「ふふ……このガノンを倒さぬかぎり姫は手に入らぬぞ」
概要
一人称は「わし」「オレ」。
ゼルダの伝説シリーズのコミカライズ版でも最初期に登場した魔王ガノンとなる。当時はガノンの設定が曖昧であり、それだけに逆輸入された設定も多い。
シリーズでも有名な魔法弾打ち返しも本作で描かれている。
性格
大物ぶっているが非常に短気。失態を働いた部下を火炎放射で焼き殺したことがある。
逆にゼルダ姫に対しては「そなた」予備をするなど彼なりに礼を尽くした態度を取る。
容姿
リンクの三倍はある長身で大柄な体格だが、肥満というよりは筋肉質。外見はブタではなくコウモリを思わせる双翼を生やしており飛ぶことが出来る。
能力
- 飛翔
双翼を使って高度の飛行能力を発揮する。リンクから逃げる時に使うことが多い。
- まやかし
ゼルダの伝説で使用。自らを巨大な石像に化けさせることで威圧感を出していた。口から火炎放射を吐くことが出来る。
その巨体でリンクを踏み潰そうとしたが、知恵のトライフォースの力によって正体を暴かれる。
- 透明化
まやかしを暴かれたガノンが使った次の手。原作とは違い常に姿を消している。
この能力で姿を隠しながら攻撃を仕掛けるのが基本戦法となる。
ゼルダの伝説では闇雲に放った辛子パチンコで目印を付けられたことで破られ、リンクの冒険ではロザリオをかざしたリンクに破られた。
- 力のトライフォースによるタフネス
ゼルダの伝説で使用。力のトライフォースによって胸をマジカルソードで貫かれても耐え抜くほどの生命力を得ている。とはいえダメージはしっかり受けるので不死身でも無敵でもない。
リンクはマジカルソードと知恵のトライフォースを合体させることで一振りの槍を生み出し、ガノンの額を貫いてトドメを刺した。
- 復活
リンクの冒険で使用。原作通り自分を殺した者の血によって灰の状態から復活出来る。ただし相応の血液がないと復活出来ない模様。
またガノンの意志で復活は出来ないようで、劇中では元配下や黒幕が儀式を行うことでガノンを復活させようとしていた。
- 同化・生気吸収
生物の体内に潜む能力。しかも生気を奪い取って糧にすることが出来る。精気を奪われた者は急激に老化してしまう。
体内から抜け出す際は、生物の肉体を破壊してしまうので同化された者が助かる道はない。
- 落雷
リンクの冒険で使用。リンクの死角である頭上から直撃させたが大したダメージにはならなかった。
- 光線
リンクの冒険で使用。口や両手から光線を放つ。使用頻度が非常に高く、ガノンの代表的な技となった。
- 武器召喚
リンクの冒険で使用。曲刀や戦斧を取り出して武装する。
ラストバトルではリンクに近づかれたことで光線が使えなくなったため、戦斧を取り出しての接近戦に切り替えた。
リンクのニューソードと互角に打ち合ったが、怒れるリンクの一撃で斧部分を破壊されてしまった。
活躍
ゼルダの伝説
ハイラル地方の小国に攻め込み、ハイラル宮の近衛隊長ゾッドを部下(親衛隊長)に引き込み、続けてゼルダ姫と乳母インパを監禁した。
当初はまやかしによって巨大な石像に化けており、役に立たない部下を火炎放射で焼き殺すなど激情的かつ残虐な面を見せていた。普段は魔王に相応しい言葉遣いだが、その実かなりの短気で思い通りに事が運ばないと途端に怒り出す。
8つに分けられた知恵のトライフォースの在り処を聞き出すべくゼルダ姫を尋問するが、既にトライフォースの在り処を示す鍵(お守り)はインパに託され逃げられてしまっていた。すぐさま追っ手を差し向けるが、手下はリンクによって撃退され、インパは逃走中に力尽き死亡。お守りはリンクに託された。
部下からの報告でそのことを聞き、ライネルやウィズローブなど次々と刺客を差し向けるがすべて失敗に終わる。
ついにはガノンの神殿まで乗り込まれ、親衛隊長ゾッドもリンクに敗れ去る。玉座にてリンクと直接対決となるが、石像のまやかしは知恵のトライフォースによって破られ、姿を消して攻撃を仕掛けるも辛子のパチンコ玉を当てられて目印を付けられたことで破られる。更には反撃まで受け胸をマジカルソードで貫かれる。
リンクを侮れない敵と認め「自分で出向いてでも早くお前を始末するべきだった」と後悔を口にする。そして「力のトライフォースがある限りガノンは死なぬ」と言い残して飛翔。このまま逃げて傷が癒えるのを待つことにした。
だがリンクが追い掛けて来たため迎撃するべく構えるがリンクが手に持った槍を見て驚愕する。それは知恵のトライフォースとマジカルソードを合体させて生まれたものだった(力のトライフォースに対抗するために合体させた)。
