺してその場を離脱したり、逃げる相手を取り押さえつつ突き刺すといった暗殺方法が用いられる事が多い。
シリーズを通して主に左手首に嵌めて使用する。両手にブレードを付ける作品でも、メインは左腕の方を使うことが殆ど。
ちなみに使用される金属材料が貴重であるため、あまり多く作ることができないらしい。
実際に気づかれてさえいなければ甲冑すら容易く貫通し、2000年近く放置されても錆びていないなど、刃物としての威力・強度は尋常ではない。
ゲーム中、基本的に敵に見つかっていない状態ならばどんな攻撃手段でも一撃必殺の攻撃を繰り出すことができるようになっているが、アサシンブレードは暗殺モーションがどの武器よりも小さく素早いため、気づかれにくいままに連続暗殺や離脱することが容易になっている。
シリーズごとの差異
『アサシンクリード』
アルタイル・イブン・ラ・アハドが使用。ブレードは二段展開式。
小指に嵌められたリングを動かすことで連動して刃が飛び出す仕掛けになっており、アルタイルらアサシン教団のメンバーはこの飛び出しを妨げないように左手薬指が切断されている。
アサシンを象徴する武器であり、指の切断は教団の一員であるという儀式的な意味合いも強かった。
こちらに気づいていない敵やダウン状態の敵から一撃必殺を奪えるがあくまで暗殺用である為、向かい合っての戦闘ではダメージを与えることができない(簡単に腕を掴まれ払われてしまう)。
また、ガードが使えずカウンターのタイミングもシビア、戦闘で使うには剣を納めて掴み投げからのダウン一撃死くらいしか使いようが無い為戦闘では基本封印。
『アサシンクリード II』
エツィオ・アウディトーレが使用。ブレードは二段展開式でアルタイルの物よりも幅広である。
アルタイルとマリクの手によって前作から大幅に改良が施され、薬指を切断する必要がなくなっている。
前日譚にあたる実写映画『アサシンクリード・リネージ』でジョヴァンニ・アウディトーレが使用し、ロドリゴ・ボルジアとの戦いの際に刃が折られ、破壊されたためか、ゲーム内でエツィオが入手した時点では使えない。
物語の進行につれてアルタイルが残した写本を元にレオナルド・ダ・ヴィンチによってさらなる改良が施されていき、ガード用の装甲板が取り付けられる。
これによってガード・カウンターからの一撃死が可能になり、戦闘でも十分有用な武器となった。
これ以降も毒針、小型のピストル(hidden gun)が内蔵されていく。(このピストルはアルタイルが「林檎」から得た知識を元に発明したものであり、アルタイルはこの武器を使い裏切り者のアッバスを殺害した)
右手用に作られたものと合わせることで両手で二人同時暗殺を可能としたダブルブレードも登場する。
ルネサンス期のイタリアという世界観と、使用者である主人公達の貴族という出自もあってか、刀身や手甲部分に緻密なエングレーブが施されており、シリーズ中随一の高貴で優美な印象のデザインとなっている。
またブレードの飛び出し機構は「手の甲でスイッチを押す」というものに変わっている。
また現代パートではデズモンド用のアサシンブレードが登場。
こちらは篭手では無く、ベルトで取り付けるよう簡略化されたデザインになっている。
『アサシンクリード ブラザーフッド』
引き続きエツィオ・アウディトーレが使用。ブレードの構造はACⅡと同じ二段展開式。
ローマで再会したレオナルド・ダ・ヴィンチによってさらに改造が施され、毒針の射出機構「ヤターガン」を新たに取りつけられる。さらに毒の種類も遅効性から即効性へとバージョンアップが可能となった。
『アサシンクリード リベレーション』
引き続きエツィオ・アウディトーレが使用。ブレードはACⅡと同じく二段展開式。
イスタンブールのアサシンギルドで新たに改良されたフックブレードが登場。フック状のパーツが刀身に取りつけられており、壁面の突起物に引っ掛けて素早く登攀を行ったり、ロープやワイヤーに引っ掛けて滑走して移動することができるようになる。またこれを応用して敵に引っ掛けて投げ飛ばしを行うことも可能となっている。
