概要
「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ(鉄血のオルフェンズ)」の世界観を鉄華団とは異なる視点から描く外伝作品。タイトルに「月鋼」とある通り、月とその周辺のコロニー群が舞台となっている。
マフィアの内乱を描いた作品であり全体的にマフィア映画等の影響が色濃く、登場人物もイタリア系の名前を持つ者が多い。
「鉄血のオルフェンズ」本編と同じくシーズン分割制を採用しており、第一期は2016年5月から9月まで月刊ホビージャパン及び月刊ガンダムエースで連載。第二期は2017年5月より展開されている。
ホビージャパン誌上では模型を交えたフォトストーリーが展開され、ガンダムエースではそれをベースにしたコミカライズが行われている。
シナリオは「鉄血のオルフェンズ」本編の脚本、設定考証を務めた鴨志田一。コミカライズは寺馬ヒロスケ及び団伍が担当する。
あらすじ
月にほど近いアバランチコロニーを仕切るマフィア組織「タントテンポ」のボスが何者かに暗殺されたことにより、組織の次期頭目を巡る抗争が勃発した。
跡目の候補に挙がったのはボスの一人娘リアリナ・モルガトン。
強大なタントテンポのちからを奪おうと多くの人間がリアリナの命を狙う中、二人の少年「アルジ・ミラージ」と「ヴォルコ・ウォーレン」だけが彼女に味方した。
彼らはリアリナを頭目に据えるため、襲い来る敵を迎え撃つ。
だが、アルジとヴォルコには、それぞれ本当の目的があった。
「家族を殺したガンダムを破壊すること」
そして
「家族が残したガンダムを修復すること」
登場人物
※担当声優はゲームでの配役
メインキャラクター
CV:安田陸矢
シャトル事故で右腕と家族を失い、それ以来傭兵として生きてきた少年。
タントテンポの頭目、テッドの暗殺を請け負うが、逆に命を狙ったテッドに命を救われ、テッドの恩に報いる為にガンダム・アスタロトのパイロットとなった。
育った環境もあって無愛想な態度を取る事が多いが、一度受けた恩義には報いる義理堅い性格の持ち主。実は女性に免疫がなく視線を合わせる事が出来ない。
- ヴォルコ・ウォーレン
CV:興津和幸
タントテンポの構成員。ギャラルホルンに名を連ねる一家門ウォーレン家の出身だが、10年前に彼の父親が起こしたとされる経済圏との不正取引によって家族と財産の全てを失った。
ガンダム・アスタロトも本来はウォーレン家によって管理・保管されて来た物であり、家の象徴であったアスタロトを本来の姿に戻す事に執着する。
脳に記憶チップを埋め込む手術を行っており、この恩恵によって常人よりも記憶力に優れ、過去のデータからアスタロトの装備の復元を行っている。
しかし、記憶チップの埋め込みによる副作用によって身体能力、空間認識能力が大きく低下しており、歩行するにも杖が欠かせない。
テッドの死後アスタロトをアルジに託し、彼を「野良犬」と呼びながらも陰ながらにサポートする。
- リアリナ・モルガトン
CV:種﨑敦美
テッド・モルガトンの一人娘。17歳。
タントテンポから離れ、ドルト・コロニー群で学業に励んでいたがテッドの死を切っ掛けに組織の跡目争いに巻き込まれる。
テッドの遺言に従い彼女を救出したアルジとヴォルコを自身の護衛として雇い入れ、父の仇を打つ為にタントテンポの利権争いの只中に飛び込んでいく。
礼儀正しく、相手の目を見て話し合う事を信条としており、女性とまともに目を合わせられないアルジに対して不満を抱いている。
タントテンポ
- テッド・モルガトン
「ダディ・テッド」の異名で呼ばれるタントテンポの頭目。右腕にはアルジと同じ型の義手を装着している。
ウォーレン家とは付き合いが深かく、家を取り潰されたヴォルコを組織に迎え入れ、彼に代わりアスタロトのフレームを買い取った。
ギャラルホルンに対して上納金を支払う事で良好な関係を維持していたが、その裏で自身の右腕として働いていたロザーリオの不正に気付いた為、彼に命を狙われる。
自らを暗殺しに来たアルジを、モビルスーツを持ち出した別の刺客から庇い、アルジとヴォルコにリアリナを託して命を落とした。
- ジャンマルコ・サレルノ
CV:武内駿輔
タントテンポ輸送部門の責任者。幹部会を取り仕切る六幹部の一人でもある。29歳。
