「私のようになるかね? 人であることをやめて……」
CV:西村朋紘
概要
スーパーロボット大戦SC2のラスボスを務める男。
そして、現在までの歴代スパロボシリーズにおいて、間違いなく最大にして最悪の事態を引き起こしたキャラクターである。
経歴・人物
元は地球連邦軍の軍医で、科学者のセイジュウロウ・ソガの息子だった。
幼少期にセイジュウロウが作り上げた、「オリジン・ユニット」の劣化複製「セレスチアル・リアクター」の接続実験に参加しており、これが元で人格が豹変。
「より強い者の打倒」「より強いものの破壊」を目的として行動するようになった。
その目的を果たすため、スポンサーのロゴスを利用して「ネメシス・シリーズ」を開発。
ケイジ・タチバナの所属するAフォースを相手に、シリーズの一つ「アスカロン」を駆り幾度も戦いを挑んだ。
最終的にはそれまでに得たデータと、「鳥の人」(マクロスゼロに登場するアーティファクト)に隠されていたオリジン・ユニットを奪取し、最強にして最後のネメシス「アゾエーブ」を開発。
セイジュウロウのもとを離れて姿を消したが、全ての敵勢力がAフォースと真聖ラーゼフォンによって駆逐されたのを受けて彼らの前に姿を現し、破壊の本能のままにアゾエーブから「破滅の波導」を放ち、「ゼロポイント・ブレイク」を引き起こした。
これは、並行世界の壁を突き抜けて、波導の迸った先にある文字通りすべてを無に帰す現象である。
より端的に言えば、ユキムラは「破滅の波導」の一撃を以て、SC2の世界はおろか、無限に存在する並行世界を一つ残らず消滅させてしまったのである。
「時空間の基本構造は無に帰した。全ては原初の混沌へと還ったのだよ。君たちを除いてね」
バレンティナ・レアニカと紫東遙の特攻を受けて「破滅の波導」の二射目まで空隙が空いてしまい、その間は真聖ラーゼフォンがかろうじて作り上げた混沌の空間でAフォースと死闘を繰り広げた。
その時に彼が放った言葉が、彼がどういう人間なのかを表している。
「今ならわかる。マヤン島の伝承に残る滅びの歌とは何だったのか」
「それはこの兵器のことではない。この兵器を作り出した人間の憎しみや恐れ……恐怖そのものだ! それこそが滅びの歌なのだよ!」
「遥かな太古から、人は滅びの歌を歌い続けてきたのだ!」
「見たまえ、この私を! 見たまえ、このマシンを! この私こそ……そしてこのマシン、アゾエーブこそが! 今なお残る、その歌の残響なのだ!」
人間でありながらも全てを滅する悪魔と化したユキムラだが、Aフォースの猛攻の前に敗北。
しかし、ギリギリでオリジン・ユニットの再接続に成功し、「破滅の波導」を放たんと哄笑を上げる。
「一歩……一歩遅かった……ようだな……! つながった……繋がったぞ……オリジン・ユニットが……! 消えろ……! 消えて……しま……え……!」
ケイジ「させない……! させる、もんかっ……! 終わらせるために……そのために羽々斬があるのなら……! 僕は! お前の存在を消し去るっ!!」
「貴様……こそ……消えろおおおおおおおっ!!」
だが、それだけはさせまいと特攻してきた天羽々斬と相打ちになり、「破滅の波導」を放つ前にアゾエーブは爆発四散。
ケイジと共に死亡する結末をたどった。
消滅した世界は「時の調律者」となった真聖ラーゼフォンによって全て修復され、元に戻っている。
人物評
シュウイチロウ・ユキムラという男を一言で言うならば「マッドサイエンティスト」である。
だが、スパロボオリキャラのマッドサイエンティストと言えばアードラー・コッホやエルデ・ミッテ、アギラ・セトメなど数々いるが、彼ら彼女らが良くも悪くも実利益や個人的感情のために動ていたのに対し、ユキムラが求めていたのは「全ての破壊と消滅」という末期的にもほどがある目的である。
しかも、ただ強い力を手に入れて成し遂げようとするのではなく、そのためにどうするべきか、何を優先すべきかを効率的、かつ合理的に考え、計画を立て、実行に移し、そして成功させたという点で、彼は他の多くのラスボスと決定的に異なっている。
セレスチアル・リアクターの影響とはいえ、今までのラスボスがどこまでも人間らしさを持っているのに対し、ユキムラは生身の人間でありながら人間性が欠片も存在せず、純粋極まる狂気と破壊意欲によってのみ行動しているのも見逃せない。
膨れ上がったその狂気は世界そのものの滅却を目指すまでに至り、まさに本人も言った通り、その人物像は「悪魔」と言って差し支えないだろう。
ラスボスとして
アゾエーブの強さも歴代ではトップクラスなのだが、それ以上にユキムラを恐るべき存在たらしめているのは、最後には復活したとは言え、全ての並行世界を完全に滅ぼしたという「実績」である。
スパロボどころか一次・二次創作を見渡しても、恐らくコイツ以外にはそこまでやったキャラクターは存在しない。
歴代でカタストロフを招いた・招こうとした存在と比較すると、
- イデ:天の川銀河を丸ごと因果地平の彼方へ
- ペルフェクティオ:無数の並行世界を滅却
- ケイサル・エフェス:全銀河を死の世界にしようとした
- 御使い:生命体がいなくなった銀河をいくつも破壊
- ユキムラ:全ての並行世界を滅却
と、比較にならないレベルである。
次点があの「破滅の王」であり、それですら全ての並行世界までは及んでいないことを考えると、いかに狂った力であるかは想像がつくだろう。
しかも、ユキムラはあくまで生身の、一個の、特別な力などない地球人であり、それでありながら人知を超えたロボットを作り上げ、自らの意志によって文字通り全てを滅ぼしたという点でも前例がない。
とにかくあらゆる意味で異端の存在であるユキムラだが、そんな彼の弱点は「アゾエーブに乗ったパイロットである」という一点に尽きる。
アゾエーブは人間が作ったスーパーロボットであり、だからこそ人間の手で破壊出来る。
同様にユキムラも、不死身でもなんでもないただの人間であり、だからこそ死を逃れることは出来なかったのである(それを恐れていたかは別の話だが、恐らくその辺りの恐怖心はとうの昔になくなっていたのだろう)。
ちなみにこんな暴挙を一時的にでも成功させた理由は、「破滅の波導」が、万物万象に内在する破壊エントロピーを利用した攻撃であるため。
そして、創造と破壊を比べた場合、後者の方が圧倒的に消耗が少ない。この物理的法則を利用し、アゾエーブを悪魔のマシンたらしめたのである。
「この世で最も優勢な力は破壊へと向かうパワーなのだ。あまねく宇宙はすべて、滅びの方向へのベクトルを最初から内包しているのだからね。宇宙とはそういうものなのだよ」
というセリフがそれを物語っている。
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類似人物
木原マサキ:身もふたもないことを言ってしまえば、ユキムラは『スパロボオリジナルで再現されたスパロボ補正付きの木原マサキ』と言える。この点はDG細胞とズフィルードの関係に近いと言える。