概要
てんとう虫コミックス2巻、藤子・F・不二雄大全集4巻に収録「オオカミ一家」に登場。
懐中電灯型の道具で、これから出た光を浴びると狼に変身する。本来は未来の子供達が狼男ごっこに使う道具なのだが、変身できるのは本物のオオカミであるため、同じような効果を持つ「おおかみ男クリーム」とはその点が異なっている。
オオカミに変身した者は本物のオオカミとしゃべることもでき、この状態でも人の言葉を話すことはできるが、下記の1985年版では「ワンワン」としか言えなくなっている。同じく下記の2007年版では月の光を集めて使う充電式になっていて、浴びた光量によってどれだけ変身できるかが決まることになっている。
映画『のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜』にも登場し、悪魔の使用する魔法を解く際や、大魔王デマオンの分身体を消滅させたり、ダメージを与えたりした際に使用している。
ストーリー
「ニホンオオカミを見た人がいる」という記事が載った新聞をスネ夫が皆に見せると、最初しずかは「山神峠で?」と驚いていたが、「ニホンオオカミは最後の一頭が明治38年に見つかって、今はどこにも生きていないはずでしょ」と続けた。これにスネ夫は「学者はヤマイヌか何かの見間違いじゃないかと言っている」と記事の続きを読み上げ補足。
これにジャイアンはオオカミなんかいる訳ないと否定的だったが、しずかはもし見つけたら日本中大評判になると胸を躍らせ、のび太もつい「僕、見つけよう!」と発言。これを聞いたジャイアン達は驚いた後大笑いしたが、通りかかったドラえもんはまたバカにされたことを聞いて激怒した後、のび太が必ずニホンオオカミを見つけると宣言。
更に明日の日曜日、山神峠に行って捕まえて来るとも宣言したため、のび太は不安になり止めに入ったが、ドラえもんに任せておくよう言われたため、「オオカミ発券機」でもあるのかと安心。ジャイアン達が「もし見つからなかったら目でピーナッツかむか」と笑う中、「何でもやってやる!!」と胸を張って帰ったが、その先で犬に吠えられると一目散に逃げ出したので、ドラえもんは「オオカミ捕まえるなんて無理かもな」と少し不安になった。
その後いざタケコプターで山神峠に向かい、いかにもオオカミが出そうなめったに人が寄り付かない山奥に着地。すると辺りは同じくオオカミを探しに来た猟師だらけだったっため、彼らもあの新聞を読んで来たのだと分かり更に山の奥を目指した。移動中のび太はオオカミが本当にいるのか不安になったが、ドラえもんは22世紀にはちゃんとニホンオオカミの群れがいるからこの20世紀にもいるということだと説明。
そしておもむろにポケットから「月光灯」を取りだしのび太に使用し、オオカミに変身させた。ドラえもんはのび太に服を脱ぐよう言って彼を囮にし、麻酔針が出る小型銃も渡して本物のオオカミを捕まえようとしたが、うっかりのび太が銃を撃ってしまったため自分が眠らされることになってしまった。
のび太は慌てて起こそうとしたが、その時後ろを振り向くと本物のオオカミがいたためびっくりし飛び跳ねた。そして自分もオオカミのくせにと突っ込まれるたが仲間だと歓迎され、住処へと案内され仲間は自分の家族だけになってしまったこと、自分達の先祖はこの山一帯で平和に住んでいたがそこへ人間が入って来て住処や餌を奪い罠や鉄砲で追い詰めたことも明かされた。
しかし自分達家族だけは、命がけでそれらを潜り抜けたことを自慢されると住処の洞窟へ案内され、家族も紹介された。一方その頃、猟師たちはオオカミを見つけようと必死になっていて、足跡を発見しこちらに向かっていた。そんな事は知らずのび太はオオカミの子供達と楽しく遊んでいたが、その時父親のオオカミが人間たちの臭いに感づいて警戒心を強め、のび太の方も道具の効き目が切れて人間に戻り始めてしまったため、親オオカミにバレて追われることになってしまった。
間一髪、足跡を付けて来たドラえもんが麻酔銃を打ち込んでくれたので命拾いしたが、捕まえるのを止めたと言うと「命がけで苦労したのに!?バカみたい!!」と言い出した。だがのび太が必死で訳を説明すると理解してくれ、猟師たちにもこの辺は隅々まで探したことを説明してくれた。しかし町に帰るとのび太はジャイアン達から約束通り目でピーナッツを食べるよう言われたため、ドラえもんに「目でピーナッツかみ機」を出してと頼むこととなり、ドラえもんも「そんなのないなあ」と困るしかなかった。
