概要
キ83とは、1941年に大日本帝国陸軍が爆撃機隊の護衛を目的として、三菱に製造を依頼した試作戦闘機である。
キ83の開発経緯
そもそも何故キ83の製造が依頼されたかと言うのは、日中戦争にまで遡る事になる。日中戦争において日本軍は中国大陸の奥深くまで爆撃を行っていた。
しかし、日本軍の爆撃機は中国軍の迎撃機にかなりの損害を出しており、前線からは爆撃機に随伴できる戦闘機の存在が求められ、更に百式司令部偵察機の後継機も必要であると言う意見も出ており、その為大日本帝国陸軍は三菱に対して長距離戦闘機の開発を指示した。これこそがキ83誕生の瞬間である。
そうして提案された性能は以下の物である。機体は複座であり、前方と後方に武装を持つ。エンジンはハ104かハ114(火星エンジンの18気筒)またはハ203を装備、最大速度は650km/hだが、将来的には700km/h以上出すことを目指す。武装は20mm固定機関砲と7.7mm旋回機関銃。
方針をめぐる迷走
こうして開発が開始された訳である…がしかし、開発は難航する事となる。
何故なら陸軍の要求が二転三転し、挙げ句の果てには海軍までの意見も聞き入れる事となった為だった。機体と翼面積の小型化、視界の良好性を求められ、更には司令部偵察機や襲撃機としても使える様汎用性も求められる事となった。その為三菱側は、武装とエンジンの変更などで対応してきた。
この様な経緯があり、キ83は後部旋回機関銃を廃止し、単座化。偵察機型では機体後方に搭乗員を乗せ、この部分は風防ではなく窓を設ける事となった。
司令部偵察機に転用できる様、速度はかなり高速であり、高高度でも戦闘できる様排気タービンが搭載される事となった。
この時には「高高度で敵機を迎撃・撃墜する機体」という開発目的になっていた。
迷走に振り回されたのは三菱だけではなく…
陸軍はこうした迷走を川崎に手掛けさせたキ102でも起こしており、二式複座戦闘機屠龍の後継として「キ96」を試作させているが、B-29迎撃用として期待が持てる良好な性能を示したものの、運用方針が定まらず一度開発を中止している。
かと思えばまもなく戦闘機(キ102甲)・襲撃機(キ102乙)としてまた川崎に開発を命じており、川崎はキ96を改良してキ102を開発している。
試験飛行と戦後
二転三転する要求に振り回されつつも、やっとの思いで完成したキ83の1号機を飛ばす頃には、既に日本は1944年11月となっており、敗戦の色が濃くなってきていた。試験飛行は各務原飛行場で行われ、高度8,000mで686.2km/h、高度5,000mで655km/hを記録し、機体の操縦性や安定性は非常に良い結果を残した、更に排気タービンのトラブルもほぼ無かった。唯一の欠点はハ43エンジンの振動である。エンジンの振動で尾部もまた振動し、安定性を損なう事が指摘された、その為応急的に水平尾翼に支柱を付けて対応し、増加試作機で改良する事に決定した。その後も2号機、3号機、4号機と製造していったが、空襲と地震がこれ以上の製作を阻んだ。
キ83の悲劇はまだ続き、2号機は試験飛行中に風防が破壊され、搭乗員も殉職した墜落事故を起こし、3、4号機はアメリカ軍の空襲により破壊され、結局残ったキ83は1号機のみとなった。
戦後、空襲の難から逃れる為長野の松本飛行場に移動し、残されたキ83は進駐したアメリカ軍が鹵獲した。1号機は松本飛行場で米軍による試験を受ける事となった。この時キ83にハイオクタン価の燃料を使用した所、最大速度762km/hと言う驚異的な結果を残した。この数値は高速研究機キ78の699.9km/hを大幅に越す記録であり、キ83が如何に優秀かがわかるエピソードである。その後のキ83は、アメリカ本土に持ち込まれ、行方不明となった。
構造
キ83は防弾性能に秀でており、操縦席と後部座席の後方には12ミリ厚の防弾銅板が配備されており、操縦席頭上にも8ミリ厚の防弾銅板が設置されていた。燃料タンクの防備もしっかりとしており、左右翼内の1番から3番までの燃料タンク内には窒素ガスを封入、胴体内部はセルフシーリング式にゴムで覆われ、防漏タンク化されており、ゴム厚は16mmの多層構造であった。また、本機は複座型では操縦席と後部座席が離れた場所にある為、三号機内通話装置二型が使用されている。他にも四式自動操縦装置や無線装置、航法装備を備えている。
武装
キ83の武装は機首下面に集中配備されており、ホ155-I30mm機関砲2門、ホ520mm機関砲2門が装備されている。弾薬がホ155で各80発、ホ5が各160発となっている、追加武装として50キロ爆弾を2初装備できる。
各型
遠距離戦闘機型のキ83甲と司令部偵察機型のキ83乙に、百式司令部偵察機の後続機として後部座席を偵察様に改造したキ95と襲撃機型のキ103がある、しかし、キ95とキ103は計画止まりである。
登場作品
檜山良昭の架空戦記『大逆転!幻の超重爆撃機「富嶽」』:「旋風」と名付けられたキ83甲が正式採用され、富嶽・峻山(キ91)の護衛戦闘機として実戦参加する。