コンボイ司令官が爆発する!
いちおうまじめなしーんです
同話冒頭にて、兵器開発工場に攻め入ったジェットロン部隊との戦闘で集中砲火を浴び、更に工場内の爆発に巻き込まれたことで大ダメージを受けたコンボイ司令官。何とか同行したアイアンハイド等仲間の協力もあって基地に帰還したが、ダメージは非常に甚大で、治療を行う軍医のラチェットはホイルジャックに様子を聞かれ「機能が停止しないで帰ってこられたのが不思議なくらいさ」と驚愕し、様子を見ていたドラッグが「司令官はもうダメなんだ」と悲観し、かつてデストロンの襲撃から助けてもらったことが縁で協力者となったスパークプラグも、「何かきっと手があるはずだよ!」と鼓舞する息子のスパイクに同意できず、「ワシには分からんよ!」と狼狽する程の状態に陥っていた(コンボイ自身も「だめだ…エレクトロパルスが弱っていく…」と身が持たないことを理解していた)。
一方忍び込んだコンドル経由でその様子を確認したメガトロンは、そのまま宿敵コンボイを仕留めるべくトドメを命じる。基地内でかつ周囲が混んでいるということもあってかまともに反撃できず「おい、何だあの"鳥"は!?」「コ、コンドルだ!」「早く止めなさいっ!!」などとパニック状態のサイバトロン面々を尻目に、コンドルが両目からビームを袈裟懸けよろしくコンボイの右肩から左わきに放つと、修理中で内部機械が露出し、無防備だったコンボイの胸部は爆発とともに炎上、煙を上げる。
直後スパイクの親友チップが「大変だ!司令官は中枢部をやられた!きっと爆発してしまうよ!」と忠告するが、ホイルジャックが「みんな下がれ!早く!コンボイ司令官が爆発する!」と改めて退避を呼びかけると、恐れていた通りコンボイは「ほあああああっ!!」と断末魔の悲鳴を上げながらより大規模な爆発を起こし、煙と炎で画面が包まれたところでAパートが終了する。
上記の通り「打ち切りの予定でもあったのか」と邪推してしまうほど極めて早い段階にもかかわらず主人公格たるコンボイが瀕死の重傷を負う販促ガン無視な展開(一応現在主流の1クール方式なら半分達したところであり、起承転結の転に移るにはちょうどよさそうだが)に加え、普通のアニメなら少なくとも同意くらいはしそうな場面での全否定に等しいスパークプラグの返答、「爆発する」と叫びながらなぜか安全そうなはずの画面奥からコンボイがいるであろう同手前側へと寄ってくるチップ(原語では「何か連鎖反応が起きてる!」と様子を見ようとしているシーンである)、やたらとゆっくり後退していくサイバトロンの仲間たちが十分距離をとったところでタイミングよく起きる爆発と直前までの弱弱しさが嘘のような玄田哲章氏特有のやたらとパワフルな叫び(ちなみに英語版では黙って爆発する。「何か言え」「静かすぎて却って違和感ある」と言われることもあるが、「叫ぶ余裕もないくらい衰弱してた」と逆に納得するファンもいる)と、様々な要素が複雑に混ざり合った結果、見事なまでにシリアスな笑いを誘発するシリーズ屈指の迷場面となった。
続くBパートでは、政宗一成のナレーションとともに、スパークプラグの「みんな怪我はないかね」という明らかに爆発源たるコンボイの安否は含まなそうな発言と共に幕を開けるのだが、(ある意味当然っちゃ当然ではあるものの)コンボイが派手に爆発したのに生きていたこともまた驚愕だったと思われる。そして紆余曲折の末無事全快したコンボイは、死んだと思って攻めてきたメガトロン率いるデストロン軍団を撃退し、幕を閉じた。
また、「スチールシティ」ではデストロンの罠に嵌りビルドロンにバラバラに解体された挙句ロボットワニに部品を改造されたり腕を砲台に使われるという6話以上、下手をすればIDW版に匹敵するレベルに酷い目に遭うが、これでも生きていた。
後に公開された劇場版『トランスフォーマー ザ・ムービー』において、損傷していた脇腹にメガトロンの放った光線が数発命中したコンボイは、そのまま衰弱するように死んでしまったのだが、ファンからはこの件について「中枢部が爆発してもビルドロンにバラバラにされても生きてたのに、なんでその程度で死ぬんだ」と言われる事がある。
また実写版2作目では実際に中枢部をやられて爆発し、そのまま息を引き取っている(その後復活したが)。
そもそもこの「SOS!サイバトロン」と言うこの回そのものが、
「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」の特徴的要素を20分に凝縮した様な作品である。
例を挙げると、
- 開幕30秒でいきなり襲撃シーン
- 怒涛のジェットロン作画ミス
- 「まだ間に合うさ!デストロンめ!よーし引き摺り降ろして細切れにしてやる!」
- サイバトロンアーク基地のザル警備
- コンドル最強伝説
- 上記の整合性を全力でかなぐり捨てた事により誕生した奇跡的なテンポによって発生した事件
- やたら勇敢且つ行動力溢れるTF超人類
- お留守番爆乳参謀
- stskのニューリーダー病
- 一度間接的に致命傷を負わされたとはいえ容赦の無さ過ぎるコンボイの戦闘
- そして残り2分で終了する最終決戦
etc
と言った具合にこの作品に登場する大体の共通点を詰め合わせた一作なので、この作品を知りたかったら先ずこの回を見るといいだろう。
また描写を見ても、
- 身命を賭して人間たちを助ける優しさがあるために、やはり身命を賭した部下と人間たちに助けられるコンボイ
- 「わしに逆らえばもっと怖い目に遭うのが分からんのか!」などの脅しで部下に犠牲を強い続けたがために、最後にピンチになっても助けられないメガトロン
- 何かにつけて理由なく裏切ると言われがちながら「単純作業を強制されたことを愚痴る」「間違いなく勝てる状況で負けたフリを強制される(しかもそこまでしたのに計画が失敗している)」などメガトロンへの不満を溜める描写がきちんとあるスタースクリーム
と、三者のキャラクター性の描写が丁寧になされている点も見逃せない。コンボイ司令官が爆発する以外は実にこの作品を端的に表したエピソードなのである。
エピソードの原題は『Divide and Conquer』。「分断し統治せよ」と訳されるが、この回ではセイバートロン組とサイバトロン基地組の2チームに分かれるBパート以降の展開や「分断されず団結したトランスフォーマーと人類たち」を表しているといえよう。コンボイ司令官が爆発する割には実によく考えられているエピソードなのである。