ヴォルコ曰く彼の本質は戦いと女にあり、ヒューマン・デブリや容姿の整っていない者であっても女性を丁重に扱う事を信条とし、圏外圏では海賊の襲撃に対して自らモビルスーツを駆り戦う武闘派として知られる。
ロザーリオによってテッド暗殺の濡れ衣を着せられ彼と対立するが、本人は現在の地位に満足している為、次期頭目になるつもりは無い。
搭乗機は鉄華団の鹵獲したグレイズをテイワズ経由で購入し独自の改修を施したリーガルリリー。
- ロザーリオ・レオーネ
CV:辻親八
タントテンポの銀行部門「ウェスタバンク」の頭取。ジャンマルコと同じく六幹部の一人。
テッドの右腕として組織の発展に貢献して来たが、その裏でギャラルホルンの役人と結託し組織の資金を着服しており、それを咎めるつもりで居たテッドを暗殺した。
テッドの死後、暗殺の罪をジャンマルコに着せ、次期頭目になる為にリアリナを確保する為に暗躍する。
銀行の頭取という役職にありながらモビルスーツパイロットとしても優秀。主な搭乗機はガンダム・ウヴァル。
- ナナオ・ナロリナ
CV:大地葉
ロザーリオに仕える部下の一人。妖艶な雰囲気を漂わせる美女。
ある時はスパイ、ある時はメイド、ある時はモビルスーツパイロットとしてロザーリオを支えるが、その正体は謎に包まれている。
ロザーリオ戦の後、パーツの大部分を回収したアスタロトを奪い去った。
主な搭乗機はグレイズ・フレームをベースとした専用機アードラ。
- サンポ・ハクリ
CV:鈴木崚汰
傭兵業を営むヒューマン・デブリの少年。ユハナ・ハクリの兄。17歳。
「白狸」の刺繍が施されたニット帽がトレードマーク。大金を手に入れて自分達の身分を買い戻す事を夢見ているが、その一方で唯一の肉親であるユハナの身を案じている。
鉄華団との戦闘で損傷したマン・ロディを改修したハクリ・ロディを駆り、持ち前の沈着冷静さを以って妹をサポートする。
ロザーリオの命令でリアリナを襲撃するが、アルジのアスタロトの前に敗北。その後ジャンマルコに拘束され、ユハナを人質に取られる形でリアリナ一行を救出する為に行動する事になる。
ロザーリオ戦後は元の傭兵に戻り、タントテンポに保護されたミーナ・セルリアン奪還のためにアルジと対峙する。
- ユハナ・ハクリ
CV:小松未可子
サンポの妹。16歳。兄と同じく専用にカスタマイズされたハクリ・ロディを駆る。
冷静な兄とは対照的に好戦的な性格の持ち主であり、戦闘では前衛を務める。また、女性としての自覚は薄く、異性の目をあまり気にしない一面も見られる。
兄と同じくロザーリオの命令でリアリナを襲撃するが、アスタロトの攻撃を受けて負傷。その後ジャンマルコに拘束され、兄を従わせる為の人質として利用されるが、その後ジャンマルコやサンポとともにアルジ達と共同戦線を張る。
- ブブリオ・インシンナ
タントテンポの一員にして、かつてテッドの相談役を務めていた老人。リアリナにとってはアルジやヴォルコ以上に信頼できる男であったが、事前にロザーリオに脅迫されており、一行をアバランチ1に向かう様に仕向けることになってしまう。
ギャラルホルン
- ヴィル・クラーセン
没落したウォーレン家に代わり、アバランチ・コロニーの管理を任されているギャラルホルンの貴族。
ロザーリオを裏で操り、今回の争乱を引き起こした黒幕にして、ウォーレン家の破滅を招いた張本人。
- ジルト・ザルムフォート
月と火星の往還航路を管轄に置くザルムフォート家の当主。
タントテンポとの交渉において主席交渉官を務める。しかし、彼もまたアフリカンユニオンとの不正取引の疑惑が持たれており、実の娘を使いその罪をナディラ家へ着せた。
- デイラ・ナディラ
CV:上田麗奈
ナディラ家の当主。父の代にジルトによって不正取引の濡れ衣を着せられ、家の象徴であるガンダム・グレモリーと共に隠遁していた。
- ジジル・ジジン
CV:土師孝也
ギャラルホルンの内部統制部隊「オレルス」の指揮官。
歴戦の戦士であり、ヴァルキュリアフレーム機であるオルトリンデを駆る戦闘力も相俟ってアルジを苦戦させている。
その他の登場人物
- ザザ・フォッシル
CV:八代拓
ガンダム・フレームの一機であるガンダム・ダンタリオンを駆る傭兵。
タントテンポに保護されたミーナを狙い、ハクリ兄妹と共にアルジ達を襲撃する。
粗野だが育ちの良さを感じさせる物言いと、名前を聞かれた際の受け答えから身分を偽っている事が示唆されているが……?
