概要
能力値【破壊力:無 スピード:B 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:E 成長性:無】
本体はスコリッピ。だが、能力者である彼本人にも全く制御ができない。
あらゆるスタンドの中でも抜きん出て際立った特徴を有し、「人智を越えた」という表現がある種もっとも相応しいスタンド。作中での表記としてはローリング・ストーン(ズ)。名前はイギリスのロックバンド「ローリング・ストーンズ」より。
外見は黒い球形の石で、表面には漢字で「凶」とも読める字が彫られている(尚、作中の言語表記がイタリア語になっているアニメ版において、「凶」の文字はそのままであった。これは笠間P曰く、荒木先生が「箱にバツが入っているということで」と回答した為)。このスタンド自体には破壊力は無く、そのままでは単なる石の塊でしかない。
本物の石として実体化しているらしく、スタンド使いでなくともその存在を認知できる。一方、銃弾で一部を破壊したぐらいでは存在が消失しないうえ、本体へのダメージフィードバックも発生しない。その性質上、一応、遠隔自動操縦型のスタンドに分類されるものの、完全に独立して「1人歩き」してるスタンドである。
存在そのものが荒唐無稽かつ絶対的であり、「人の精神の発露」であるスタンドよりも、むしろ自然現象の一端、あるいは「何らかの大いなる意志」とでも称すべきか。
本体であるスコリッピの意思とは全く関係なく、周囲の「近い未来に死ぬ運命の者」の死期を感知すると自動的に発動、対象の姿が彫り込まれた彫刻に変化しつつ追跡する。この「追跡」はかなりの精度としつこさであり、全く何の前触れもなく出現する上、飛び跳ねながら自発的に移動するほか、周辺の物体を液状化させて、床や壁をすり抜ける能力まで有している。作中ではモルタルの床や鉄筋の壁を液状化させて、ブチャラティをどこまでも追跡した。
だが、この石の本質は彫刻に彫られた相手に触れる、もしくは触れられた際に、その人物を安楽死させる能力(作中の描写を見る限り、正確には当人が最も望む結果で命を落とさせる能力であるとも推測できる)。
死に至る行動を起こすのはその運命をもつ本人自身であり、石自体は運命の者に触れる行動以外、何らアクションを起こさない。
そのため、後述の花屋の娘の死は彼女自身の意志に基づいた完全なる自殺であり、本体のスコリッピにもこのスタンドにも、一般的な意味での罪業はほとんど無いと評せる(ただ、スコリッピ自身はこの事件の背景を詳細に把握していた為、自殺幇助くらいにはなるかもしれないが)。
ジョジョの世界においては、時間あるいは次元等『この世の理』に干渉する、神にも近しい能力を持ったスタンドが度々登場し、多大な数の犠牲を出してきた。だが、それらも含めた数多のスタンドの中にあっても、スタンド能力による殺傷ではなく、スタンドの能力そのものが「死」=逃れられない運命を参照し発現させているのは、現在までこのローリング・ストーンズただ1つだけである。
この「逃れようのない運命をただ当人に示す」「選択はできるが、行き着く結論はほとんど変わらない」ことを告知する能力は、第5部以降、ジョジョ世界において顕著になる。「世界には、人の意志だけではどうにもならない、あらかじめ定められた運命が存在している」とする、無常的な考えを端的に表現している。
このスタンドの思想は要約すれば「どの道近いうちに死ぬなら今楽に死んだ方がいい」ものであり、その性質は、「対象者が迎えるはずの過程や経緯を全て無視し、死の結果のみをもたらす」ものである。その本質は本章のラスボスや、そのスタンドと同じく「結果しか見ていない」存在であり、このスタンドもまた、第5部のテーマの対極の存在である。
ストーリーにおいて
ミスタはある女性の死の真相について追っていたのだが、その真相は “花屋を営む男性が内臓の病気に罹っており(そのため、少々歩行が困難になっている)、自分もいずれ数カ月後に同じ病気に罹る未来を知るや、花屋の娘は『苦しんで運命を迎えるのであれば、健康なうちに父のために・・・』と石を受け入れ投身自殺をした。これにより、石の力で娘の臓器は無事で、臓器バンクに保管されるであろう自分の臓器が父を救うに至る……” というのが事の顛末だった。
仮にも単なる石である為、死ぬ運命にない者達が物理的手段によって『石そのものの破壊』はできる。しかし、たとえ破壊に成功したとしても、彫刻に刻まれた運命は変更されず、彫刻に刻まれた彼等には石によってもたらされる死よりも、はるかに残酷な死の運命が待ち受ける事態に陥る。また作中で幾つもの石が出現した場面があったり、破壊された石が更なる彫刻を刻んだ事実から、撃破された、消滅したとの明確な言及もなかった。
もっとも、死に直面する未来になった人物にとって、このスタンドによって示された運命の方を迎えるべきか、物理的手段によって過酷な形で迎える運命の方を選ぶかは、個人の価値観などによるところが大きい。また、レクイエムを発現させたジョルノの語った「真実から出た誠の行動」のように、たとえ死したとしても遺されるもの・滅びずに受け継がれていくものは存在する(実際ブチャラティが石と遭遇した時点で死を選んでいたのなら、恐らくボスは倒せなかった)。
その為、スコリッピは石を破壊する行為については強く否定しておらず、ブチャラティ達が苦難の道を辿るが、「何処かの誰かに希望として伝わっていくような大いなる意味があるのかもしれない」として、目醒めることで何か意味のあることを切り開いていく『眠れる奴隷』であることを祈って石を破壊し去っていく彼らを見送った。
余談
- 5部アニメ前期OP曲「Fighting Gold」は”夢を縛り付ける重たい運命の石に…”との、ローリング・ストーンズを思わせる歌詞から始まる。
- 5部アニメ版22話からの後期EDは、それまで劇中に登場したスタンドをおおむね登場順に、彫刻像のように見せる映像が用いられているが、この映像で最初に配置されているのはローリング・ストーンズである。37話までは何も彫られていない球状で一見ただのオブジェにも見えるが、最終話となる39話のみブチャラティが彫刻された状態に差し変わっており(つまり放送順に見ていればここで初めてローリング・ストーンズであることが確定する)、本編の時系列とその能力、『眠れる奴隷』のエピソードの意味に沿った粋な演出となっている。
参照
↓39話以外のVer.
↓39話Ver.