概要
市町村における非常勤の特別職地方公務員(報酬は年額の他、活動した時のみ支払われる日当制のアルバイト方式)である。
基本的には非常備の消防機関であるが、山岳地帯、離島の一部など、常備の消防機関とされる消防本部及び消防署がない地域では常備消防を担っている。
通常は、他の職業等に就いている一般市民で団員が構成されており、自治体から装備および僅な報酬が支給される(報酬がない団も存在する)。その活動はボランティア精神で成り立っている。
ここまでが制度上の文面である。
数々の問題点とその対策
人員問題
現実問題として、過疎の進む地方では入団が半ば強制による徴兵制度と化しており、自治体・地域集落に住民登録をされた若い男子は、通常5年から7年、長い地域では15年以上も消防団員として地域の消防活動・訓練および指揮・夜警・地元行事・祭りの力仕事などに従事しなくてはならない。最悪の場合、高齢者になってもこき使われる。
また、詰所での飲酒・イジメなどのモラルの低さも問題になっている。また警防団(準軍事組織)を前身とする影響か、指導が厳しすぎたり、体育会系のノリを強要する団もある。
社会経験の短い若者にとっては、これらは足枷かつストレスの温床でしかなく、若者が地元へのUターンを拒む一因と見られている。
余談だが上記にボランティア精神と書かれているが、団によっては帽子にもボランティアと英語で書かれている…が、本来の意味は志願兵である、それが事実上の徴兵となっているのだから笑えない。
報酬問題
- 報酬について
団員には年間に僅かな報酬が与えられる(一応公務員である以上、与えない事自体が違法である)が、逆に都市部寄りの地域では、年間に多少の金額を地域に支払うことで、消防団員になることを免除される特例がある場合がある。
しかしこの報酬も(特に出動手当てを含め)日本全国で格差が酷く、それが問題として取り上げられた事もある。因みに特に酷かったのが山梨県の消防団である(出動手当がたったのワンコイン)。
更に改革前では、報酬が個人ではなく団の管理になっていたため、実際には個人に還元されないどころか、最悪の場合は横領もあり得るという有り様だった。
- 対策
現在は報酬を団ではなく、団員個人の口座へ振り込む場合が多くなっている。
犯罪行為
上述したモラルの低さに起因する犯罪行為や金銭絡み(報酬支払の有無や方法等)の犯罪だけでも問題だが、承認欲求を拗らせたり、緊急走行をしてみたい…というしょうもない理由で団員自らが放火する事件も度々発生している。
なお強制的な入団や退団への妨害が横行している例もあるが、一応公務員である以上、これらの行為は「職業選択の自由」の侵害…つまり憲法違反の可能性がある。
詰所の問題
消防団の詰所は団員の待機室であり、積載車や防災用装備を保管する場所である。しかし、予算の都合や統廃合による移転を繰り返した結果、現在の耐震基準を満たしていなかったり、小規模な掘っ建て小屋のような詰所も多く、震災で倒壊した例もある。
ポンプ車、積載車の問題
- 免許と区分
昔はMT(マニュアル)車しかなかったため問題とならなかったが、現代ではAT(オートマ)車が主流である。つまり運転免許を取得する際、わざわざMT免許を取る若者は(趣味や仕事の都合でない限り)まず居なくなった。ところが消防団で使用されている車両はMT車であることが多く、車両を運転できる団員が減少するという問題が発生した。仮にMT免許を持っていても、普段はAT車を使用している団員も多く、とっさにMT車を運転できないという例もある。
更に免許区分が変更されたことで、変更後に新規取得できる普通免許では、トン数の大きい車両が運転できなくなってしまい、準中型免許が新たに必要になった。
これらの問題に対し、免許取得に補助金を出す地域もあるが、酷いところではこれを全額自費で取得させる、という暴挙を行っているとの話もある。そもそもAT車が主流の現代において、わざわざMT免許を取得させること自体が時代錯誤と言わざるを得ない。
- 対策
近年では免許区分の変更やAT車の普及を受け、より小型な車両やAT限定でも運転可能な車両を導入する動きがあり、徐々に改善されてはいる。
出初式、入退団式問題
- 式典の問題
出初式は毎年1月上旬に行われる行事であるが、年の始めという時期に行われるため…。
- 年始の休みに被るため、休みが減る
- 寒い中、朝から長時間待機したり、その後町中を行進したり、来賓の長々とした話を聞かなければならない
- 表彰される人間以外にとっては、表彰式等は拘束時間にしかならない
…等の問題がある。
寒さは地域差が大きいため、寒冷地や豪雪地帯では防寒着が支給される団もあるが、多少マシになる程度である。更に靴は防寒仕様でない長靴であるため、全く役に立たない(しかも凍結した路面で滑る)。
来賓の話や表彰式は長期化しやすく、嫌々参加させられている団員からすると苦痛でしかない。
- 対策
出初式をもう少し暖かい時期にずらして入退団式と統合し、参加者を該当者と幹部のみに限定。行進等を廃止して負担を軽減する等、大幅な改革が行われている地域もある。例・岐阜県飛騨市。
ポンプ操法問題
- ポンプ操法と装備
ポンプ操法などの長期練習は地域消防の効率とは程遠く、現代の社会人(残業や休日出勤が多いブラック企業に勤めていたり、夜勤をしている人間)にとってはかなりの苦痛を伴うため、しばしば「無駄な訓練」と言われている。
そもそも消火活動をする際は、長靴やコンバットブーツ、耐火仕様の胴付長靴を着用するのだが、それらの登場で不要になったはずの脚絆を、操法動作ではわざわざ着用している。また操法のためだけに、運動靴や手袋を購入する等、はっきり言って税金や予算の無駄遣いである。
- 対策
そのため一部地域では、操法を廃止して防災訓練に変更する動きもある。
現状について
ただ、過疎地域では消防署が近くになく、地域の消防活動の殆どもしくは全てを担っているため、無くてはならない組織というのが現実である。
しかしながら、少子高齢化と人口流出によって過疎化した地域では、そもそも消防団の人員維持が不可能に近く、これが更なる在籍年数の長期化や合併による負担増加に繋がり、余計に敬遠する若者が増えるという悪循環に陥っている。
更に言えば、書類上は所属している幽霊団員(数年単位で集まりや行事に参加しない)の存在や、所属はしているものの、職場が遠いため即応出来ない等、現代社会では機能不全に陥る可能性が高い。昔の田舎等では自営業や農林業等が主体であったため、火災や災害が発生しても近場であるため即応出来た。
なお火災現場においては、ポンプor消火栓の操作担当と、筒先を持つ担当を合わせ、最低でも2人居ないと消火活動ができない。そこへ運転免許の問題が重なると、そもそも出動すらできない可能性すらある。
これら問題のため、消防団員の数は、年々減る一方である。
「田舎に住もう!」という若い男子諸君は注意していただきたい。