全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。
※本項は『ブルーアーカイブ』メインストーリーVol.3「エデン条約」編のネタバレを含みます。
概要
現在のトリニティ領内にかつて自治区を有した、数ある分派の一つ。諸派の統合に向けた「第一回公会議」において唯一反対の立場をとり続けた結果、連合を果たしたトリニティ総合学園から激しい弾圧を受け、自治区からも追放されてキヴォトスの表舞台から姿を消した。
現シスターフッドの前身である「ユスティナ聖徒会」からは特に苛烈な弾圧を受けていたが、同時に何らかの意図を背景として逃亡の手引きもされていた模様。
名目上は「アリウス分校」となっているものの、既に学園としては機能していないようで、アリウスと接触したトリニティのミカ曰く「何かを学ぶことがない生徒の事を生徒と呼べるのか」とのこと。
各々の武器を好きなようにデコレーションしているキヴォトスの生徒たちの中でも、アリウス生徒たちが使用しているスコーピオンEVO3やマグプルM4、FIM-92といった火器は全く装飾されておらず、また後述する窮状のわりに武器装具だけは高級な実戦仕様と異質さを放っている(モブ生徒の立ち絵ではMGL-140を装備している)。
ガスマスクやマスクを被っている者が多いのも特徴。特殊装甲持ちの「暴走した」者に関しては、倒すと蒸発して消える。
トリニティ・補習授業部所属の白洲アズサの出身校であり、彼女の制服の右腕にはトリニティの、左腕にはアリウスの校章があしらわれている。
沿革
弾圧を生き延びたアリウス派の残党は、逃避行の末トリニティ領内のカタコンベ(地下墓地)を通って未開の地で自治区を打ち立て、外部との一切の関係を絶ち、連邦生徒会の目も届かぬ孤立状態となった。
限られた物資を巡って自治区を二分する戦争まで起きるなど極めて治安が悪化した中で現れた「大人」─ベアトリーチェが指導者としてアリウスを掌握、生徒たちは歪められた教義の下、手駒としての思想教育や軍事訓練を受ける事になる。
ベアトリーチェが与えた歪んだ解釈の最たるものが「スクワッド」がよく口にする「vanitas vanitatum et omnia vanitas(全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ)」に対するものであろう。生徒に虚無感と憎しみを植え付け正当化し、幸福を望んで夢を見る事や希望を抱く事を悪として厳しく罰していた。
敵対していたゲヘナはもちろん、自身たちを追いやったトリニティへの憎悪をも糧に水面下で準備を進め、両陣営の幹部が一堂に会するエデン条約の調印式当日に式典会場を狙った大規模テロを敢行(エデン条約編3章)。
自分たちこそ「新たなエデン条約機構」と宣言し、「戒律の守護者」ユスティナ聖徒会のミメシスを兵力として顕現させ、両学園に事実上の宣戦布告をする。
事件後(エデン条約編4章)
先生がエデン条約に持ち込んだ“異なる解釈”によってミメシスの顕現が機能不全となり、アリウス分校の戦力が低下。加えて態勢を立て直したトリニティやゲヘナの主力との交戦によって会場に侵入した部隊は敗走を余儀なくされ、当初の侵攻計画は失敗に終わる。
一方のベアトリーチェは「ロイヤルブラッド」が持つ神秘を搾取する儀式でキヴォトス外の存在と接続することを画策していたが、生贄にされようとしている仲間を奪還するため離反した「スクワッド」の奮戦に阻まれ敗北。ゴルコンダの介入によってアリウスから姿を消した。
事態の全容を把握したトリニティはティーパーティーの陣頭指揮のもと、聖徒会の軍勢を単身抑え込んでいた自校の生徒の救出およびアリウス自治区の解放を目標とする「アリウス修復作戦」を実施し成功を収める。
その後のアリウス分校(一般生徒)については語られていない(2025年1月現在)。上述の「アリウス修復作戦」という作戦から考えると、トリニティ主導で再教育と名誉回復が図られている…と思いたい。
ようやく歪んだ支配から脱することができたものの、ベアトリーチェに反旗を翻したアリウススクワッドにアリウス側からも追っ手がかかっている点から、彼女の残した思想が一部で根強く残っている可能性もある。
エデン条約で表舞台に出てきたためか、キヴォトスの一般人の間では「知る人ぞ知る」程度には認知されてきているようだ。
校章
髑髏と薔薇、背景に逆三角形。それらを囲う様に記された経典の一節のラテン語表記「 vanitas vanitatum. et omnia vanitas. 」は、日本語訳で「伝道者は言う、『空の空、いっさいは空である』」とされる。
引用元である「『コヘレトの言葉(伝道の書)/ Ecclesiastes』12章8節」を示す英文省略形「ecc. 12:8」も付記されており、この省略形は所属する生徒の装備にも記されている。
髑髏と薔薇のモチーフは、死や空虚さといった主題を寓意的に描く静物画のジャンルとしてのヴァニタスを意識したものと思われる(特に髑髏はジャンル全体で頻出する)。
保有兵器・車両等
- NSM… 式典会場の攻撃に使用された。本来のNSM(Nytt sjømålsmissil / Naval Strike Missile)はノルウェー製の対艦ミサイルで、全長約4m、直径60㎝、射程は200㎞。ステルス性を意識した形状を採用するだけでなく、地形照合や200個の経由地点を登録することで複雑な軌道で飛行することができ、迎撃が非常に困難なミサイルとなっている。その優れた性能から開発国ノルウェーだけでなくアメリカ等の西側各国でも採用されることになっており、自衛隊でもF-35戦闘機の爆弾曹に収まるよう改良された派生型、「JSM」を配備予定である。
後にこのミサイルはゲマトリアから提供されたオーパーツであったことが判明する。
主な組織・生徒
アリウススクワッド
余談
モチーフ
キリスト教にまつわるモチーフが数多く見られるトリニティの分派とあって、その校名は第1ニカイア公会議において破門された司祭・アリウスとその一派に由来すると思われる。
アリウス派は、後にキリスト教主流派となる“いわゆるアタナシウス派”(≒ニカイア派)と同様に「父・子・聖霊」を神としつつ、あくまでも「父なる神」を最上位に位置づけ、被造物として最初に創造された世界の理たる“ロゴス”のひとつである「子なる神」=イエス・キリストが有する神性については、父なる神の「養子」になった事によるもので、両者は同質ではないとする説を唱えた。
多神教に発展する可能性をはらんだアリウス主義は、キリスト教世界の分裂を招きかねない思想として公会議の主要な議題となった。反アリウス派は、三位一体(トリニティ)説は「父なる神・子なる神・聖霊なる神」の全てが「永遠の昔より存在し完全な神性を持つ」事を大前提とする立場をとった。
この公会議ではアリウス派が異端とされ、キリスト教における基本教義としてニカイア信条が採択される。なお参考までに、公会議に出席した300人以上の聖職者の中で最終的にアリウス主義の立場をとったのはほんの数名だったという。
また、第1ニカイア公会議は325年、後に同じ地で開かれた第2ニカイア公会議は787年。アリウス分校がどれだけ雌伏の時を過ごしたのかは明言されないが、元ネタと思われる二つの公会議が460年ほど隔たっているという点は一考に値するかもしれない。