死んだんです……たくさんの人が…!!
それはアクシズの手によってか!?
それともエゥーゴかね!?
——殺された
殺されたんですよ!
同じ艦の仲間だと思った相手に!!
概要
ガンダムエース2023年7月号から連載される漫画作品。
シナリオは重信康、作画は宇宙戦艦ティラミスの伊藤亰。アドバイザーとして小太刀右京が担当。
何年も続くガンダムシリーズにおいておそらく初となる本格殺人ミステリーであり、ガンダムで行う人狼ゲームである。
あらすじ
宇宙世紀0087ー
エゥーゴ、ティターンズ、アクシズ、三つ巴の戦いが混迷を極める中、ティターンズに所属するペガサス級強襲揚陸艦「ヘカーテ」は、
ある極秘任務を帯びて暗礁宙域ゼブラゾーンに部隊単艦で赴いていた。
その任務とは人狼の名を冠した新型実験機ガンダムウェアヴォルフの性能評価試験を行うことであった。
しかしゼブラゾーンに到着したヘカーテは、なぜかメインの航行領域から外れたこの宙域で、待ち構えたかのようにエゥーゴの部隊による強襲を受ける。
迎撃に赴いたマラサイの部隊が全機撃破され、さらには戦闘の余波で艦の推進器にもダメージを受けたとあって、残ったMS部隊では抑えが効かないと判断。暗礁宙域からの強行離脱を優先。
エゥーゴからの迎撃からは逃れたものの、無茶な全速前進によってまともな操縦もできないまま月軌道外縁まで移動することとなる。
敵味方からも遠いこのエリアで補給もままならぬ状態で数日間立ち往生していた艦内では、
艦長たち航行クルーは今後どのように対応するかを決めかねていた。
残った戦力はわずかばかりのMSと試験用の極秘実験機のみ。
その実験機もニュータイプ研究所(ニタ研)からの許可無しの起動を禁じられており、戦力としてアテにすることはしていなかった。
そのような状況においてもMSのパイロットたちはいつでも戦闘準備をできるようにせねばならず、
とりわけ実験機のテストパイロットでもあったラセッド・グレンドンは、
先のエゥーゴ襲撃時に実験機であるガンダムでの出撃を何度も要請しながらも、その要請が聞き届けられることがなかったために仲間が戦死してしまったことに強い憤りを感じていた。
その最中に再び敵襲警報が鳴り響く。
今回強襲をしてきたのはアクシズ所属のクラート・ニクス率いる艦であり、
迎撃にでた仲間たちが再び苦戦している状況に、ラセッドは二度も仲間たちを見殺しにはできないと、ついにガンダムウェアヴォルフで出撃をする。
その圧倒的性能で敵MSを蹴散らす姿にクラートは一時撤退の判断を下す。
友軍のMSは一機破壊されたもののパイロットは脱出して一命を取り留め、なんとか残存MSと全隊員が艦に帰還。
しかし他のパイロットは皆戻ってきた中でラセッドのみウェアヴォルフから降りてこない上に通信も入らない。
艦長の命令で外部からのコックピットハッチの物理開放を行い、コックピットの中を確認したところ、
そこには血まみれで息絶えたラセッドの姿があった。
戦闘中に負ったダメージでもなければ事故による被災でもない、れっきとした殺人。
それもMSが開発されて90年以上経過した中で史上初のMSのコックピットという密室で起きた密室殺人あった。
登場人物
ヘカーテ
ティターンズ所属バスク・オム旗下の特殊任務を行うための部隊。
クルーは戦闘部隊の人員を含め200名以上の乗員がおり、外部から派遣されたニュータイプ研究所の研究員も乗艦していた。
彼らが帯びていた任務とはガンダムウェアヴォルフの性能実験であり、極秘の任務ゆえに単艦で暗礁宙域での試験を行う予定であった。
その際に何故か待ち構えるようにいたエゥーゴによる襲撃と、
月外縁軌道で何故か極秘のはずの実験機の存在を知ってる素ぶりを見せるアクシズからの攻撃を受け、半ば宇宙の監獄と化した艦内で更なる異常事態が発生する。
なお第1話の最後に描かれた内容によると、この後に起きたある出来事によりヘカーテの乗員は1名を除いて全滅した模様。
ページトップのセリフはその生き残った誰かによる発言ではあるものの、その人物は大怪我を負ったのか、顔中包帯だらけ、移動式ベッドのようなものに拘束具で固定され、点滴を受けながら喋るたびに咳をするようなひどい状態であり、男女を含めて何者かは不明のままである。
ラセッド・グレンドン
