概要
チェコスロバキア社会主義共和国(現在のチェコ共和国及びスロバキア共和国)が開発した自走榴弾砲。ダナ(DANA)とはチェコ語で「Dělo Automobilní Nabíjené Automaticky」の略で、他にも「samohybná kanónová houfnice vz. 77(1977年型自走式曲射カノン砲)」の名称でも知られる。
当時チェコスロバキアは自国軍向けの火力支援用新型自走榴弾砲を必要としており、また自国産業保護の観点からソ連製の2S4アカーツィア自走榴弾砲の導入は好ましくなかったことから、自国で独自の自走榴弾砲を設計開発することが決定。1970年代後期より開発され、1981年より実戦配備が開始された。
最大の特徴は、世界初の装輪式自走榴弾砲であること。これは当時のチェコスロバキア軍が高い機動力を持った自走砲を求めていたためで、自国のタトラ社製815トラックをベースとしたシャーシの中央部に砲塔を配し、また重心を下げるべく砲塔を低い位置に配置したことから、旋回を妨げることがないよう前部の操縦室・後部の機関室とも低く作られているのが特徴。
搭載しているのは36.6口径152mm榴弾砲で、最大射程は18.7km(ベースブリード弾使用時は約28.2km)。これを油圧式の完全自動装填装置を搭載した砲塔に収めており、他にも砲塔部に12.7mm機関銃を1挺配している。他にも冷戦時代に作られた兵器らしくNBC兵器からの防護能力も付与されている。
冷戦終結後、1993年の「ビロード離婚」によってチェコスロバキアがチェコとスロバキアに分かれて消滅した後は、チェコスロバキア軍のダナはそれぞれ両国の軍が承継した。スロバキアではダナの榴弾砲を西側基準の155mm榴弾砲(同時に長砲身化しているため射程も向上している)に変更したズザナ 155mm自走榴弾砲が開発・配備されている。一方のチェコでも輸出向けに改良を加えて各種派生型が開発された。
各国にも輸出されており、リビアやポーランド、ジョージア、キプロスに輸出された他、ソ連にも輸出されている。また、ウクライナも導入を決定しており、ロシアによる軍事侵攻後はチェコよりダナが供与された他、スロバキアからもズザナの改良型であるズザナ2が売却されている。