機動武闘外伝ガンダムファイト7th
きどうぶとうがいでんがんだむふぁいとせぶんす
コミックボンボン増刊号で1996年に連載された機動武闘伝Gガンダムの外伝。
第13回ガンダムファイトを描いた「Gガンダム」本編より以前の時間軸を描いており、第7回ガンダムファイトで起きた出来事を主人公シュウジ・クロスらシャッフル同盟の視点で描かれている。
本作は、Gガンダムが放送後も人気が衰える気配がなかったことから企画された作品であり、放送から約1年後の1996年に連載開始された。当初はプラモデル企画として展開される予定で、本編でデザインを手がけた逢坂浩司、大河原邦男によるキャラクター・メカニックデザインが行われたが、季刊誌であるコミックボンボン増刊号での漫画連載だった事から各種媒体への露出不足により人気は伸び悩み、さらに96年は既にテレビではガンダムWからガンダムXへの移行が始まるという年で、タイアップとしてはとっくに旬を過ぎたものであった。結果プラモデル化は行われずに物語は完結を迎えている。
また、同時期に展開された他のガンダム外伝作品とは違いSDガンダム GジェネレーションやガンダムVSガンダムシリーズなど他メディアへ露出する事もなく、外部出演はガンダムEXAへの客演のみに留まっている。この反省を踏まえてか、ガンダムWの外伝ストーリーとなったG-UNITは本誌での掲載、プラモデルとの連動展開などが早期から図られている。
作者はおとといきたろう。当初はGガンダム本編でキャラクターデザイン原案を担当した島本和彦、あるいはGガンダム本編のコミカライズを担当していたときた洸一によるコミカライズが予定されていたが、両者ともに多忙の為、島本のアシスタントであるおとといが担当する事になった。ちなみにときたはそもそも依頼が来ている事すら知らない内に担当編集が断っていたとか(ただし、ときた本人も実際多忙だったので本作に関わるのは無理だったであろう事を認めている)。
なお、島本はその後ガンダムエースにて「超級機動武闘伝Gガンダム」を連載し、Gガンダムのコミカライズを行う事になり、ときたは「ガンダムEXA」でシュウジを登場させる事になる(本作に関われなかった事もあって、EXAでシュウジをノリノリで描いたそうである)。
また、2024年にときたが執筆したコミックボンボン連載版Gガンダムの再編集版『機動武闘伝GガンダムRe:master Edition』の1・2巻に掲載されている書き下ろし『アルティメットバトル(前・後編)』においてカラトが起動させたプログラムを使い旧シャッフルの5人(シュウジ、マックス、アラン、ナシウス、トリス)と5人の搭乗機(ヤマトガンダム、ガンダムフリーダム、コウガガンダム、エッフェルガンダム、モスクガンダム)のデータさらにデビルガンダム(アルティメットガンダム開発用プログラムを使ったシミュレーターAIが暴走した物)が現れドモンとシュウジの共闘を描かれている。
FC32年、地球をリングに宇宙の覇権をかけて、第七回ガンダムファイトが始まった。
ネオジャパンから出場するのは最新のMFヤマトガンダム。Gファイターは、東方流拳法の達人、シュウジ・クロスだ!!
- シュウジ・クロス
主人公。ネオジャパン代表のガンダムファイター。
強者との闘いを喜びとし、魂のこもらぬ攻撃には決して屈しない正統派ファイター。
東方流拳法の達人で、生身でモビルファイターを圧倒するだけの格闘能力を持つ。
自身の力に絶対の自信を持つが、ウォルフに慢心を指摘され、ギアナ高地で修行を行い、「流派東方不敗」を完成させる。
後のシャッフル同盟のキング・オブ・ハート、東方不敗マスター・アジア。
搭乗機はヤマトガンダム。
- マックス・バーンズ
ネオアメリカ代表。
閃光(ライトニング)マックスとも呼ばれるファイターであり、兄の作ったガンダムフリーダムでアメリカンドリームを掴むべく奮闘する熱血漢。
後のシャッフル同盟クイーン・ザ・スペード。
搭乗機はガンダムフリーダム。
- アラン・リー
ネオチャイナ代表。
修行僧のような姿で、顔に紋様を描いている長身の男。
シュウジとマックスのファイトを目にした事から彼らと知り合う。他の4人のファイターらがウォルフに一蹴される中、ただ一人ウォルフに「出来る」と称賛されるだけの実力者。
悪党には容赦無く、カオスと通じたネオインドのファイターをガンダムごと両断している。
後のシャッフル同盟クラブ・エース。
搭乗機はコウガガンダム。
- ナシウス・キルヒャ
ネオフランス代表ファイター。
「音速の貴公子」の異名を取る貴族風の青年。
政府の命により謎の超兵器について調査を進めていた過程でシュウジ達と知り合う。
他のファイター達がウォルフに敗北し、各地で修行を行う中でも調査を続け、カオスに通じる重要な情報を手に入れる。
後のジャック・イン・ダイヤ。
搭乗機はエッフェルガンダム。
- トリス・スルゲイレフ
ネオロシアのガンダムファイター。
ネオロシア軍に所属する女性下士官。
祖国の為に対戦相手の装甲を大幅に弱体化させるアブドメンビームを使ってでも優勝という任務の遂行を目指していたが、自分の闘いがカオスと通じ権力を手に入れようとする一部の軍人のためにしかならないと指摘され改心。愛機であるモスクガンダムのアブドメンビームを封印した上でシュウジ達の仲間となる。
後のブラック・ジョーカー。
搭乗機はモスクガンダム。
- ウォルフ・ハインリッヒ
ネオドイツのガンダムファイター。