階級は中尉。実験機ガンダムウェアヴォルフのテストパイロットであり、最初の殺人事件被害者。
コックピットに座ったままハッチも空いていないにもかかわらず、胸に銃撃を受けて絶命していた。
1年戦争時に地球で暮らしていた際、宇宙からジオンがいつコロニーを落としてくるのか不安に思っていたという。
その後そんなジオン相手に目覚ましい活躍を遂げた地球連邦軍所属のガンダムと、それに搭乗していたパイロットが自分とほぼ変わらない年齢でありながら圧倒的な操縦をしたこと聞き、いつか自身もガンダムのパイロットになることを夢見ていた。
それもあってか仲間たちのことを守るためにはなんでもしようとするきらいがあり、ガンダムという力に拘泥していた節も見せていた。
テストパイロットを任されるだけあってパイロット技能も高く、いわゆるガンダムパイロットという主人公らしい立ち振る舞いが描かれていたが、彼の死後にその素行を調査していく中で少しずつ彼の知られざる一面が見えてくることになる。
リュコス・フレイバーグ
階級は大佐。その有能さからバスク・オムに重用され、若くしてヘカーテの艦長を務める女性士官。
常に冷静さを崩さず、月外縁軌道まで行きながらも落ち着きを払っており、敵の対応からこの任務が内部の誰かから漏れた可能性を考え始めている。
漂流中のヘカーテで起きた事件に対して200人以上の乗員の中から犯人を見つけるなどは不可能と判断し、
時間を区切って犯人を多数決の投票で決めるという人狼方式で犯人を決めようと発案した人物。
戦争で何万人も死んでいる中で、高々1人を犠牲に残りの全員が共犯意識と結束と安心を得られるなら安いものと考えてこのような方法を考案したと笑いながら語っており、
人間らしさが妙に欠如した箇所がたびたび描かれている。
ラセッド、ロビソンやオクリーヌなどとはヘカーテ以前からの付き合いがある模様で、過去に何らかの出来事があった模様。
オクリーヌ・ワーグ
階級は中佐。へカーテの副長を務める黒髪ロングのワイルド系女性士官。
元は東欧の名門貴族であるワーグ家の出身らしく、上官のリュコスとはヘカーテに配属される以前から知古の間柄だったようである。
副長でありながら常に艦長であるリュコスに付き従っており、半ば私設秘書のような存在。
非常にガタイがよくMSのパイロット相手でも一括して黙らせるほどの絵に描いたような真面目軍人だが、
常に付き従っているリュコスには忠誠と同時に、他者から見てわかるほど異様に恐れを抱いている描写がなされている。
実際リュコスからは「いくら体を鍛えても臆病なお嬢様のまま」と言われており、リュコスが彼女の過去を何か知っていることをうかがわせている。
ロビソン・シュライカー
階級は大尉。MS部隊の隊長を務める初老の男性パイロット。
ラセッドから「オヤジ」と呼ばれ親しまれているほどの間柄で、長く共に任務をこなしてきていたらしい。
それもあってかラセッドからも相談されたり頼られていることが多かったが、彼の死後にその素行を捜査中全く知らなかったラセッドの側面を知り、動揺することになる。
ヴァーリ・キドゥ
階級は少尉。MS部隊の隊員である男性パイロット。
若干お調子者のパイロットで、連邦の勢力圏から遠く離れた宙域に漂流することになった事態にぼやいていた。
実はラセッドがメカニックのマカミに対して行っていた可愛がり、いわゆる軍隊式のいじめを漂流のストレスが発散できるならと見て見ぬふりをしており、
殺人が起きた際はマカミがその恨みから殺した物だと犯人と決めつけ、犯人投票されるまでの時間に他のクルーたちにその話を吹聴していた。
クロコッタ・ムアサド
階級は少尉。ヴァーリと同じくMS部隊の隊員である女性パイロット。
ヴァーリ共々ラセッドとはこの艦に搭乗してからの付き合いであるようで、そんな短い間では殺人に発展するレベルの怨恨などは抱かないのではないかと推理されているが、
実際はマカミやレトのような例もあるということで、短期間であっても何があってもおかしくないという結論がなされた。
レト・シーア
階級は少尉。MS部隊の補欠隊員である女性パイロット。
しかし肝心のMSの数が足りず、エゥーゴとアクシズとの戦闘には参加していない。
