概要
ハハコグサ とは、その辺に生えてる雑草の一種である。
別名は、御形とか五行とか書かれる。この字は牧野富太郎説で正しい読みを「オギョウ」とするが、方言でゴギョー(岩手県、山口県、香川県)、ゴギョーヨモギ(九州)、ゴギョーブツ(福岡県など九州)と称する地方がある。
学名Gnaphalium affine のグナファリウムは葉っぱのもふもふから「フェルト」の意。
キク科の2年草。
日本へは、有史以前に、ヨーロッパの辺りから中国経由で、麦のおまけとして来たと考えられている。
一応、食用で、春の七草の一つとして親しまれている。
生態
秋に発芽、冬はへら形の白っぽい根出葉(タンポポみたいな)が地面に広がってロゼットの状態で越し、春になると茎を伸ばして草丈15~40cmになる。根出葉は花のころにはほぼなくなり、葉と茎には白い綿毛が密生する。
春から初夏にかけて、茎の先端に頭状花序の黄色い花が密に集まって多数咲く。花が終わると、同科のタンポポと同じように、綿毛ができてぶわーっと舞う。
*名前
葉の毛が乳児の舌に似るので母子草説、「葉白草(はあかくさ)」から説がある。
この植物を指す語は各地で異常に多様であり、『古今要覧稿』に、
ほうこぐさ、ほうこう、ほあこ、ほあて、おぎやう、ごぎやう、かはほうこ、しゃうろうよもぎ、もちよもぎ、もちふつ、じやうろふつ、ごうぎやうふつ、とのふつ、かうぢばな、かうぢ、ほとけのざ、かはらちちこ、をうこ、もちはな、はなたばこ、しろねずみ、おほもちぐさ、てんせいちはくさう、きむきむさう、みめうな、つつみぐさ、などが記載され、
柳田國男はコウヂバナ、テンヂクモチ(天竺餅)、トノサマユムギ、トーゴ、ネバリブツ、ホウベラ(ハコベ)、などの方言を紹介している。
ハハコグサという呼称は有岡利幸によれば大阪府、岡山県、愛媛県の一部にしかないという。
さらにハハコグサの名前がいつからできたかは不明であるが、『万葉集』に出る「にこ草」がこの植物の古名である可能性がある。
漢語で「黍麹菜」「猫耳朶」「仏耳草」「黄蒿」「毛女児菜」「毛耳朶」「茸毎草」「巌蘂頭」「暑菊」「女麹」「鼠直」と呼ばれるほか、静岡県他各地で「鼠の耳」と呼ばれるが、静岡県で「兎の耳」と奈良県北部で、「猫の耳」というのがある。柳田は、色も形も大きさも「鼠の耳にならば似てゐると言へる」この植物に対する名称が猫耳、うさ耳で表される件について疑問としている(『野草雑記』所収「草の名と子供」の一節「兎の耳」『柳田全集』12巻P66)。
チチコ チチクサ カワラチチコ などと呼ばれるが、「チチコグサ」は、近縁種であるGnaphalium japonicum に当てられている(花が褐色でエーデルワイスに似る)。
呼称は上述のチチコグサ系、ゴギョー系、ケモミミ系の他、
ホーコ系(ホウコウクサ ホーコヨモギ ホウコ ホーコバナ ホーコーバナ ホーコサン)、 餅草系(オーモチクサ ネバリモチ モチクサ モチバナ モチヨモギ ヤマモチグサ)
ヨモギ系(オトーサンヨモギ トノサマヨモギ オトコヨモギ オトコモグサ オトノサンヨモギ等「多分偉い蓬」系とヒナサンヨモギ ヒナヨモギ等、「黄色い蓬」系にホーコーヨモギ モチヨモギ等)
花などからの形や色から命名された(アワゴメ オトノサマノタバコ キツネノタバコ キバナグサ キンバナ)、の他、
マワタソウ、ワタグサ、ヒヨコグサ、ヨメナ タマゴ、タマゴグサなどマイナー系に分かれる。
コウヂバナという呼称になった訳に関しては、柳田國男によれば黄色であった昔の麹に見立てたためという。
また、柳田は大分県、豊前国の宇佐地方での呼称「ネバリブツ」について、「粘り(蓬餅よりはおもちうにょーんができるため)」か「真綿(ネバシ)」のネバリにヨモギの異称である「フツ」とするが、湯浅浩史は、『重修本草綱目啓蒙』にあるハハコグサの異称「ウカシブツ」を引いて、汚れを祓う呪術の道具として使われていたため、これは「浮かし仏」であると主張している。
利用
民間医療で使われる。
白いため、大昔に、這子(ほうこ)の代りに母子の穢れを祓う目的で使われた形跡がある。
フィトンチッドがいい感じで虫よけになるので、17世紀ころに原肥として推奨されたことがある。
主に西日本で、餅へ入れられた。この草餅は、地方によっては「テンジクモチ」とも呼ばれる。
降誕会(4月8日 ブッダの誕生を祝うお祭り)には、花御堂の屋根を葺く植物としてアザミ、ゲンゲとともに使われた。
『本草綱目啓蒙』では、刻んで煙草の代りにすると書いてある。