概要
トルクメニスタン原産の馬の品種で、同国の国章にもあしらわれている。テケはこの馬を育てていた民族の名で、アハルはテケ人が多く暮らしていた土地の名前である(そのため、トルクメニスタンにおいては、アハル出身のテケ人を指す時にもアハル・テケという単語が使われる)。テケ人は、現在でもトルクメニスタンの人口の3分の1を占め、同国において強い政治力や文化的な影響力を持つ。公用語であるトルクメン語も、テケ人の言葉が基礎となっている。
スピードと長距離の持久力が高く、毛色から「黄金の馬」として知られている。現存する最古の馬種のひとつと考えられている。
かつては漢の武帝がこの馬欲しさに親征したという。中国史でよく出てくる「汗血馬」も、この馬ではないかと言われている。
現在ではトルクメニスタンの国際アハルテケ協会が保護に取り組んでおり、指導を受けたブリーダーがトルクメニスタンの他、ロシア、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカ、日本、中国などで飼育している。
この品種はロシアで人気となり、国立牧場で育成繁殖が確立した。多くのアハルテケが北コーカサス山脈のテルスク牧場で生産され、後にダゲスタン牧場にヘッドブリーダーのウラジミール・ペトロヴィチ・シャンボラント Vladimir Petrovich Chamborant (露:Владимир Петрович Шамборант)と移った。
特徴
アハルテケは通常体高14.2ハンド(144 cm)から16ハンド(163 cm)で、鮮明な金属光沢のある金色の河原毛や、月毛の個体で有名である。しかし他の毛色も認められ、鹿毛、青毛、栗毛、佐目毛( cremello, perlino )、芦毛も発現する。アハルテケを最も明白に定義付ける特徴は、その被毛の自然な金属光沢である。「きらめき」は特に明るい鹿毛や月毛、河原毛で見られる。この色パターンは砂漠でのカモフラージュとして機能したと考えられている。河原毛と月毛を生じさせるクリーム色遺伝子が、時に佐目毛を生じさせる希釈遺伝子となっている。アハルテケは、薄墨毛あるいは粕毛遺伝子は持たないと考えられている。
アハルテケは真っ直ぐか僅かに凸面の素晴らしい頭部と、長い耳、アーモンド型の眼を持ち、たてがみと尾は通常まばらである。長い背中は軽く筋肉質で、平らな尻と長く直立した首につながっている。アハルテケは傾斜した肩と薄い皮膚をしていて、強く丈夫で申し分のない四肢を持っている。胸は深く、グレイハウンドの馬版ともいうべき細い体躯と胸郭がある。これは長距離の持久力のために改良された馬に特有の形態である。
運動能力が高く知能も高い。十分な食物や水なしで生活しなければならないトルクメニスタン地方の気候に適応し、持久力がある。このような特徴からスポーツ向けにもなった。1935年、トルクメン人の騎手団がアシガバートからモスクワまで2,500マイルを84日で走破したのが示したように、この品種には大きな持久力がある。この行路には235マイルの砂漠を含んでいたが、水なしで3日で横断した。アハルテケは障害飛越競技馬としてそのフォームと優美さでも知られている。
中央競馬ではこのアハルテケを由来とした『アハルテケステークス』というレースが東京競馬場で年1回行われている。
用途
古代品種の遺伝的優位のため、アハルテケが新しい品種、ごく最近のネズパース種 Nez Perce Horse (en) (アパルーサ×アハルテケ)を開発するために使われた。アハルテケはその自然の運動能力のために、偉大なスポーツホースとなり、馬場馬術、障害飛越、馬術競技、競走、エンデュランス馬術の乗用に適している。