『アサシンクリード Ⅲ』
コナー(ラドンハゲードン)、ヘイザム・ケンウェイが使用。コナーのブレード構造は後述。ヘイザムの物は一段展開式の特にギミックの無いシンプルな物。但し歴代のブレードより若干短めである。
コナーのものはピボットブレードと呼ばれ、エツィオの物とは異なりピストルや毒針などを内蔵せず、仕掛け部分を簡略化して作られている。引き換えにブレードを90度回転させられるようになっており、そのまま手で握って小型のダガーとして使用することが可能。形状は従来のものと異なり、ダガー状ではなく、片刃のサバイバルナイフのようになっている。
コナーはこれを応用して獣の解体に使ったり、パリングダガーのように左手に持って剣やトマホークの補助武器として使用している。
また瞬時に着脱可能で、コナーは最後の敵を抹殺する際には篭手から外して使用した。
切っ先の片側に鋸歯がついている他、柄頭の鷲の意匠には鉤状の小型の刃が収納されている。未開の地が多かった当時のアメリカに合わせ、サバイバルナイフとしての汎用性を高めた仕様と思われる。
『アサシンクリード Ⅲ レディ・リバティ』
アヴリーン・ド・グランプレが使用。ブレードは一段展開式。
武器を持ち込めない場所へ潜入した際、ナイフ、木材、ベルトなどを使ってアサシンブレードを自作する場面がある。
『アサシンクリード Ⅳブラックフラッグ』
エドワード・ケンウェイが使用。ブレードは一段展開式。
特にギミックの類は内蔵しておらず、ブレードが固定された板とそれを腕に装着するためのベルトのみで構成された、非常にシンプルなもの。元はテンプル騎士のジュリアン・デュカスが殺したアサシンから奪った戦利品。海賊であるケンウェイの好みでか、本体後部にドクロの意匠があしらわれている。ブレードは完全に収納されず、収納時本体から先端が飛び出ている。
刃を出した状態で戦うことも可能。カウンターや受け流し等のアクションも問題なく行える。
劇中では『リストブレード』とも呼ばれる。
『アサシンクリード ローグ』
シェイ・パトリック・コーマックが使用。ブレードは一段展開式で特にギミックの無いシンプルな物で、ヘイザムのブレードのように若干短めになっている。誰かから貰ったりせず、シェイの私物として最初から使える、シリーズでも珍しいもの。
またシェイは物語中盤以降でアサシン教団を相手にするため、特定の敵もアサシンブレードを使用してくる。
『アサシンクリード ユニティ』
アルノ・ドリアンが使用。ブレードは一段展開式で細身、ファントムブレードと呼ばれるものは飛び易いように矢のような形をしており、緻密なエングレーブが施されている。
今作では左腕にのみ装備するが、ダブル・アサシン等のアクションは使用可能。基本的に暗殺専用の武器であり、Ⅳなどのように戦闘に用いることはできない。
前作までは基本的に刺突専用だったが、アルノは相手の頸動脈などを狙って「切り裂く」使い方を多用する。
独自の機能として、物語を進めるとファントムブレードが使用可能になる。ブレードをボウガンのような機構で射出して目標を殺傷するほか、命中させた敵を混乱させ、同士討ちさせるバーサークブレードも存在する。
なお、開発当初はダブルブレードの実装も予定されていたのか、各種トレーラーではアルノが右腕でアサシンブレードを使用する様も見受けられる。
『アサシンクリード クロニクル チャイナ』
篭手ではなく靴にブレードを仕込んだアサシンフットブレードをシャオ・ユンが使用。一応ブレードは一段展開式で、靴に仕込めるように薄く幅広に作られている。
中国武術の足技を活かすため、独自に発展した派生型と思われる。
篭手にはブレードではなく投擲用の針を隠している。
『アサシンクリード シンジケート』
エヴィー・フライ、ジェイコブ・フライ姉弟が使用。ブレードはアルタイルのような二段展開式の細身な形状をしている。
