概要
先カンブリア時代末期のエディアカラ紀に生息していた生物群。エディアカ紀の別名「ヴェンド紀」から「ヴェンド生物」(ベンド生物)とも呼ばれている。
名前は最初にこの化石が見つかった南オーストラリア州・アデレードの北方にあるエディアカラ丘陵にちなむ。
発見者は当時、南オーストラリア州政府の地質調査官補であったレギナルド・スプリッグである。スプリッグがエディアカラ丘陵付近の古い地層を調べていた際に、多細胞生物とみられるこれらの印象化石が見つかった。
発見当初はカンブリア紀の生物の化石だと考えられたが、後に前述した通りカンブリア紀直前のものだと判明した。
肉眼的に確認できる生物化石としてはもっとも古いもののひとつで、これより前の時期には(肉眼で目視できるサイズの)大型生物化石が欠如している。これらの生物群が突如出現した現象はアヴァロン爆発(アバロン爆発)と呼ばれている。
特徴
多くのエディアカラ生物は、植物や刺胞動物のような単調で規則的な姿を持っている。しかし、その構造は明らかに植物ではなく、動物的な特徴も著しく欠如している。その中で、カルニアとランゲアなど葉っぱのような繰り返し構造を持つものは、「ランゲオモルフ」(Rangeomorph)というグループとしてまとめられる。これらの生物は、底部にある一本の柄で海底に固着し、葉状の本体部で水中の養分を濾過摂食するものだと思われる。
ディッキンソニアやスプリッギナなどは、一見節足動物や環形動物のような体節を持つようにも見えて、特にスプリッギナは三葉虫の祖先と思われる経緯もあった。しかし、その体の左右の会合線に注目すると、実は1本ずつ左右交互に繰り返したパーツから出来たものだとわかる。このため体の仕組みは左右対称でなく真の体節はないのだが、化石に含まれるコレステロールがこれが動物であることを示してはいる。また、想像される体の動きから、平板動物のセンモウヒラムシという現生する最も単純な組織構造を持った動物に近いのではないかという学説も出された。
一方、トリブラディキウムなどは現存する動物門に見当たらない螺旋三放射の体制を持っていて、「三裂動物」という原始的な動物のグループである、または別の生物の器官である、などの説もある。
しかし、僅かであるものの、現存の動物門との関係性が広く認められる種類も存在する。例えばネミアナやシクロメデューサは刺胞動物に属するクラゲの仲間ではないかと言われている。Haootia(和訳未定)は、既知最古の筋肉組織を持っていて、刺胞動物である可能性も高い。キンベレラは左右相称で、活動の痕跡も化石に残されており、原始的な軟体動物である可能性も指摘される。現存する最も原始的な動物門と見なされる海綿も、この時期から出現し始めた。
類縁関係
多くのものは現生の生物どころか、その先のカンブリア紀との生物の関係性ですら不明である。非常に原始的な動物や、エディアカラ紀のみに存在する全く別の生物群などの説がある。また、エディアカラ生物は全て海洋生物という説が最も有力であるが、一部の種類に関しては地衣類・藻類・真菌・単細胞生物の群落・陸生のものなどの異説もある。
世界の主な産出地
現在、エディアカラ生物群の化石は南極大陸を除く全大陸で発見されている。
これら産出地はすべて古代のロディアナ超大陸が分裂した境目であり、大陸の分裂が多細胞生物の進化を促したと考えられている。
世界の主な産出地は以下の通りである。
代表的なエディアカラ生物たち
- ディッキンソニア(Dickinsonia)
- カルニオディスクス(Charniodiscus)
- トリブラディキウム(Tribrachidium)
- カルニア(Charnia)
- ブラッドガディア(Bradgatia)
- プテリディニウム(Pteridinium)
- キンベレラ(Kimberella)
- パルヴァンコリナ(Parvancorina)
- ネミアナ(Nemiana)
- エルニエッタ(Ernietta)
- エオポーピタ(Eoporpita)
- ヨルギア(Yorgia)
- スプリッギナ(Spriggina)
- ランゲア (Rangea)
- (和訳未定)(Haootia)