曖昧さ回避
- ヨーロッパの伝承に登場する妖精王。本項目で解説する。
- Fateシリーズに登場するサーヴァント。→オベロン(Fate)
- 女神転生シリーズに登場する悪魔・仲魔。→オベロン(女神転生)
- ドリフトスピリッツに登場するフィガロをベースとしたチューニングカーである「NISSAN FIGARO Oberon(FK10)」。
- 天王星を周回している、当星の第四衛星の名前。
概要
オベロンは妖精の王とされ、その姿は身長が1メートルほどの醜い又は端正な小人とされる。
その源流は中世ゲルマンの伝承に登場する、魔法の隠れ蓑(タルンカッペ)を所持した妖精王アルベリヒ、または中世ドイツ叙事詩に登場するディートリヒ・フォン・ベルンの道化アルベリヒとされる。
オベロンは13世紀のフランスの武勲詩『ユオン・ド・ボルドー(ボルドーのユオン)』に初めて登場する。
作中のオベロンは小人(ドワーフ)の王で主人公ユオンを助ける存在として、「魔法の笛」と「魔法の杯」を与え、困難を克服させている。ただし、キリストの教えを破ったユオンの助けに応じられないという一面も見せている。
「ユオン・ド・ボルドー」のオベロンはモルガン・ル・フェ(アーサー王の異父姉)とジュリアス・シーザーの子とされ、このことからオベロンはアヴァロン島の王とも伝えられる。
また別の説ではケファロニアの女王の息子であるとされ、オベロンの洗礼時に多くの女官が集まって贈り物を捧げたが、悪い妖精が来て彼に背が低くなる呪いをかけたという。
他には元はトロンクという名の醜い小人だったが、美しい妖精になって王国を獲得したという説もある。
グリモワール『精霊の職務の書(Liber Officiorum Spirituum)』ではオベリュオン(Oberyon)、オベイリュオン(Obeyryon)の表記で言及される。本書では80体の悪魔についての解説のあとに妖精を扱ったパートがあり、そこで妻のミュコブ(Mycob、ケルト神話のメイヴと関連する「クイーン・マブ」の事)とのあいだにもうけた7人の娘について語られる。
写本にある娘達の名はそれぞれ「リッリア(Lillia)」「レスティッリア(Restillia)」「ファタ(fata)」「ファッラ(falla)」「アフリア・ヴェ・アフリカ(Afria ve Africa)」「ジュリャ(Julya)」「ヴェナッラ(Venalla)」との事(参考pdf88ページ、写本スキャン画像上部参照)。
オベリュオンは物理学、鉱物や植物についての伝承について教え、ひとを不可視にし、隠された宝物とそれを見つけ出す手段について明かすという。
ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』では妖精の王として登場。いたずら者の妖精パックの悪ふざけを見て喜んだり、羊飼いに化けて人間の女性に絡んだりするなど放埓な性格の持ち主である。
妖精の女王である妻ティターニアとインドから連れて来た子供を巡って喧嘩をしており、パックに命じて“浮気草”を取ってこさせる。パックの帰還を待つ間にオベロンはデメトリアスとヘレナの会話を立ち聞きし、“浮気草”の力で両者を娶せようとする。
パックの手により“浮気草”の汁はティターニアと森に入った人間の男のまぶたに塗られ、ティターニアの方は見事図に当たって機屋のニック・ボトムを愛するようになる。だが、もう一方は本来の目標であったデメトリアスではなくライサンダーに魔力がかかり、男女四人の関係は混迷を極める。
オベロンはすぐにパックを叱りつけて“浮気草”の魔力を解かせ、自身もティターニアの下へ行って子供の所有権を得、彼女のまぶたにディアナの花を塗って正気に戻し、両者は和解する。
時代設定はテセウスとヒッポリュテが生きていた時代、つまりギリシャ神話時代である。
ゲーテの戯曲『ファウスト』第一部の「ワルプルギスの夜の夢」ではオベロンとティターニアの金婚式が描かれる。なお、ファウストの元ネタの実在人物ヨハン・ファウストが1466年か1480年生まれで没年は1541年。彼が博士となり、弟子を持つようになってから10年ほどした時点で物語が始まる。物語開始時点から50年遡ると、オベロンとティターニアが結婚した時期は15世紀後半ということになる。