戦時国際法
せんじこくさいほう
国家間での権利義務の関係を定めた法律である国際法のうち、狭義には武力紛争において当事国の行動を規制する国際法をさす。このほか、武力行使に訴える権利および手続を規制する国際法などを含むことがある。
戦時国際法への違反は処罰の対象となり、これを戦争犯罪と呼ぶ。国家は敵国の戦闘員もしくは民間人の戦争犯罪を裁く権利を有し、自国の戦争犯罪を裁く義務も課される。さらに国際刑事裁判所が設立され、国際社会が個人の戦争犯罪を裁くことも可能となっている。
またこの法律の範囲は非常に広範囲にわたり、第1に戦時国際法が適用される状況についての規則、第2に交戦当事国間の戦闘方法を規律する規則、第3に戦争による犠牲者を保護する規則、第4に戦時国際法の履行を確保する規則などで成り立っている。
この法律は明文化されており、ある地域や国が戦争状態(内戦などであっても)である場合には、正規・非正規を問わず、あらゆる軍事組織・軍隊が遵守するべき義務が存在する。
また、国や地域においても戦争状態にある当事者以外であっても守るべきことは存在している。
戦時国際法においては、戦場にいる者は戦闘員と民間人に分けられる。戦闘員には国際法に従う限りで敵を殺傷する権利があり、一方で敵から国際法に従って攻撃されて殺傷されてもそれは正当な権利行使として異論が挟めない。民間人は攻撃の対象にすることが許されない代わりに、武器を取って交戦する資格も認められない。
戦闘員
民間人
毒ガスや細菌兵器などの使用が戦時国際法で禁止されていることはよく知られている。これは一般には不必要な苦痛を与える手段の禁止として法制化されている。戦争の目的はあくまでも敵を降伏させることであり、その過程でやむなく殺傷するのだ、という原則である。故に相手を苦しませることが主目的の兵器は禁止される。
- N兵器・核兵器:保有に制限があり、国際的に認められた既存保有国以外は保有も開発も禁止されている。使用については1996年国際司法裁判所勧告意見で「核兵器の使用または使用の威嚇は一般に国際法違反」としている。ただし国家の存亡がかかる際の自衛手段としての使用は国際司法裁判所も判断を保留している。
- B兵器・生物兵器:細菌・ウィルス・それらの宿主生物を用いた攻撃は1925年ジュネーブ議定書で使用が禁止された。後に開発や保有も国際法で禁止されて多くの国が批准している。
- C兵器・化学兵器:毒ガスや毒物を用いた兵器。ハーグ陸戦条約第23条及びジュネーヴ議定書で使用禁止となり、開発や保有も大多数の国で禁止条約を批准。
- 焼夷弾:民間施設への使用は禁止。仮に軍事基地でも人口密集地域に存在するなら攻撃を禁止する。1983年発効の特定通常兵器使用禁止制限条約で禁止された。
- 対人地雷:地雷のうち、人間が上を通過した際に爆発する事を目的とする地雷。足を吹き飛ばす程度の地雷なら敵に負傷兵を増やす戦略的有用性もあって安価に大量生産される。しかも戦争が終わってもそのまま放置されることが多く、世界的に多数の民間人が殺傷されてきた。1999年発効のオタワ条約で使用禁止となる。これにより被害縮小に一定の効果は上げているが、しかし米露中など主要国に未署名国が多い問題がある。
著名な条約としてはジュネーブ諸条約と呼ばれる条約の一群やハーグ陸戦条約と呼ばれるものが存在する。
詳しくはこのページを記述する際に参照したWikipediaの同項目の条約化された戦時国際法の一覧を参照されたし。
ジュネーヴ諸条約
この条約の第一条約は戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関するもの、第二条約は海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の状態の改善に関するもの、
第三条約は捕虜の待遇に関するもの、第四条約は戦時における文民の保護に関するものを規定している。
以下のリンクは防衛省(http://www.mod.go.jp/)のサイトへのリンクである。
また、これらの追加議定書が存在する。これは第一追加議定書は条約共通二条(これらの条約の第一条から第三条までは共通の文章となっている)の武力紛争の形が多様化したことによる追加の議定書であり、第二追加議定書は条約共通三条の追加の議定書である。なお、第三対か議定書は赤十字のマークに関する議定書であり、日本は批准していない。
以下のリンクは外務省(http://www.mofa.go.jp)のサイトへのリンクである。
この条約は「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」および「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」からなっており、交戦者の定義や、宣戦布告、戦闘員・非戦闘員の定義、捕虜・傷病者の扱い、使用してはならない戦術、降服・休戦などが規定されている。ただしその後細部が定められた別の条約によるものも存在しているため、注意が必要である。