アニメにおける原作との主な相違点
大山版は1979年4月14日及び1985年4月5日に、水田版は2007年3月9日及び2025年1月4日にそれぞれ放送している。
1979年版
- しずかは前に動物図鑑を読んだことで、ニホンオオカミの詳細について知っていた。またスネ夫が読み上げた新聞の記事には「最近野犬が増えてるがニホンオオカミを見たという話を聞いたことがないと語っている」という続きがあった。
- のび太が子犬を見て逃げ出して行った際のドラえもんの台詞は、「ホントにあれで捕まえられるのかな」だった。
- ドラえもんがこの時代にもニホンオオカミがいる証明をした際の台詞のうち「22世紀」は「21世紀」になっていた。
- のび太は「このオオカミ一家は人間に追われて山奥でひっそり暮らしていたんだ。人前に連れ出すのは可哀そうだよ。お願いだ、そっとしておいてやって」と手を合わせながらドラえもんにお願いした。
- 本編終了後のショートアニメは、ドラえもんが手に持っていた袋からピーナッツを一粒取り出し、空中へ投げて目げかもうとしたが、普通に目に当たってしまったというものだった。
1985年版
- サブタイトルが「オオカミ一家を救え!!」に変更
- 冒頭でのび太達は満開の桜の中を歩きながら話をしていて、ニホンオオカミの件は今朝のニュースでやっていたことだった。ちなみにこの場及び後のシーンにもモブの男子は登場していない。
- ニホンオオカミについての詳細は先生が授業内で説明していて、分類や、狂犬病などの拡大を防ぐためや猛獣と認定され乱獲された、開発により森林などの住処がなくなったという絶滅理由も追加説明されていた。またヤマイヌの見間違いというのは、この時にスネ夫が質問し先生が答えている。
- この後の下りは空地で行っていて、のび太がニホンオオカミを見つけると宣言したのは、しずかが「もし見つかったらロマンチックだわ」と言ったからだった。そしてこれにジャイアンとスネ夫は「のろまだから無理」と大笑いし、これで泣き出したのび太を最初しずか庇っていたが、つい「そりゃのび太さんには無理なのは分かってるけど」と言ってしまい、のび太は更に泣き出してしまった。
- ドラえもんがここに通りかかったのは騒ぎが面白そうだったからで、泣き声で聞き取りにくいのび太の言葉を一度聞いただけで理解した。
- もしニホンオオカミを見つけられなかった際の罰は逆立ちで町内一周で、目でピーナッツはドラえもんが宣言していた。またこの後の子犬は、のび太が蹴った空き缶が頭に当たり追いかけて来た。
- 山奥で最初に現れた猟師は、のび太に「タコか」と顔をからかわれて怒っていた。そしてこの後には、猟師たちだけでなく、テレビ局のレポーターやカメラマンも来ていた。
- ドラえもんがこの時代にもニホンオオカミがいることを説明していた時、のび太は湧き水を飲んでいた。
- オオカミになったのび太は後ろから猟師たちが来たため、慌てて崖の上の岩の影に隠れ、そこで父親オオカミから声をかけられた。またこの後崖の上から見た景色はダムの上だった。
- 父親オオカミが様子を見に行った結果、別の洞窟に移動することになったが、そこも既に開発が進んでいたため更に別の洞窟に移動することになった。だがそこへはダムを抜けなければならなかったため、のび太が監視委員の気を引いているうちに一家は無事通り抜けることができた。ちなみにのび太はアピールをし過ぎたため、犬だと思われていた。
- のび太は、倒れている両親に心配そうに駆け寄ってきた子供オオカミたちの姿を見せドラえもんを納得させた。そしてこれに感動したドラえもんは、猟師たちをどこでもドアでここへ連れてこさせ、ムードもりあげ楽団と共に冒頭の子犬をこの洞窟の中から出現させ、ニホンオオカミは犬の見間違いでると思わせた。
- のび太は約束通り自力で逆立ちで町内一周を成功させ、しずかからも男らしいと褒められ、その際「あの子たちのことを思えば」と言うと共に彼らを「僕の友達」と言っていた。そしてその頃オオカミ一家は夕日をバックに草原を駆け回っていた。