- ミーナ・セルリアン
アルジ達が保護した記憶喪失の少女。
様々な組織から身柄を狙われており、追手に追われていた所をタントテンポによって保護され、行動を共にする。
アルジの妹と同じ名前なので、意識される事も多い。
- キム・セルリアン
ミーナの姉を自称する少女。元はドルトコロニーのスラムで若い女達をまとめ上げていたが、暴動で仲間を失った過去を持つ。
ミーナと共にタントテンポに保護されるが、妹であるミーナを常に意識し、守ろうとしている。
気が強い性格で、アルジは一度彼女に敗北させられている。
登場メカニック
ガンダム・フレーム
タントテンポ
ギャラルホルン
その他
専門用語
- タントテンポ
月のアバランチコロニー群を拠点とする複合企業。
月を中心とした定期航路の管理を行う他、輸送部門、銀行部門といった複数の関連企業を抱え込む。その一方で木星圏のテイワズにも似たマフィアとしての一面も持ち合わせているが、日本のヤクザ然としたテイワズとは異なり、風習などは南欧、特にイタリア系マフィアに近い。
圏外圏へもその勢力を伸ばしている事もあって独自にモビルスーツやモビルワーカーの配備を進めているが、その一方で頭目であるテッドの姿勢からギャラルホルンに対して上納金を支払う事で事業の自由度を保っている。
ギャラルホルンに巨額の資金が吸い上げられる事に不満を持つ者も多く、テッドの死後は組織の運営方針と次期頭目の座を巡って幹部達の派閥争いが勃発する事になる。
- ウォーレン家
かつてギャラルホルンに名を連ねていた名家の一つ。ヴォルコの生家。
アバランチコロニーからの提供資金を管理していたが、10年前にヴォルコの父が起こしたとされる地球経済圏との不正取引によって取り潰しの憂き目に遭った。
厄祭戦終結直後に月面の探査を行い、クレーター内に放置されていたガンダム・アスタロトを発見・回収。その後300年もの間アスタロトを家の象徴として管理・保管して来たが、取り潰された家の機体を引き取る者はおらず、アスタロトはアンダーグランドな市場を彷徨う事になった。
- 記憶チップ
ヴォルコの脳に埋め込まれた、様々な情報が記録されているチップ。ガンダム・アスタロトの整備記録をはじめ十年前のニュース情報からエイハブ・ウェーブの固有周波数など様々な情報が収められている。
ヴォルコはこのチップの恩恵で膨大な知識を得ており、ガンダム・アスタロトの修復やアルジの戦闘のサポート等様々な局面に役立てているが、これを埋め込む手術の影響で身体能力や空間認識能力が著しく低下している。
- ザルムフォート家
ギャラルホルン内でセブンスターズに次ぐ名家。
月と火星の定期航路を管理しているが、その一方で長年アフリカンユニオンと癒着関係にあった。
イズナリオ・ファリドの失脚とマクギリス・ファリドの台頭で内部監査の目が厳しくなった事を契機に、その罪をナディラ家へ被せる。
- オレルス
代々ナディラ家によって独立管理されているギャラルホルンの内部統制部隊。
ヴォルコいわく組織内を対象とした掃除屋。
ナディラ家の不正疑惑以降、部隊の指揮権はザルムフォート家の預かりとなっている。