多餓椿
おおがつばき
「私はオオガ虫、人間に恨みを抱いて死んだ怨霊が妖蟲になった者」
「は~くやっちゃあ!」
多餓椿(おおがつばき)は東方二次創作作品「東方居虫球」に登場するオオガ虫(平四郎虫)を元としたオリキャラ。
extra stage「仮名手本虫神蔵」(半翅林)のボスを担当する。(中ボスは津々禍ゆう)
続編の「妖蟲大戦争」では折り返し地点となるエリア5のボスを担当しているが、明らかに遊んでいるので真の実力は結構謎である。
居虫球では唯一の元人間キャラクター。
より正確に言えば、元人間の怨霊と妖蟲の肉体が彼女を構成している。
虫としてのモチーフは「椿象(カメムシ)」であり、作中ではこのような漢字表記だが本記事では分かりやすさを優先して「カメムシ」と書く。
怨霊らしく周囲に人魂を浮かべており、首にも撒いて傷跡を隠している。
チャバネアオカメムシに似た配色の鹿撃ち帽を被り、ポンチョ風の甚平を着ている。
甚平は死者らしく左前になっており、紐ではなく椿の形のボタンで留められている。
頭にはカメムシの触角が生え、髪は一部がこげ茶の茶髪であり、左右で三回ずつまとめた長いおさげ。
一番下は結い紐ではなく手錠なようなものでまとめられており、左右が鎖でつながれている。
甚平の下には囚人服のような白黒ボーダーの長袖のシャツを着ている。
スカートはピンクや緑の複数のパーツで構成されており何とも形容しがたい。
象の足のような配色のタイツはつま先が足袋のように分かれている。
背中にはカメムシの翅が生えている。
左手には巻いた状態の緑のゴザを持っている。
オオガ虫という種族名は彼女の自称であり、この言葉はカメムシを意味する。
実際カメムシとは無関係でなく、怨霊がカメムシに憑りつき妖蟲化させ、長い時間をかけて一つになったのが彼女の正体である。
存在が一つになったため怨霊は人格以外が消滅し、怨霊本来の性質を失っている。
そのため今の彼女はただの妖蟲とほぼ変わらない存在である。
人格の核となるのは憑りついた怨霊だが、カメムシ側の影響も大いに受けており、両者の精神の境界は曖昧。
カメムシに憑りついた怨霊は一時は祟り神(神霊)にまでなり、その時代に霊を二つに分けている(分霊)。
その内カメムシの肉体に宿り続けた方が彼女を構成する怨霊であり、もう片方が外の世界で祀られる「お堂の神霊」。
余談だが、怨霊とお堂の神霊は性別・本名ともに不明である。
「多餓椿」という妖蟲少女はあくまで怨霊を宿すカメムシ(のメス)なのだ。
ちなみに元ネタはオオガ虫の別名を持つ虫の怪異「平四郎虫」であり、こちらで怨霊となったのは「平四郎」という男。
あくまで平四郎虫はモチーフであり、彼女とはまた別に存在したのかもしれないので結局彼女の怨霊は性別不明である。
「豊穣を奪う程度の能力」
なんともすごそうな名前になっているが、実態は「カメムシを操る力」である。
しかも現在は全盛期の力を失っており、個人を破滅に追い込むことはできても幻想郷全体を凶作にすることはできない。
彼女はこの力で不作を引き起こし、悲しむ人間を見て喜ぶ妖怪だ。
また、害虫以外のカメムシ(マツモムシなどの水生カメムシやヒメハナカメムシなどの益虫)も操れるので、やり方によっては豊穣をもたらすこともできる。
が、その力が人間の農作物に向けられることは無い。
怨霊と多餓椿
元々の性格は呑気でお調子者で山遊びが好き。また、頭も切れるほうだった。
そんな感じのただの村人だったのだが、冤罪によって処刑されたことで怨霊となって人間を憎むようになる。
(この辺りの事情は大体元ネタ通りなので平四郎虫の記事を参照)
カメムシに憑りついて「多餓椿」となり復讐を果たした後、神として祀られた。
神として祀られた後は徐々に性格も丸くなり、ちょっとの不作を起こす程度で満足するようになった。
しかし外の世界で怪異や神の類が信じられなくなってくると、ちょっとの不作でも存在を信じてもらえそうな幻想郷に妖蟲として移住してきた。
幻想郷に移住後は元怨霊だなんて誰も信じないので妖怪の社会に溶け込んで平和に暮らしている。
性格も本来の呑気なものに戻っていたが、死因が死因なので冤罪をひどく嫌っている。
最近は妖怪と戦う異変解決の人間たちに興味を持っており、
霊夢のことは「途中で立ちはだかる者も全て容赦なく倒していくが最終的には必ず真の犯人に辿り着く」、
魔理沙のことは「正々堂々盗んでいく、冤罪を生まない盗人さん」と認識している。
普段は中性的かつ冷静な口調で話すが、興奮すると甲州弁が出る。
どうやら甲斐出身らしい。(ちなみに元ネタの出身地も甲州弁が話される甲府盆地内である)
幻想郷のどこかにある、人間はほとんど訪れることのない林。