2007年版
- サブタイトルには「のび太、オオカミになる!」の煽り文句が追加された。
- 冒頭には、洋館に住む男性が月を見て狼男に変身し、パーティーに誘いに来た妻に襲い掛かるというテレビ番組を見たのび太が震え上がったり、部屋に戻った際オオカミに変身したドラえもんを見て気絶し、その後月光灯について説明される下りが追加されている。
- スネ夫が新聞を広げて話をしていたのは空地で、モブの男子の代わりに出木杉がこの場にいて、ニホンオオカミに関することは彼が説明している。またドラえもんがこの場にやって来たのは楽しそうだったからで、しずかはのび太が目でピーナッツを噛む場面を想像していたり、のび太も「ピーナッツでもドーナツでも」と胸を張っていたりしていて、のび太に吠えた子犬はちゃんと家の庭にいた。
- 山奥で最初に会った猟師の男性は細目に尖がった口だった。そしてこの場には猟師たちだけでなく、騒ぎに便乗して饅頭や焼きそばを売っている男性もいた。
- 父親オオカミは倒れているドラえもんを見てタヌキだと思い食べようとしたが、のび太から青いタヌキなんて不味いと言われたので食べるのを止めた。
- 子供オオカミは2頭だけで、猟師たちは犬も連れてオオカミを探していた。
- のび太が父親オオカミと協力して人間たちの気を引く下りが追加され、鉄砲で撃たれたり、川に落ちて流されたりしてしまったが、その後何とか合流し洞窟に帰ることができた。
- のび太は洞窟の中で親オオカミに襲われていたため、ドラえもんもこの中に乗り込んで来た。そしてドラえもんは本当にニホンオオカミを見つけたことに大喜びし、これでのび太が有名人やヒーローになれると大喜びしたが、彼らを見せ物にはできないというのび太の言葉に感動し納得した。
- 猟師たちにはオオカミになったドラえもんを見せることでガセネタだと思い込ませ、この場に「迷い道」という標識型のひみつ道具を置きこの先に立ち入らせないようにした。そしてこの後のび太は「生き残ってくれ」とオオカミたちに聞こえるよう山に向かって叫んでいた。
- ラストでジャイアンはざるに盛ったピーナッツを持ってのび太を追いかけていて、ドラえもんはのび太と一緒に逃げていた。
2025年版
- 冒頭にはニホンオオカミの剥製も映し出され、「大陸のオオカミと違って体は小さく体長100cmくらい、耳や尻尾も短い」と、スネ夫はより詳しく説明していた。また山神峠のことを言ったのはジャイアン、もう一人いた男子は安雄で、絶命の意味が分からなかったのび太にスネ夫が軽く説明したり、安雄が絶滅したはずの魚が実は生きていたことを言っていたりもしていた。
- のび太に吠えた子犬はマメシバっぽく、自分からこの場にやって来た。
- 山神峠には猟師たちだけでなく、ツアーガイド及び客、赤ずきんとオオカミの恰好をしたリポーターも来ていた。ちなみに彼らもニュースを見てやって来ていた。
- 父親オオカミは気絶しているドラえもんをのび太が仕留めたタヌキだと思っていたが、臭いからとても食えたものではないと悟った
- 父親オオカミが話した、人間たちが自分達にして来たしうちにはイメージ映像が追加された。
- 2012年版と同じく、ドラえもんは洞窟の中で麻酔銃を撃っている。またドラえもんは「大発見だ!」や「皆に自慢できる!」とはしゃいでいたが、のび太からオオカミのように歯をむき出しにして睨まれたことで秘密にしておくことに賛成した。また猟師たちには、のび太に自分のことをタヌキと言ってもらい、腹包みもして信じ込ませた。
- ラストでしずかはクスクス笑っているだけだった。
余談
父親オオカミの声は1985年版は不明だが、1979年版はたてかべ和也、2007年版は一条和矢、2025年版は白熊寛嗣がそれぞれ担当した。
TVアニメシリーズの『ドラえもん』では、原作漫画付きのエピソードに関しては1度アニメ化しても、それから約10年たつとリメイク版を製作するのは大山版と水田版に共通して見られることだが、初めてリメイク版が作成されたのはこのエピソードである。ちなみに上記の「おおかみ男クリーム」も現在のところ計5回とかなりリメイクされている。