本人はラセッドに何度かセクハラを受けていると語っており、きちんと報いを受けさせるべく証拠(ボイスレコーダーに録音)を得ようとわざと二人きりになるように動いて見せたものの、
その瞬間にアクシズからの攻撃が発生したことでラセッドは死亡してしまったという。
ラセッドは艦という巣を守る狼だとしているが、自分やマカミたちはその巣に含まれていないと語っており、死んだ後までそんな奴に振り回されるのはごめんだと犯人を探す探偵役になる。
本人はなんとしても生きて帰る理由があると語っているが、その内容はまだ不明である。
マカミ・タルボット
階級は軍曹。MSの整備士を務める。「ハル」と名付けた黒い一つ目のハロを連れている。
ニタ研の人員がいなくなってからはガンダムウェアヴォルフの整備も彼が担当しており、アクシズからの攻撃の際は他に人員がいないこともあって彼がガンダムウェアヴォルフの封印を解除して出撃準備を進めた。
そのため生前のラセッドと直接最後に会っていたのは彼だけであり、ラセッドからの可愛がりの件を含めてマカミが犯人なのではないかという疑いが持たれるようになる。
しかしレトはあまりに不用心な彼が犯人の可能性は低いと考え、共にラセッドを殺した犯人捜査の協力を要請される。
アジャク・アンジン
無精髭をわずかに残す艦の軍医。特異な事態にもかかわらず動揺もなくラセッドの遺体を検分し、胸に銃撃の跡を発見した。
その際は旧世紀のミステリ小説みたいだと目を輝かせて語っていたり、死体を前にして平気で携帯食を食べたりと、
医者という役柄以上に死体に対して抵抗がなさすぎる描写がされている。
マリット・ネウリアン
アジャクの助手を務める衛生士の女性。
アジャクとは違い流石に異常な事態に動揺を隠せていなかった。
実はマカミとは同郷の幼馴染であり、この艦の配属で10年ぶりに再会したという。
マカミのことを臆病な大型犬ぽいところは変わらないと語り、家族を一年戦争で失ったマカミは幼馴染以外親しい間柄と呼べる存在が今はおらず、
自分が犯人として吊るされたらひょっとしたらマリットは悲しむかもしれないという思いからマカミは捜査に尽力するようになる。
ウルマ・フルール
艦のオペレーター。ラセッドとはいわゆる肉体関係にあったようで、彼女自身は結婚の約束をしていると語っているが、
それがどこまで本当か、また仮にそれが本当だとしてもラセッド自身に本当にその気があったのかは不明である。
彼の死後大きく取り乱し涙を流していたが、レトは痴情のもつれで彼女が殺した可能性も一考し、もしかしたらその涙も演技だったかもしれないと語っていた。
その後は「生きてちゃいけない奴を殺さなきゃ」とナイフを持って艦をふらつくなど、危険な状態にある模様。
アクシズ
月外縁軌道にいるヘカーテに攻撃を加えてきた部隊。
一応ティターンズとは同盟関係ではあるものの、お互いいずれ裏切り合うだろうということはわかっているようで、
ヘカーテ側も最初から救援のあてにはしていなかった。
何故か極秘の実験機であるガンダムウェアヴォルフのことを知っているようだが…。
強化人間のような危なげな隊員もいながら、艦乗組員のやり取りはヘカーテと比べて笑いもあるかなり穏やかな雰囲気。
クラート・ニクス
アクシズの騎士で有能なMSパイロットを選抜した「ロイヤルガード」に推挙されるほどの実力者。
エンドラやミンドラと同型の艦内では馬上鞭を振るい指揮をとっている。
騎士ではあるが本人は騎士道精神など興味なく、成果が上がれば闇討ちもありと考えているタイプで、
ヘカーテの攻撃も戦いではなく狩りと称していた。
一方的にいたぶるだけの狩はつまらないとしながら、ガンダムウェアヴォルフの戦闘を見た際狩る相手の質を違えていたことを素直に認めて、
次は自分が出なければならないと一旦撤退をするなど、指揮官としても相応の才覚を持つ。
カーシィ・ノール
ツーサイドアップに軍帽を被り、軍服とは思えないほどのヒラヒラのついた服を身につけた強化人間の少女。
(おそらく)副長から壊す専門と言われるほどの戦闘力を有している模様。
クラートには非常に甘い態度をしているものの、それ以外に小言を言われた際は強い攻撃的な対応をする。
しかし言う方もクラートも慣れているのか、そのような対応をされても割と平然としていた。
エゥーゴ?
