概要
スコットランドにおけるウイスキー関連の現存する最も古い記録は、1494年のスコットランド財務省の記録で、「修道士ジョン・コーに8ボル(500グラム説と1.2キログラム説あり)のモルトを与え、アクアヴィテ(蒸留酒)を造らしむ」という内容である。
アクアヴィテはラテン語で「生命の水」という意味で、これをゲール語で表すと「ウシュクベーハ」(ウシュクは水、ベーハは生命の意)となり、そこから「ウイスキー」という英語が生まれた。
とはいえ、実際は12世紀から作られたともいわれ、正確な起源は不明。
定義としては、
- スコットランドの蒸留所にて、
- 水および発芽させた大麦(これに他の穀物の全粒のみ加えることができる)から蒸留されたものであって、
- 蒸留液がその製造において用いられた原料およびその製造の方法に由来する香りおよび味を有するよう、94.8%未満の分量のアルコール強度に蒸留されており、
- 700リットル以下の容量のオーク樽においてのみ熟成されており、
- スコットランド地域内で3年以上の期間において熟成されており、
- その製造および熟成において用いられた原料ならびにその製造および熟成の方法に由来する色、香りおよび味を保持しており、
- 水および無味カラメル着色料を除く一切の物質が添加されておらず、
- 最低でも40%の分量のアルコール強度を有する
ものである。
まず大麦麦芽(モルト)を原料とした醸造酒を単式蒸留器で2回蒸留したモルトウイスキーと、トウモロコシと大麦麦芽を5:1の割合で配合した原料の醸造酒を連続式蒸留器で連続して蒸留したグレーンウイスキーを製造する。
その2つを65:35の割合いでブレンドしたものが一般的なブレンデッドウイスキーである。
これに対してグレーンウイスキーを使わず、一か所の蒸留所で作られ複数の貯蔵された樽から集めたモルトウイスキーはシングルモルトウイスキー呼ばれる。
さらに1つの樽だけで瓶詰されたものはシングルカスクウイスキーとなり、かなりの高値で販売される。
使用する大麦麦芽を乾燥させ発芽を止める際にピート(泥炭)を燃料に使い、煙の香りが麦芽に染み込む。
この煙臭さをスモーキーフレーバーといい、スコッチの快い燻香となる。
貯蔵に使う樽はブナ科のコナラ属に分類される木(オーク)で、木の香りが強すぎる新品は使わず、バーボンウイスキーやシェリー酒(スペインの酒精強化ワインの一種)の貯蔵に使用したことのある樽を用いる。
1つの樽で
- 1~2回はモルトウイスキーの貯蔵に使用し、
- 3回目でグレーンウイスキーを貯蔵、
- 4回目は長期の熟成に使用、
- 5回目は木の香りを抑える作業をした後再び長期熟成に使用、
- 6回目の使用でお役御免となる。
樽が適切な環境下に置かれていれば熟成期間が長いほどまろやかな味わいとなるが、樽材を通して毎年1~2%のアルコールが失われており70年を超えるとほぼ蒸発してしまう。
味の特徴
スコッチはスモーキーフレーバーに重きをおいている
薫香を楽しむため、本場イギリスではストレート(ただし水と交互に飲む)か1:1で水割り(使う水も水道水は避ける)などが一般的とされる。
すっきり系のジャパニーズウィスキーと飲み比べてみると明確にわかるが
ラフロイグやアードベックあたりになるとよく言えば玄人向け、悪く言えば人を選ぶようになる。
中でも特筆すべきはアイラ島で生産される銘柄だろう。
スコッチには蒸留所の立地から高原地域由来の「ハイランド」、低地地域由来の「ローランド」、スペイ川流域由来の「スペイサイド」、そしてアイラ島由来の「アイレー(アイラ)」の4つに分類されるのだが、特にアイレーは島の泥炭層に大量の海藻が含まれるため、麦芽の焙煎の際に独特な海藻の豊かなヨードの香りが付くのである。先述のラフロイグとアードベックはこのアイレーウィスキーに属しており、その強い個性はここから生まれている。よく言えば「豊かな海の香り」と言えるが、わかりやすく言えば「イソジンみたいな香り」とも言え、好みが激しいのは事実である。しかし、それは同時にハマると病みつきになる銘柄も多いということに他ならず、ラフロイグ、アードベックに並びアイレーウィスキーの代表銘柄であるボウモアは「全てのウィスキー愛好家が最後に辿り着く酒」とも称されるなど高い人気を誇っている。
なお、これはスコッチ全体に言えることだが適切な肴なしに酒を進めると舌が麻痺してケミカルな味わいに2日酔いが迫ってくる。アルコール度数40%もあればそりゃ舌も焼けるだろう。当たり前だが、間違っても瓶からラッパ飲みするような手合いではない。
いい酒を美味しく楽しむためにも、自分の好みを把握して十分に準備してゆったり楽しもう。
主な銘柄
- ジョニーウォーカー(世界的に最も人気がある銘柄)
- グレンリベット(THEという冠詞だけで通じるほど代表的な銘柄)
- バランタイン(ブレンデッドの代表的な銘柄)
- マッカラン(シングルモルト界のロールスロイスと呼ばれる銘柄)
- ラフロイグ(アイレーウィスキーの一つ。癖が強い、というか癖しかないような銘柄)
- アードベッグ(ラフロイグの癖をさらに強くした銘柄。ドイルのお気に入り)
- ボウモア(アイレーウィスキーの代表銘柄。他の銘柄よりマイルドで、「すべてのウィスキー愛好家が最後に辿り着く酒」と称される根強い人気を誇る)
- ホワイトホース:日本にコンビニやスーパーで簡単に手に入る、スコッチ入門用。これで合わなければ上級者向けスコッチに手を出すのはやめよう。
- ティーチャーズ
関連項目
:カナダのサスカチュワン州で発掘された化石には、発掘チームがこの酒を祝杯で飲んだことから「スコッティ」という愛称がつけられている。
スコットランドにおけるスコッチのおつまみの代表選手。スコッチの最高の相棒とも言える。