概要
ユーラシア大陸の中西部、中央アジアと東ヨーロッパの境界に位置する湖とも海ともされる面積約37万4千平方km(日本の面積とほぼ同等)の水域。
湖とした場合は世界最大の湖である。「湖」であるか「海」であるか長年議論が交わされてきたが、2018年に正式に「海」と認定された。
地理
概して南部ほど深く、北部ほど浅い。上述の海か湖の論争は、この地域に大きな油田・天然ガス田(アゼルバイジャン首都沖のバクー油田が有名)があり、その各国間での領土分配が海か湖かによって異なることも一因となっている。
沿岸部はカスピ海から水蒸気が供給されるため、特に南西側の山が迫る地域(イランのマザンダラーン地方、アゼルバイジャン)などはかなりの降水がある。ただし北東・東方向は蒸発が勝る砂漠・ステップ地域。
生態系
カスピ海の水域および沿岸と、カスピ海の水源に関連しているであろう地域は多くの固有種を含む貴重な動物の宝庫で、非常に巨大な亜種が多い。どれも絶滅したが、カスピトラやバーバリライオン、インドゾウの最大亜種などが棲息していた。
水棲では、世界最大の淡水魚であるチョウザメのベルーガや、どうやって到達したのかが未だに不明なカスピカイアザラシなどが代表例。カスピカイアザラシの先祖がどうやって到達したのかなどの背景はいまだに解明されていない。
河川からの流入はあるが流出はなく、蒸発しか水の出口はない。そのため、水量の変動が大きいだけでなく、塩分などが過剰に蓄積されるため、微生物など以外の生物が棲息できない環境が形成されやすい。しかし、カスピ海はカラ・ボガス・ゴル湾と呼ばれる部分が塩分を溜め込むため、生物が棲息できる環境が保たれている。
もともとはチテス海の一部で、地中海や黒海、北海等の外海とつながっていたが約550万年前に陸地に閉じ込められたと考えられている。アラル海や他の湖も、カスピ海とは一体だった。
北海と繋がっていた時期か、それ以降の湖と化した時期の一時期、おそらくは氷河期から古代ローマ/ギリシャ時代までは、海鳥やクジラやイルカなど海棲の生物がいた可能性が、近隣の山々に残る壁画から示唆されている。カスピ海が一度干上がったまたはそれに近い状態になったのが、これらの生物の子孫が存在しない原因なのかどうかは不明。
創作上での影響
- 『アルスラーン戦記』に登場する広大な内陸湖、ダルバントはカスピ海がモデルとみられる。