そのことに気づいて動揺するも時既に遅く、眉間を槍によって貫かれ敗北した。
ガノンの神殿から逃げ出すも追いつかれて命を落とす……皮肉にもそれはインパにした仕打ちと同じものだった。
リンクの冒険
初代ゼルダ姫を眠らせた中年の魔法使いが新たな黒幕として登場。灰となったガノンを復活させるべくリンクの血を狙う。
その魔法使いの名はガノン。
「わしがガノンだ。そーとも」
「生きのびてきたのだ」
「トライフォースを手にするために。何百年も……」
過去魔法使いのガノン(以下「魔法使い」)は、若き国王(初代ゼルダ姫の兄)に仕えながら勇気のトライフォースの行方を探していた。手始めに王を唆して悪の心(野心)を吹き込み、その目的を叶えるという名目でトライフォースを探させた。
魔法使いは初代ゼルダ姫がその行方を知っていると見て拷問に掛けようとしたが、王に止められたため業を煮やし、王が不在の間に無理やり口を割らせようと迫る。だが激しく抵抗されたため魔術によってゼルダの魂を奪い取ってしまった。
それを見た王は、魔法使いが妹を殺したと勘違いして逆上し斬りかかる。深手を負った魔法使いはいずこかへと姿を消した。
以後も魔法使いはすべてのトライフォースを手に入れるべく数百年を生き続けたが、長い年月を重ねる内に悪の心が人格を持ち始めていた。やがて力を付けた悪の心は魔法使いから分離して実体を得、怪物の姿を象った分身として誕生。トライフォースを求める同志となった。
本作では、この分身が原作に登場する「ガノン」の正体とされる。
魔法使いの方は、リンクの冒険の説明書で語られる魔術師がモデルとなっており、初代ゼルダ姫を眠らせるのと引き換えに絶命している。
このため魔法使いの正体がガノンというのは独自設定である。
以後、魔法使いは仮面をつけて黒幕に徹し、ハイラルの侵攻は分身の方が務めていた(このため分身の方が「ガノン」として表舞台に立っていた)。
水晶玉を通して遠くの景色を見たり、天候に干渉して海上に嵐を発生させるなど魔法使いに違わぬ力量を持つ。しかし直接戦闘は苦手なようで、国王に斬り付けられて逃げ出したり、終盤ではナイフを手にリンクたちに襲い掛かっている。
分身のガノンと同じく短気であり、失態を働いた手下に激怒して魔法で焼き払ってしまっている。
2巻の序盤ではリンクとゼルダが合流したのを知ると、彼らが乗る船を嵐によって転覆させ離れ離れにさせている。魔法使いは「二人に力を合わせられると何かと都合が悪いのでな…」と言い訳するように呟いているが、それを聞いた手下には「ホントにそれだけかな?」と陰口を言われている。
その後もゼルダがダルニアの街に保護されていると知ると手下たちを執拗に差し向けていた(ゼルダの命を狙ったのか、身柄を確保したかったのかは不明)。
2巻の終盤ではリンクに化けたゼルダ姫の血を手下たちが抜き取り、その血を用いてガノンが復活する(これによりゼルダ姫は絶命する)。しかしリンクの血ではなかったため不完全な復活となってしまい、顔の皮膚がドロドロに溶けたゾンビのような姿となってしまった。
このため顔面に焼けるような激痛を感じる時があり、不完全な復活であることを示唆している(またゼルダの遺志でガノンを苦しめているような描写もされている)。
口調も前作のような魔王然としたものではなく、リンクへの憎悪がそうさせるのか暴君そのものの乱暴なものになっている。
復讐心に燃えるガノンは自らの手でリンクを殺すと宣言し、手下たちにも手出しは無用と告げる。だが魔法使いは「勇気のトライフォースを見つけ出せるのはリンクだけだ。手に入れたところで横からいただく」と待ったを掛け、ガノンにはトライフォースの捜索だけを命じる。
納得できなかったガノンは「オレに命令するな!! このガノンにそんなケチな仕事をやらせようというのか!?」と激昂。憂さ晴らしに町を襲って虐殺を行ったが苛立ちは解消されず、これにより両者の仲は最悪なものとなってしまう。
「グヮハハハハ!! ごくろうだったなリンク。「勇気」のトライフォースはわしがいただく」
「きさまの役目は、ここで…終わりだ!!」
復活したガノンは大神殿を前にリンクを強襲。しかし、ここでゼルダ姫に助けられたことでリンクの仲間になっていた魔物が飛び掛かる。魔物の突撃によってガノンは溶岩の湖へと道連れにされるが、「この程度では死なない」と復活。魔物は姿を見せることがなかった。
