「バルガイヤー初代艦長♪シュ~バ~リ~エ~」
登場話数:第28話「地獄の合唱」 - 第47話「超獣大脱皮」
演:植村喜八郎
解説
銀帝軍ゾーンの幹部の一人にして、銀河戦艦バルガイヤーの初代艦長を務めた、自称「銀河のヒーロー」。
ゾーンによる第一次銀河遠征作戦で数多くの手柄を立て、銀河皇帝メドーより多くの報償を与えられた後引退。その後は故郷の星で悠々自適の生活を送る身であったが、地球においてメドーがファイブマン相手に苦労していると知り、現役復帰を果たした。
徹底してキザな言い回しや一挙手一投足が目立つ自信家で、初登場の時点ですでにギンガマンを配下に従えるなど、高いカリスマ性も備えている。また歌をこよなく愛し、台詞の端々でも歌を口ずさむ事も少なくはない。初登場時に披露した「HERO(ヒーローになる時、それは今)」(甲斐バンド)は、ドルドラやザザばかりか敵であるはずの数美やレミまでも、一時的ながら虜にした程である。
「銀河伝説の男」との呼び声に違わず、その実力も折紙付きであり、タクトや剣、ムチ(バロックビュート)、銃(バロックシュート)と多彩な機能を備える「バロックフェンサー」を駆使し、射撃やムチ、格闘技において超一流の腕前を発揮。剣術に至ってはガロアを凌ぐ程の達人ぶりである。さらに巨大戦においても専用の黒ゴルリンを使役し、ファイブマンを大いに苦しめている。
当然ながら素の身体能力も高く、作戦のためゾーンの幹部たちが偽兄弟先生に扮した際は、健に扮してその一端を示した事もある(※)。
ファイブレッドをライバル視しており、他の4人を「雑魚」と侮る中でレッドのみ、「最高の敵」として認めている。
もっとも、ライバルとはいえ「正々堂々の直接対決で倒す」事には全くこだわっておらず、時間を操る能力を持つワニカエルギンを利用して一度は反則に近い形でレッドを死に追いやったり、刺客としてわざわざヒョウコブラルギンを作り出して差し向け、レッドに2対1の戦いを仕掛けた事もあるなど、レッドを倒すためならば手段は選ばぬ姿勢も見せている。
(※ この時、冒頭でシュバリエの姿に戻る際に『超新星フラッシュマン』の変身ポーズと同じ動きを見せている。これは演者の植村が、同作にてグリーンフラッシュことダイを演じていた事にちなんだ、作り手側のちょっとした遊びと見る向きもある)
熾烈な「艦長の座」争い
シュバリエの戦線復帰は、メドーからは嬉し涙を流すくらいに歓迎された一方、当代の艦長であるガロアにとってはその地位を揺るがすものに他ならず、復帰当初より強烈な反感と警戒の念を向けていた。
対するシュバリエもまた、そんなガロアを挑発しつつ艦長に復帰する意欲を早くから示しており、ここに両者間の熾烈な競争が勃発する事となるが、スマートなやり方で実力の高さを示すシュバリエとは対照的に、気合いばかりが空回りするガロアでは到底勝負にならず、半ばガロアの自滅にも近い形でシュバリエがこの競争を制し、晴れて艦長へとカムバックするに至る。
艦長の座に復してからは、数多くの残忍な作戦を立案し度々ファイブマンを窮地に追い込むが、一方でその自信の高さと過去の栄光に起因した詰めの甘さから、いいところまで行きながらも肝心のところでファイブマンに逆転を許すというパターンが恒常化。メドーからの信頼も徐々にではあるが薄らぐ格好となってしまう。
そしてこの機を逃さず、復権に動いたのが掃除係に降格させられていたガロアである。彼が切り札たるビッグガロアンを繰り出し、スーパーファイブロボを撃破した際には、当初は怪訝な様子であったシュバリエも、「ファイブマンの死体を確認するまでは勝利とは言えない」と苦々しい様子で牽制しており、結果としてビッグガロアンは撃破されたものの目論見通りガロアは復権に成功、ここに再び真の艦長の座を賭けての争いが再燃する事となった。