最強と噂される仮面の男。己の技に慢心するシュウジを一喝してその未熟さを説き、その後熱い友情で結ばれる。
独自にカオスについて調査を進めており、シュウジらがコロニーが狙われているという情報を得た際には決勝大会でカオスの息がかかったガンダムファイターと闘うという使命を託され、その全てを退けて第7回大会で優勝を果たす。
搭乗機はカイザーガンダム。
彼のその後については語られていないが、一説には第13回大会に出場したシュバルツ・ブルーダーその人ではないかといわれているが、元々年齢が合わず、後に公式外伝で否定されることに。
- カオス
各国のガンダムファイター達を配下とする謎の組織及びその首領。
配下のガンダムファイターとその所属国にカオスシステムと呼ばれる特殊なシステムと特殊武装アブドメンビームを供給し、世界征服を企てる。
配下のガンダムファイターをガンダムファイト決勝大会に多数参加させ、更に自身の息がかかっていない国のコロニーを人質にする事で世界征服に王手をかける。
しかし、南極での決戦で自身の乗る大型モビルアーマー「エレメントカオス」を破壊されカオスは死亡、組織も壊滅した。
本作の設定を裏設定として語る風潮があるものの、映像化作品を公式とするガンダムシリーズにおいて、この作品における設定は概ね取り扱われていないのが現状である。
また、本作を歴史の一つとして組み込もうとすると、しっくりと来ない矛盾点も多い。
- 旧シャッフル同盟の中には、明らかに新生シャッフル同盟と国籍を無理矢理合わせられたようなキャラがいる(特にマックス・バーンズ→クイーン・ザ・スペード)。シャッフル同盟には当然国籍の制限などはない。
- 国外追放となったという設定の東方不敗が、第13回大会において新宿に降り立っているが、これ自体が大事件になってもおかしくない。未来世紀の国家は威信を傷つける行為に対して原則としてかなり厳しい。シュウジ=東方不敗だとすれば、敵前逃亡としてネオジャパン的にはかなりのお尋ね者であるため、緊急時とはいえども何か手を出したり、反応がなければおかしい。だが、本編ではお咎めや対処どころか、軍関係者からはこれといった反応もない。
- 一応、ネオジャパン政府がデビルガンダムの捜索に注力していたからあえて放置されていた、現在の地球圏はネオホンコンの統治下にあるため手が出したくても出せないとも考えられなくもない。また、天下無敵の東方不敗のことなので、秘密裏に追っ手を倒していたとも考えられなくもない。が、それにしても軍人からの反応自体が薄く、考察を挟んで矛盾の軽減を試みてもいろいろと無理があるのは否めない。
- 本編で東方不敗はドモンに対し「貴様の祖国ネオジャパンの京都ですら…」と、ドモンの祖国として他国のことのように話している。東方不敗自身がネオホンコンに移籍した理由を考えればそれほど不思議ではないともいえるが、やや他人行儀すぎるともとれる。
- ウォルフ・ハインリッヒが後の(本物の)シュバルツ・ブルーダーではないかという話がある(元のファイターが壮年であったため)。これらは俗説として広まっているが、あくまで考察や想像の域を出ないものである。元優勝者である以上、国的にもアピールする方が都合がいい(チャップマンなど)ため、そもそも名前を変える動機が見当たらない。
本作は準備期間がそこまで充実していなかったように思われるため、これらの矛盾の検証が不十分だったことは容易に想像が付く。
どの道、アニメ本編時点ではこれらの設定は作り上げられていなかったと考えるのが自然である。
ただし先の通り本編と同じキャラクターデザイン・メカニックデザインが関わっているように、まったく公式から外れてしまった作品でもない。
実際、同じ漫画作品で非公式すれすれの設定も盛り込んだ作品とはいえ、EXAへの出演も間接的に果たしている。
原作をベースとしたメディア展開による創作物は、二次創作的側面も少なからず含んでいる。その中で原作との矛盾や違和感や、意図的な設定変更などが生じたりすることは、多かれ少なかれ起き得るものである。実際、原作をベースにしつつ作者の手によって独自に展開や設定を考えて作られた作品も存在する。
なおかつ本作はあくまで外伝であり本伝ではないので、真面目に捉えずにあくまでこういうことが「裏にあったかもしれない」というIF、可能性の一つという程度の認識で、深く考えずに読むほうが良いだろう(東方不敗はスパロボでは宇宙人扱いにすらなった御人である…)。
ただしやはり無理筋も多く存在し、公式的にも曖昧な扱いとなっているこの設定を好まないファンもいるため、安易に裏設定と語るのは軽率であり、論争の火種になる可能性もある。
なお、スーパーロボット大戦Tではこの設定を採用し、旧シャッフル同盟とエルドラチーム、大河幸太郎、火麻激、旋風寺裕次郎、そしてオリキャラであるダイマ・ゴードウィンが、東方不敗がシュウジの頃に戦友だったという事になっている。また、Gジェネクロスレイズではかつての愛機として、東方不敗をゴッドガンダムに乗せてゴッドフィンガーが使わせるとヤマトガンダムの必殺「サンシャインフィンガー」を使う。
そして2024年、本作の設定を全て否定する過去設定を内包した公式外伝・天地天愕、英雄変生が公開され、本作はいよいよもってパラレルワールドの様相を呈することになった。
しかし一方において同年のときた洸一の漫画版では先の通り劇中で取り扱われているように、矛盾が明確となった現在でも本作の支持率は内外で高いままである。