ユニティと同様暗殺用ではあるが、正面戦闘でもコンボ中の不意打ちに使用することがあり、大ダメージを与えられる。
ブレード自体に真新しい要素はないが、アレクサンダー・グラハム・ベルの助力によりガントレットに様々な機能が搭載される。
手首側、ブレードの脇にはフックを射出して巻き取ることで上方向に高速移動、または離れた位置にロープを張りそれを伝った移動を可能にするロープランチャーを装備。
手の甲側には、命中した敵を混乱させるダートガンが追加される。
ガントレットは左腕にしかないが、ムービーでは右腕の袖の中にもブレードを隠していることが分かる。
また現代パートでは、帯電した二本の細いブレードで相手を感電死させるショックブレードが登場し、ショーン・ヘイスティングが使用した。
『アサシンクリード オリジンズ』
シワのバエク、アレクサンドリアのアヤが使用。アサシン教団発足以前の時代のため、日本語版でもヒドゥンブレードと呼称されている。ブレードは一段展開式。
本編ではペルシア王クセルクセス1世を暗殺した古代の武器として、クレオパトラから両名の手に渡る。
ジャマダハルなどに近い幅広のブレードを使用する。
中世時代のものとは異なり、刃を引き出すために薬指を切除する必要はない。
しかし本編中、ある人物の暗殺に使った際事故的に薬指を切断してしまう形になり、これが後の教団にとって一時的に儀式的な意味合いを持つようになる。
ゲーム内では防具や矢筒などと同様に各種素材を使用して強化することで暗殺アクションによるダメージが増加し、レベルの高い敵を一撃で暗殺可能になる。
強化に際して刃の形状が従来とはまるで別物へ変化していく。
現代編でもアヤのミイラと共に葬られていた物をレイラ・ハサンが回収し、流入現象で体得したバエクの殺人術によってアブスターゴ社の刺客を次々と屠った。
少なくとも2000年近くは墓所に放置されていたはずだが、それにもかかわらず錆などはなく、ブレードの飛び出し機構も問題なく作動するという驚異的な耐久性を持っている。
『アサシンクリード オデッセイ』
本編では登場せず、レオニダスの槍先を主人公は代わりに使う。これを強化することはできるが、暗殺ダメージの向上はアビリティや装備の付加効果によって行われる。
DLC『最初の刃の遺産』に登場するダリウスが使用し、『オリジンズ』で語られたクセルクセス暗殺が回想シーンで描かれる。ブレードは一段展開式。
形状は『オリジンズ』の物と同じく幅広のブレードだが、後世の物と違って手の甲側に装着しているため、自分の指を傷つける可能性は低いと思われる。また正面戦闘にも使用している。
また『II』の時点でダリウスの石像が登場しており、(記録に残っている限りでは)クセルクセス暗殺がアサシンブレードの最初の使用例であると語られている。
ただしダリウスは主人公から武器の由来を尋ねられた際に「もう定かではない」と答えていることから、その起源はもっと古いと思われる。
『アサシンクリード ヴァルハラ』
当時まだ『隠れし者』と名乗っていたアサシンたちと出会ったシグルドが、義弟であるエイヴォルに土産として贈った。
ヴァイキングは贈り物を非常に重要視しており、そのためかエイヴォルのものは金細工とエメラルドで豪奢な装飾が施されている。
バシムとその弟子ハイサムはシンプルなデザインのブレードを使用しており、アルタイルのように薬指を切除している。
しかしヴァイキングであるエイヴォルは「武器を隠す気は無いし、あんたらと同じ失敗もしたくない(指も失いたくない)」とアサシンのやり方に固執せず、ダリウスのように手の甲側に装着している。
ヴァイキングの指揮官は部下に「自分に着いてくれば裕福になれるぞ」とアピールするため、積極的にアクセサリーなどを身につける習慣があり、エイヴォルからすればせっかくの美しい武器をわざわざ目立たないようにする理由などないのだ。
