概要
インドールアルカロイドの一種で、サイロシビン(Psilocybin)とも呼ばれる。
別名は「4-ホスホリルオキシ-N」および「N-ジメチルトリプタミン」。
化学式はC12H17N2O4P。
リン酸エステルとして安定しているこの成分が、体内に取り込まれ加水分解されるとシロシン(Psilocin)という物質に変化する。
このシロシンは、脳に快感を与える「快楽ホルモン」ドーパミンやノルアドレナリンを制御する、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの、中枢神経にある受容体に働きかけ、再吸収を妨げることで過剰に働かせる。
すると視覚異常を経てサイケデリックな幻覚を伴う神秘体験や、何故かとても可笑しくなって笑ってしまうなどの感情の暴走が起こるとされる。
この毒成分の効果を利用することで、一定期間ポジティブな思考を保つことができることから、うつ病の治療に役立つという臨床試験の結果が発表されている。
さらに強迫性障害や群発頭痛の治療にも効果があるという報告もある。
しかし、あくまでも毒成分であるので、摂取して30分ほどすると悪寒や吐気を伴う腹部不快や、手足の痺れを伴う脱力感、時間や空間に対する認識異常も起こるとされる。
そのためネガティブな状態のときに体内に取り込んでしまうと、罪悪感や恐怖感などが暴走し泣き叫んだり、落ち込んで鬱になるバッドトリップ状態になり、それがトラウマとなる場合もある。
なお効果時間は類似した効果を持つ幻覚剤LSDの約半分である4~8時間で、依存性はないがフラッシュバックが発生することがあるといわれる。
現在この成分を含む毒キノコ・マジックマッシュルームは、日本では2002年から「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」第2条で麻薬原料植物として規制対象となっているため、栽培および採取、所持することは犯罪行為となる。
他国においても規制されており、アメリカ合衆国ではほとんどの州で違法であるが、合法の州では上記のような治療効果を期待した上で摂食時の腹部不快を防ぐため、直接成分を鼻に吹きかけるスプレーが開発され販売されている。
関連タグ
オオワライタケ:欧州の菌体からは抽出されているが、日本産のものは含有していないので規制対象外とされていた。しかし2022年の報告で系統が複数あることがわかり、含有の可能性も示唆されている。