概要
翼指竜亜目(プテロダクティルス亜目)アズダルコ科に分類される翼竜で、名称(学名)は発見されたルーマニアのハツェグ (Hateg) 盆地に由来して「ハツェグの翼」を意味する。
翼開長は11~12mに達し、近縁種のケツァルコアトルスに匹敵する巨体を誇るが、骨の中空度が低いため体重はより重かったといわれている。
また頚椎の特徴からも、他のアズダルコ科に比べ首が短かったとされている。一方で頭骨は長さ3mに達する上にがっしりとしており、他の翼竜の細長く薄い頭骨とは対照的である。
これらの特徴から、他の翼竜のように空を飛ぶことはできなかったと考える研究者は多い。生前は四肢に強靭な筋肉が発達していたので、上昇気流など必要とせず短時間で飛び立つことができたとする説もあるが、未だ詳細は不明である。
本種が巨大化した理由としては、当時の生息環境が影響しているとされている。当時のヨーロッパは現在のインドネシアや北中米カリブのように大小様々な島々が点在しており、ハツェグ盆地はその中でも小さな島だったとされている。そのため棲息した恐竜はマジャーロサウルスやテルマトサウルス、ザルモクセスなどのように、島嶼性矮小化で他の地域より小型化していた上、肉食恐竜もブラディクネメのような小型の種ばかりでタラスコサウルスのような大型の捕食者はいなかった。
こうしたライバルや天敵のいない環境で、ハツェゴプテリクスは現在のコモドドラゴンやゾウガメのように、そのニッチを補う形で大型化したとされており、頂点捕食者としてそうした小型恐竜たちを捕食していたと考えられる。これらのことから、別に空を飛ぶ必要はなかったのかもしれない。