恐竜・怪鳥の伝説
きょうりゅうかいちょうのでんせつ
「恐竜・怪鳥の伝説」とは、東映による特撮パニック映画。
1977年の4月29日、所謂ゴールデンウィークに公開された。
同時上映は実写版『ドカベン』と『池沢さとしと世界のスーパーカー』
東映久々の怪獣映画であり、また当時大映が倒産し、東宝もゴジラシリーズを休止していたため日本の怪獣映画としても『メカゴジラの逆襲』以来2年ぶりの作品である。
操演など特撮にこだわり、また主人公・芦沢を演じる渡瀬恒彦の熱演もあって見ごたえがある。
ただし特撮、特に操演に関しては、予算不足と突貫工事だったのか、ピアノ線が見えるなど、多少の問題点もあった(後述)。
加えて、その内容もどこか一貫性に欠け、ターゲット層としていた年齢層とはやや外れたものになってしまっている。
1977年夏。
富士山の青木ヶ原樹海にて。
一人の女性が自殺しようと樹海に入り込んだが、洞穴に落ち、そこで巨大な卵を、そして卵の中の巨大な目玉を目撃した。
彼女はそれに驚き、工事現場まで彷徨い出て、工夫たちに助け出される。
彼女は病院で「大きな石の卵、氷の壁」とうわごとを残し、昏睡状態に。そして死亡する。
大手石材会社「ユニバーサル・ストーン」の属宅社員・芦沢節は、この事をニュースで聞き、メキシコ行きを中止。自身の父親が生前に同じものを、同じ場所で発見している事から、それを確かめに向かおうとする。
難色を見せる社長に対し、「話に出てきた石は恐竜や翼竜の卵だとしたら」と持ち掛け、樹海に向かう芦沢。
青木ヶ原の亡父の小屋で、生前の父の弟子・椋正平と再会する芦沢。案内を頼むが、「金儲けの手伝いは御免だ」と断る椋。
一方、女性カメラマンの小佐野亜希子と助手の園田淳子は、西湖で写真を撮影していた。浮上した2人は、大量の死んだ魚が海面に浮かんでいるのを目にした。
トレーラーハウスの亜季子に声をかける芦沢。二人はかつて、男女の関係だった。
やがて、西湖でボートのカップルが行方不明に。捜索のダイバーも意識不明になり、救急車で運ばれる。
なにやら湖に怪獣がいるのかと、新聞が書き立てる。その中で芦沢は、富士気象研究所の坂井博士と出会い、地震の予知について問う。
怪獣騒ぎを与太話と一蹴した坂井博士は、地震を予報したらパニックになると告げた。更に芦沢の父親が唱えていた「恐竜生存説」に関しても、世間が社会不安を恐れたからと述べる。
その後、淳子は森の中で首を食いちぎられた馬の死体を発見。芦沢もそれを目撃するが、後になって足和田村の役場の職員たちは馬の死体が無くなっていると告げた。
だが、芦沢が独自に調べると。死体は木の上に引っかかっており、しかも近くには何かの移動した痕跡があった。
翌日の西湖にて、竜神祭りが開催。
しかし近所に住む青年・島本たちが、インチキな怪獣騒ぎを起こす。
騒ぎはすぐにバレてしまうが、祭りの会場から離れた場所にて。島本は出現した首長竜により、仲間たちを目前で殺されてしまった。
町役場に駆け込んだ島本だが、その話を誰も信じてくれない。が、外国人の観光客も双眼鏡で目撃していた。さらに、森の中にも現れ目撃される。
そして、西湖の湖中に潜水している亜季子を、ボート上で待つ淳子は、現れた首長竜・プレシオサウルスに襲われ下半身を食いちぎられてしまった。
ようやく山梨県警が動き出し、西湖を立入禁止区域に指定。地元消防団の人間がロープを張って立ち入り禁止にした後、マスコミや野次馬も殺到。注目される中、大規模な科学調査が開始された。
しかし三日が経過しても何も発見されず、結局調査は打ち切りになるが……。
- 恐竜プレシオサウルス
前世紀(中生代)の首長竜が、現在まで生き残っていたもの。
自然環境の変化で、富士のこの地域だけ太古が再現されたために眠りから覚め、同様に蘇ったランフォリンクスと宿命の対決を演じる。