極秘であるヘカーテ内の情報を持ってアクシズに接触を試みているものの、明確にエゥーゴ陣営の描写がなされておらず、どこまでがエゥーゴなのか実際の立ち位置が未だ不明な存在として描かれている。
ヴコドラク
エゥーゴの使者を名乗り、クラートたちに実際に接触をして来た人物。
名前は偽名であり、ヘルメットのように顔を全部を覆い隠す仮面をかぶっており、カーシィですら怪しすぎると警戒していた。
クラートらにウェアヴォルフに関する情報をかなり詳細に提供しており、何らかの形でティターンズの情報にアクセス可能な立場にあることがうかがえる。
登場機体
ヘカーテ
ガンダムウェアヴォルフ
元々のデザインから細やかな違いはあるものの、その姿はティターンズカラーのガンダムMk-Ⅳ。
あまり話題にされないマイナー機体だがここではある意味主人公機を務める。
その名前はもちろん「人狼」であり、艦長であるリュコスは「人を装い襲う卑しい怪物の名前」だとして悪趣味だと断じていた。
戦闘の際はアクシズの新型機であるガルスJの頭を素手でもぎ取り、インコムで完全に破壊するなど強力な性能がありながら、その機動はニタ研の許可がなければ解除できないようになっており、何らかの秘密があるような描写がなされている。
マラサイ
ゼブラゾーンでエゥーゴの迎撃にでたものの、その戦闘で全機破壊されてしまう。
ペイルライダーDⅡ
月外縁軌道に取り残されたヘカーテの正式な残存兵力。
それでもアクシズとの最初の戦いで一機撃墜され、戦力としてはかなり心許ない状況。
エゥーゴ
シュツルム・ディアス
マラサイ数機相手にしながらも、数の不利を物ともせず全滅させる。
その戦闘の余波でヘカーテ本艦にダメージを与えて推進機能や監視カメラ網も破壊。
艦の乗組員にも多数の被害者を出し、保安部の人員が戦死したことで艦内の治安維持活動は残されたクルーたち自身で行わなくなり、結果的に人狼ゲーム方式を採択することとなり、現状の原因を多数作ることになった。た。
またニタ研の人員が全滅したことで、彼らの立ち会いの元でなければ禁止とされていたガンダムウェアヴォルフの起動は基本的に不可能となったものの、有事にあたってその禁は破られることになる。
百式改
エゥーゴの新型として交戦。パイロットは不明ながらかなりの手練れのようで、
ロビソンも大きく苦戦し、部隊の一員でありラセッドの親友でもあるワヒーラが戦死することとなる。
この戦死にショックを受けたラセッドは次こそ自分も戦闘に参加するという気負いをする結果になった。
アクシズ
ガザC
作業用のMSを簡易改造することでやっつけ的に量産した戦闘MS。
格闘能力は低いが手持ちのナックル・バスターによる遠距離攻撃の威力は驚異的である。
戦闘力はともかく数を揃えることが目的という点では大成功であり、
遠距離で大軍が並んでくると侮ってはいけない相手。
ガルスJ
情報にない新型として登場し、ヘカーテのMS部隊に混乱を起こした。
ガザCの穴を埋めるように格闘能力が高く、迂闊に敵陣の懐に入ったクロコッタの駆るペイルライダーDⅡの頭部をパンチ一発で吹き飛ばした。
ギャン改
ガンダムの力を脅威と感じたクラートが、自らガンダムと相対するべく用意した彼の乗機。
関連項目
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