本来は名無しの雑木林だが、椿が勝手に「半翅林」と名付けている。
その名の通り半翅目昆虫が数多く生息し、夏場はセミがうるさくなる。
林の中には沼が存在し、そこにはタガメやアメンボなどの水生カメムシもいるようだ。
彼女が居虫球エキストラで異変を起こした中心地はこの林の中の開けた場所。
実はこの場所は彼女がかつて祀られていたお堂を懐かしんで、黒谷ヤマメをはじめとする土蜘蛛たちに建築依頼をしていた「多餓堂」というお堂型の家の建設予定地だった。
しかし居虫球本編の異変の影響などによって施工が延期になってしまい、その数か月後である妖蟲大戦争の少し前にようやく完成したとのこと。
ちなみに元のお堂とはあまり似ていないらしいが椿自身は仕方ないと感じている。
東方居虫球での多餓椿
鱗粉異変が起こり、彼女も他の虫と同じように活性化していた。
気になってその力の源について調べてみると「虫を救い人間に味方する神が現れた」という情報を得た。
すると彼女は
「人間は虫に怯え、涙を流しながら被害が減るのを必死に祈っているのがお似合いだ」
と、再び怨霊の虫としての心を燃え上がらせてしまった。どうやら人間と虫が仲良く共存するという方針が気に食わなかったようだ。
人間にカメムシによる恐怖を与えるため、そして以前から戦ってみたかった人間を誘い出すため、
彼女は虫貴が起こした「虫の活性化異変」の影響が完全に無くならないうちに幻想郷中のカメムシを集め、カメムシの大量襲撃異変を起こした。
前述の通り全盛期の力は失われていたため、活性化異変が起こるまでは自ら異変を起こすことができなかったのである。
駆けつけてきた霊夢や魔理沙に倒されると、彼女は満足して異変を終息させる。
「一度でも椿象で異変を起こせばその恐怖はずっと心に刻まれる」とも言っているため、もう一つの目的も達成できたと感じているようだ。
一方リグルが自機の場合は目的の人間と全く違う者が異変解決に来たためキレ気味になり、
虫の育成方針について論争したりと話を若干脱線させた後、八つ当たり気味に襲い掛かって来る。
リグルに負けても目的を達成できていないので異変は終息させない。
しかし真の目的を聞かされたリグルの提案により、休憩後に目的の人間のところまで案内してもらうことになった。
(リグルが先に駆け付けただけであり、他の自機達も異変の元凶を捜して飛び回っている)
彼女もまた霊夢ルートと同じ結末を迎え、この異変も終息するのだろう。
幻想郷縁偽での多餓椿
一貫して「自称元怨霊」として扱われている。
害虫以外のカメムシを退治してしまうと彼女の嫌う冤罪に該当してしまい不作のターゲットにされるらしい。
また、彼女は益虫となるカメムシを植物を育てている妖怪に貸し出すサービスを行っているようだ。
妖蟲大戦争での多餓椿
配下のカメムシが多餓堂へ「現代流蠱毒」の招待状を持ってきたことで「暇つぶし」として参加に出掛けるが、途中でこの方式での蠱毒への疑念を抱く。
さらに彼女は大量の小さな霊がこちらを監視していることに気づき、このイベント自体をうさん臭く感じたことにより不参加にすることにして多餓堂に戻ってきてしまった。
そこへ蠱毒の参加者として戦う気満々のリグルがやって来た。
せっかくの多餓堂初の来客、そしてリグルはかつて自身を倒したこともある相手である。
「自分には勝てるだろう」とリグルの実力を見込み、「多餓堂祭り」と称して弾幕勝負の相手をして自身も楽しむことに決めた。
暑くなってくれば打ち水(ただし弾幕)を行うなど気も効いており、多種多様な虫(ただし全てカメムシ)の弾幕を披露したためリグルにも好評であった。
そして目論見通り敗退するとリグルに自身が抱いた蠱毒への懸念を伝え、
「この蠱毒をイベントとして楽しむ分にはいいだろう」
「ただし、その先で何が起こるかわからないからそこは覚悟するんだ」
「危険を感じたらすぐ逃げるといい」
と忠告した。
それを受けたリグルは危なくなったら逃げることを約束しつつ、好奇心から「危なくない範囲で主催者のことを探ってみる」と言った。
椿自身も主催者のことは気になっていたので、リグルの土産話を期待しながら多餓堂で待つことになった。
結局のところ蠱毒や主催者の意図自体は無害に等しいものであり、彼女の懸念は杞憂に終わった。
しかし「危険を感じたらすぐ逃げるといい」というアドバイスが活きるような状況は発生してしまった。
彼女が蠱毒でわざと勝ち残らなかったのも、リグルへ忠告したことも決して無駄ではなかったのである。
ちなみに彼女が登場するエリア5は整数タイトルでの4面に該当する。
物語のターニングポイントとなることが多い面である。