その後はガロアが利用した、バルガイヤー内の不思議な力を横取りしてイワカセキギンを生み出し、ここでもファイブマンを壊滅寸前にまで追い込んだものの、メドーやガロアたちの前で学の最期を見せつけようとした事が裏目に出てしまい、作戦失敗のみならずバルガイヤーが生命体であったという、敵味方双方も知り得なかった秘密を露見させるという失策を演じてしまう。
これをきっかけとして、メドーが傀儡に過ぎずバルガイヤーこそが真の黒幕であった事までも明らかとなり、ゾーンは一気に内部崩壊へと向かっていくが、それでもシュバリエが切り捨てられる事はなく、バルガイヤーが銀河超獣へと大脱皮を遂げようとする際には、それに必要な「この世で最高極上の死のエキス」の確保をガロアとともに厳命されており、これをファイブレッドの命と解釈した両人は大脱皮の成功と自らの地位を確たるものとすべく、ファイブマンへと最後の決戦を挑む事となる。
しかし配下としていたギンガマンを喪い、黒ゴルリンまでも投入せざるを得なくなるなど、大脱皮までのタイムリミットが迫る中で追い込まれたシュバリエは、レッドに対し特殊な鎖を嵌め、どちらかが死ぬまで終わらぬチェーンデスマッチを仕掛けるが、ギリギリのところまで優位に立ちながらもレッドに一瞬の隙を文字通り突かれた末、渾身のVソードアタックをモロに受けて遂に最期の時を迎えた。
皮肉な事に、バルガイヤーが大脱皮のために渇望していた「この世で最高極上の死のエキス」とは、他でもないシュバリエの亡骸であり、前述の通り本来なら致命的とも言える失策を演じながらなお生かされていたのも、正にこの時を見越しての事だったのである。
備考
徹底してキザな人物造形、それに衣装の派手さやアクションの強さは、シュバリエのキャラクター性を際立たせようという、プロデューサーの鈴木武幸の意向によるところが大きい。結果として、彼の登場はそれまで低迷を続けていた番組の視聴率を一気に上昇させる事にも繋がり、本来は退場して出番のない最終回にも、敬意を表して植村とシュバリエの名前がオープニングにクレジットされたという逸話も残るなど、悪役ながら番組の救世主的な存在でもあった。
デザインは篠原保が担当。あまり細かい事は考えず、何となく好き放題にデザインしたものであると前置きしつつ、誰が言い出したか「宇宙の清水の次郎長」的なイメージや、「蠍座から来た男」なるフレーズが頭の中に渦巻いた末にこのビジュアルが出てきたという。前者のイメージの名残か、未採用にはなったものの二の腕には青い刺青のような紋様も入っていたりする。
またデザイン画稿では、露出している肌の色味がかなり黒めとなっているが、同時に「実際はここまで黒くなくても良いと思う」とも付記されており、その注文通り実際に施されたメイクも浅黒い程度に留められている。肌の色だけでなく衣装のそれについても、他の幹部との差別化を図る意味合いから造形の段階で色味を抑える形でアレンジされている。
演者の植村喜八郎は、前述の通り『フラッシュマン』にて戦隊メンバーを経験しており、本作への出演でスーパー戦隊シリーズにおいてヒーロー役と悪役を両方経験する格好となった。
登場からしばらくの間、OPクレジットでは初代艦長シュバリェと表記されていた。
関連タグ
騎士 - 名前の由来となった語句で、フランス語での読みがそのものズバリ「シュバリエ(Chevalier)」である。「シュバリエ」はフランスでは人名としても用いられ、天才数学者エヴァリスト・ガロアの親友がオーギュスト・シュバリエだったという、『ファイブマン』の劇中での2人の関係からすると皮肉としか言いようがない史実もある(元ネタなのかどうかは不明)。
トランザ - 『鳥人戦隊ジェットマン』の登場人物の一人。物語途中より鮮烈なデビューを果たし、実力とプライドの高さを示しながらもそれが災いして皮肉な末路を辿る、という共通項を有する