その間にリンクは大神殿に逃げ込んでしまい、後を追うも内部では術が使えず、数々のトラップの前に不利を余儀なくされる。このままではリンクに勇気のトライフォースを取られると焦るが、外に引き返すと城を占拠し、ゼルダの遺体を輸送中の近衛兵ビリーを人質に取る。
そしてリンクが大神殿を出たところでトライフォースとの交換を迫った。更には「わしの血を与えればゼルダは生き返るかもしれない。保証はせんがな」とも言い放つ。
悩むリンク。焦れたガノンはリンクに攻撃を仕掛け、目の前でビリーをいたぶることで脅しをかける。だがゼルダの遺志が働いたのか、ガノンは顔を抑えて苦しみ始めてしまう。これによりゼルダの遺体とビリーを手放してしまう。
ビリーはリンクに助けられたが、ゼルダの遺体は溶岩の湖の中へと落ちて行ってしまった。
怒れるリンクはガノンと空中戦を展開。ガノンは光線を放つが、リンクはニューソードと勇気のトライフォースを合体させることで光線を反射させて来た。更にはサンダーの魔法を喰らったことで力が入らず、手強いと見たガノンは即座に逃げ出した。
その後、密かに魔法使いの体内へ同化する形で身を潜める。
そのことを知らないまま今度は魔法使い自らが動き、リンクが初代ゼルダ姫を目覚めさせた後にトライフォースを奪おうとするが失敗に終わる。
直後、魔法使いを見限ったガノンは反旗を翻し、体内を破壊して抜け出す。そのまま不意を突いてリンクが持つトライフォースを奪い取った(この際、魔法使いは急激に老化しており分身に生気を奪われたような描写となっている。ゼルダ姫の血を奪った報いということか)。
ミイラのような姿になり致命傷も受けた魔法使いは、懺悔するようにガノン(分身)の正体を語る。
「あいつは…あいつは私の分身…なのだ」
「いつの間にか私から抜け出し、しだいに、私より強く大きく…なってしまって」
「ついには私自身をうらぎった…あいつは私の…悪い心…なのさ」
「(初代)ゼルダ姫、私は…私は…あなた…を…」
数百年を生きた魔法使いのガノンはこの世を去り、残された分身のガノンはまんまとトライフォースを奪い取る。
魔法使いから抜け出したガノンは大空へと飛翔。そうはいかないとリンクもまた空を駆ける。こうしてハイラルの空を舞台に最後の戦いが始まった。
ガノン「わしを倒せばゼルダの復活はなくなるのだぞ!!」
リンク「ハイラルをきさまの物にしてまで…姫が復活を望むと思うかっ!?」
リンク「姫は…炎となって消えた…ハイラルをきさまから守るために!! たとえ姫がゆるしても…ボクはお前を許さないっ!!」
最初は互角に渡り合っていたがゼルダ姫を失った怒りに燃えるリンクに圧され始め、逃げを打ったところで巨大化した剣によって脳天を貫かれ敗北した。
「バカ…め…これで本当にゼルダの復活は…なく…なった…血さえ…あれば…」
その言葉を最期にガノンの遺体はドロドロに溶解し、血の一滴も残ることはなかった。
この瞬間、トライフォースへの妄執に囚われた「ガノン」という存在はこの世界から完全に消え去ったのだった。
遺体となったゼルダ姫だが、ラストシーンにてトライフォースが起こした奇跡によって魔物と共に復活を果たすこととなる。
余談
ここまで見てもらった通り、本作における“ガノン”の正体は人間から誕生した存在である。
当時のメディアミックスでは「ガノンは魔族」「ガノンは別世界から侵略して来た怪物」とされていることが殆どで、ガノンの正体が人間だったというのは本作のみ。
トライフォースの力で人が生き返るなども含め、これらの設定は形を変えて神々のトライフォースへと逆輸入されている。
(続編に当たる古代の石盤では、ガノンから分離した邪気が新たなガノンとして誕生するという本作のオマージュも見受けられる)。
関連タグ
ゼルダの伝説 初代ゼルダの伝説 リンクの冒険 コミカライズ 乱丸
アグニム:神々のトライフォースの悪役。ガノンの分身と呼ばれる司祭。本作と同じく魔法攻撃を剣で跳ね返される。
ガノン/ガノンドロフ:神々のトライフォースではガノンドロフと呼ばれる男がガノンに変異してしまったとされる。アグニムに憑依しており、アグニムが倒されるとコウモリの姿で抜け出して逃走する。しかしリンクに追いつかれラストバトルへ突入する。
厄災ガノン:正体は人間のオリジナルから生まれた邪悪な分身であり、本作のガノンのオマージュに当たる。
黒龍(ティアーズオブザキングダム):ハイラル城の地下から空へと飛び立ち、リンクと空中戦の末に頭部を貫かれて敗北。エンディングでは重要アイテムの力でゼルダ姫を取り戻すという流れが本作とまったく同じ。