概要
小説投稿サイト『魔法のiらんど』にて作品を投稿して商業デビューしたWeb小説家のひとりで、当該人物が用いているペンネームである。(以下「映画館氏」)
このサイトは2000年代後半の日本小説界に物議を醸した『恋空』が掲載されていたケータイ小説の殿堂であり、映画館氏もかつてのケータイ小説の伝統(?)を引き継ぐ作家として認識されることが多く、サイトユーザーらから多くの支持を集めている。
(ただし、現在のケータイ小説界は『恋空』当時と比べて様変わりしている。後述)
代表作は『溺愛』シリーズで、2017年時点でシリーズ累計25万部をほこる。
これは『恋空』以降ほとんど話題にされることの無くなったケータイ小説のいうジャンルのなかでは表サイドのラノベ作品とも比肩できる業績と影響力を示したことになる。
しかし、事実上ケータイ小説界隈という限られた範囲内での「有名人」という知名度に止まっており、WEZZYからの企画でインタビューを受けた際にはメディアからの取材を受けるのはこれが初めてで「「魔法のiらんど」サイト内でインタビュー記事を載せてもらったことはありますけど、外部の方から取材されたことはありません」と語っている。
10~30歳代の女性が主な読者であるとされる。
なお、ペンネームの由来は「映画館で映画を見るのが大好きだから。」
人物
兼業作家であり、性別は女性。結婚はしていて子供(娘)もいるという。
職場にスマホ用のキーボードを持ち込み、昼休み時に執筆するスタイル。
元々は宮城谷昌光によるガチ系の中国歴史小説のユーザーで、それ以外の小説は嗜んでこなかった……というから驚きである。
言うまでもないが、歴史小説とケータイ小説はまったく別系統である。
色々あった後に、恵まれない境遇のヒロインが不良やヤクザなどの闇属性のヒーローに助けられたりハードな濡れ場に突入したりといった物語を執筆するようになる。
彼女の作品に魅せられた小学生の読者(!)から「(ヒロインのように)あんな風に愛されたいです」といった感想が届いたことがあるらしいが、彼女本人は現実の不良はだいぶ残念であることは一般常識として認識している。
ちなみに、自慢の娘さんは「恋愛に興味がゼロ」だという。
「趣味はバトミントンとゲームですが、6対4でインドア派です(笑)」(by本人)
商業デビューまでの経緯
若い頃は、宮城作品の他は映画やTVドラマが趣味であったと語る。小説の傾向以外はごく一般的な少女時代を送っていた模様。
その頃に『恋空』(2006年)を筆頭にした切ない実話タイプの、今日にイメージされることが多いスタイルのケータイ小説が一大ムーブメントとなっていたが、「自分の好みではないなーと思って敬遠していた」と語る。
そのため、『恋空』ブーム直撃世代にして花も恥じらう乙女であったにもかかわらず、当初はWeb小説の界隈自体に興味を持っていなかったという。
その後に結婚➡出産を経て産休に入っていた2011年ごろに当時持っていた携帯電話に小説投稿サイト『エブリスタ』のアプリが初期インストールされていたので、息抜きとして読み専での利用をはじめる。
だが、『エブリスタ』特有の比較ライト向けな環境には結局は馴染まなかったようで、続いて別サイトの『野いちご』へ、継いで『魔法のiらんど』へと流れ着き、そこで同サイト名物の不良ものやヤクザものに魅入られ腰を落ち着ける。
そして、諸作品を読み込んでいるうちに自分好みの作風の話はだいたい読み尽くしてしまい、思案の末に「じゃあもう自分で自分が好きなタイプの話を書いてみるか」となり小説投稿をはじめる。
そして、先述の『溺愛』がその斬新な内容によって人気となり、2014年間総合ランキングで1位を取ったことで書籍化され、商業作家としてデビューした。
作風
ケータイ小説においては、お涙頂戴タイプに変わる新機軸として確立した溺愛系の系譜に属する。
(※氏の作品名とは関係なし。カップルがイチャイチャしまくる内容という意味。)
だが、綴られる内容はトンデモなレベルでハードかつぶっ飛んでいる。
なにせ、記念するべき処女作『溺愛』の1ページ目から「いやぁ!やめて!いやあああ!」と、主人公兼ヒロイン(16歳)がチンピラ数人からレ×プされている。
その後、買春をしていたと練れ衣を着せられ、家族にも見放され恋人も失い、自殺しようとした矢先にヤクザの若頭に拾われて、すったもんだの末に嫁にされ溺愛される、というのが冒頭の流れ。
「なんだよコレ」と思ったあなた、これが現在のケータイ小説の仕様なんだから仕方がない。
ただし、「泣ける実話」というかつてよく見られた体裁でまったく無く、完全に恋愛小説として展開されている。
この後、ヒロインは再び誘拐され暴行を受けるなどひどい目に遭うが、その度に若頭が助け出し、二人は愛を育んでいく……というのが大まかな流れ。
映画館氏を取材した小池未樹はその構造を「どん底の少女」が「圧倒的に強い男」に支配されることで人生逆転するはなしと解説した。
これはサイト内でも多くみられるテンプレとも同一だが、これに加えて映画館氏はヴィラン役に「腹黒で不良のセフレをけしかけて身内であるはずのヒロインを日常的に辱めていた双子の妹」というほとんど狂気的なキャラを配している。
そしてこの妹さん、姉であるヒロインの貞操も尊厳も踏みにじったあげくに「アイツのものはアタシのもの‼」とばかりに幸せになりかけていたヒロインの前に再び立ちふさがる。
この双子妹の悪行が常軌を逸していたことは当時のユーザー間で話題となり、なんと「いいぞもっとやれ」という絶賛すら寄せられることになる。
これ以降、映画館氏以外の諸作品にも超絶鬼畜なサイコパスキャラが多く登場するようになるなど元から過激路線だった『魔法のiらんど』作品の作風をより先鋭化させた原因の一つと評価されるようになる。
ちなみに、現在では『傾国の美女は、少々変わった趣味をお持ちのようです。』という異世界恋愛小説を連載中。
一応お断りしておきますが、同作はなろう作品ではありません。
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なろう系…映画館氏によると、ケータイ小説系統においては「ファンタジー路線なら『小説家になろう』」という認識だという。