概要
福岡藩領筑前国志摩郡唐泊浦(現在の福岡県福岡市西区宮浦)出身の水主(船乗り)である孫太郎(後に孫七と改名)の漂流体験を記した著書『南海紀聞』、『漂流天竺物語』で紹介される怪獣。
記述によればバンジャラマアシ(ボルネオ島の南部・バンジャルマシン)の川に棲む生き物で、龍から角を取った様な容姿をしており、唇や鼻の形が厳めしく、頭の左右に長い髭と耳が有り、手足は四つで爪も四つずつ、体長は六、七尋(約11、12.6m)~十二、三尋(約22、25m)で、腹は少し赤く、尾の先に剣があるとされる。またホアヤは往来の船に纏わり付いて人を脅かしているとされ、現地の人々はこれを殺せば必ず祟りがあるとして恐れていたという。
ホアヤは春になると山に登り、手毬ほどの卵を36個程産み落とし、生まれた子供は二尋(約4m)程に成長し、そして親は子供が川に入ると執拗に追い回して次々に食い殺し、最後に残った1匹のみを大切に育てるとされ、子連れのホアヤは船が近くを通ると激しく怒るので、人々もこれを避けていたという。
またその鱗は銃弾では破る事ができない程に厚いとされている。
『南海紀聞』ではこの怪物を「ボアヤ」という名で紹介しており、その正体はワニのことだといい、全身は淡黒色で腹と唇は黄色、髭は背中の上半から尾に至るまで生えており、爪は鉤の様で、尾の端は三稜で尖っており、その鱗は堅いが、腹の一部に皮が薄い部分があるという。
また『暹羅紀行』に記述される暹羅国(タイ)の川に棲息する釈迦の説法により角が落ちたとされる無角の龍もまたこのボアヤではないかとされている。
ちなみにインドネシア語ではワニの事をブアヤ(Buaya)と呼ぶ。