あらゆるステータスをレベルではなくスキルポイントを割り振って強化していくようになった本作にも、暗殺ダメージを強化するスキルが何個か存在するが、オプション選択によってそれとは関係なくどんな敵も確定で一撃暗殺するように設定可能。
また、インベントリ(装備)で左手を空にして素手にすると近接戦闘でも使用するようになる。
『アサシンクリード ミラージュ』
バシムや他の隠れし者たちが使用。二段展開式の小型のブレードで、隠れし者としての修行を終えると儀式を経て授与される。
暗殺専用で、原点回帰を謳った本作では一撃必殺に戻っており、例え鎧を着た相手でも気づかれずに接近できれば一撃で倒せる。
またバシムはアルノやフライ姉弟のように、頸動脈を切り裂く使い方もする。
アルタイルより前の時代が舞台だが、コンスタンティノープルの隠れし者がすでにダブルブレードの試験運用を行っており、右手の薬指も切除する必要はあるものの有用であるという趣旨の手紙をバグダッドの支部へ送っている。
またギリシアの隠れし者がダリウスのブレードの図面を発見し、故郷のペルシアへ還すべくアラムートの同胞へ送っている。
『アサシンクリード シャドウズ』
くノ一の奈緒江が使用。二段展開式で内側に折りたたまれた刃が180度回転して現れる。
東洋の意匠が散りばめられたデザインで、小手の内側に龍をイメージした鞘が付けられ、龍の口から短刀が飛び出す。
ピボットブレードのように90度回転した状態で手持ち武器にすることもできる。
短刀には柄巻のような装飾が施されているが、この部分は持ち手にならない。
映画『アサシンクリード (Assassin's Creed)』
中世の暗黒時代のスペインでのアサシンがテーマとなっているこの映画ではアサシンブレードがアップで写し出されるシーンが多い。冒頭でアサシンブレードを鋳造している場面があったり、現代編でもアサシン達が金属探知機をすり抜けるために部品ごと分割して時計やバックルなどに偽装し、暗殺直前にブレードを組み立てるといったシーンがある。
劇中のアサシンブレード
主人公であり、中世スペインのアサシンのアギラールと、その子孫であるカラム・リンチ(アルノ・ドリアンも彼の先祖である)はシンプルなアサシンブレードを使用している。ブレードは一段展開式で緻密なエングレーブが施されており、アギラールの物にはレバーが付けられている。(恐らくブレードのスイッチかロープダートの射出レバーだと思われる)。中世編では彼と行動を共にする女性のアサシンのマリアがロープダートランチャーが備え付けられた刃が2つ連なる特殊な形状のツインブレードを使用している。
現代編にてアップでカラムの父親のブレードが写されるシーンがあるが、これは一段展開式の片刃が鋸状になっている。劇中ではカラム以外にも『リベレーション』で登場したユスフの子孫、『クロニクルチャイナ』で活躍したシャオ・ユンの子孫、『ブラックフラッグ』の冒頭で登場した裏切り者アサシンであるダンカン・ウォルポールの子孫など、様々なアサシンの末裔が登場し、それと共にアサシンクリードシリーズで登場した様々なアサシンブレードが登場する。
- 『アサシンクリードユニティ』で登場したファントムブレード(ウォルポールの末裔が使用)
- 『アサシンクリードクロニクルチャイナ』でシャオ・ユンが使用したフットブレード(ユンの末裔が使用)
余談-動作原理と構造について
実際にこの武器の機構(指につけたリングを引くだけでブレードの射出、収納を交互に繰り返す)を再現することは可能だが、構造自体は海外で見かけるotfナイフそのものである。
otfナイフのスイッチ部分をホイールにし、そこに紐をかけて回すことでブレードの出し入れを行えるというもので、そのようなタイプのアサシンブレードの設計図や、3dプリンター用の部品の3dデータは海外のサイトで得ることができる。3dプリンターを持ってるおともだちは取り扱いに気をつけて是非作ってみよう!