凶暴で、人間を襲っては食い殺す。ラストで富士の樹海を歩き回り、ランフォリンクスと死闘を繰り広げるが、右目を潰される。更に、富士山の噴火および地震で起こった地割れに落ちてしまった。
予告篇ではプレシオザウルスとなっている。
造形物は4分の1の縮尺を想定しながら、操演用の人形や着ぐるみなどを含めて4種類を制作し、他にも実物大の頭部やヒレを制作するなど、大橋史典が主宰する大橋工芸社では、5人で4か月を要した。
本物と同様にヒレ足だが、地上でも歩行する事が可能。ポスターのイラストでは水かきのついた前足になっている。
- 怪鳥ランフォリンクス
富士樹海付近の自然環境の変化で、化石化していた卵が孵化して蘇った、前世紀(中生代)の翼竜。
プレシオサウルス同様に性格は凶暴で、人々や家畜を上空から襲う。登場はラスト20分の頃で、プレシオサウルスと壮絶な対決を演じる。
その嘴でプレシオサウルスの右目を突くも、富士山の噴火と地割れに巻き込まれてしまった。
予告篇ではランホリンクスとなっている。
造形物は4分の1の縮尺を想定しながら、操演用の人形を制作し、他にも実物大の頭部や足など複数を造形している。
劇中では1体しか登場しないが、ポスターのイラストでは3体が描かれている。
1974年当時の東映社長・岡田登氏のアイデアによる一作。
日本映画を国外に売り込む事と、洋画は必ず日本でも人気を得る事から、当時に人気を得ていた、「ジョーズ」などの動物パニック映画からヒントを得て、本作を思いついたらしい。
「洋画のあれ、面白かったから焼き直せ」それがこの当時の氏の口癖だったらしく、本作も「(タイトルが)面白いからやれ」と思い立った事から製作が決定したらしい。
また、当時の東映は岡田氏のワンマン体制で、本作の企画も社長自らが出したものだったため、社内で断れる者はいなかったとの事。
ターゲットとする年齢層は小学校高学年から中学生を想定していたが(併映の「ドカベン」「池沢さとしの世界のスーパーカー」も、それらを狙っての事だった)、内容はそれらの年齢層を考慮しているとは言えず、興行成績は芳しくはなかった。
ただし、海外セールスでは世界17か国に売り込み、大ヒットとはいかなくともそれなりに売り上げを伸ばしたと語っている。
特にロシア(当時はソ連)では、史上19位の人気を得たという。
しかし、内容は動物パニックものなのか、あるいは怪獣映画なのか、ホラーなのか、ジャンルとしては若干中途半端であり、想定していた視聴者層を惹きつけたとは言い難い。
肝心のプレシオサウルスがはっきり登場するのは映画も半ばを過ぎた頃で、ランフォリンクスはラスト20分になってようやく登場するという有様である(しかも登場に関しても、ほとんど全く伏線が張られていない)。
また、プレシオサウルスとランフォリンクスのラストシーンでの戦いでは、所々でピアノ線が見えてしまい、なおかつ戦いの結果もはっきり見せずに終わらせてしまっている。
映画そのもののラストもまた、事態がはっきりしないままで唐突に「終」と出てしまうため、消化不良な感が否めない。
当時の特撮関係者によると、特撮に関しては突貫工事で予算も不足だったらしく、結果的に大コケしたと語っている。
なお厳密には、首長竜は恐竜ではなく、翼竜も鳥類ではない。なのでタイトルに反し、本作には恐竜も(怪)鳥も登場していない事になる。
自衛隊と思われる車両と隊員も登場するが、戦闘には一切関与せず、山梨県警はともかく地元の足和田消防団が積極的に活動している。ライフル(数丁)は猟師等で合法的に所持可能なため、消防団員が持っていてもおかしくはないが、何故か爆雷(信管の調整を含む)の準備と投下まで消防団が行っている。
ジュラシック・ワールド:2015年の映画。プロットが酷似しているとして批評家が「恐竜・怪鳥の伝説」を引き合いに出した。