概要
冒険王にて1964年11月号から1965年12月号まで連載された、松本零士の漫画作品。
超技術の数々が盛り込まれた潜水艦「スーパー99」と、世界征服を企む謎の軍隊「ヘルメット党」の戦いを描いた作品である。
ミリタリー色の濃い作風ではあるが、現実を超えた科学技術が多数登場するSF色の強い作品でもある。著者の松本零士は「機械への限りないあこがれをもって描いた作品」と語っている。
2003年にテレビアニメ化されている。
あらすじ
沖博士は長男の五郎と共に、バチスカーフ「くろしお」で日本海溝へ調査潜航した。しかし、そこで超深海に存在する筈の無い怪潜水艦の攻撃を受け、二人は行方不明になってしまう。
残された次男のススムは、くろしおを攻撃した張本人にして世界征服を企む謎の組織「ヘルメット党」の存在を知ることになる。ススムは出発直前に父から地下工場の鍵を託されており、その鍵を使って開けた扉の先には、沖博士が秘密裏に建造した潜水艦「スーパー99」が隠されていた。
ヘルメット党を倒すために、海上自衛隊からスーパー99の乗員が選抜された。99の秘密を唯一知るススムも艦に乗り込み、家族の仇討ちと世界を守るためにヘルメット党との戦いに身を投じる。
登場人物
沖海洋研究所
沖博士の研究所。世界一の海洋研究所とも呼ばれる。
世界初の1万メートル潜航可能なバチスカーフ「くろしお」もここで開発された。
表向きは海洋研究施設だが、地下工場では秘密裏に最強の潜水艦・スーパー99が建造されていた。99の進水以降も乗員達の作戦基地として運用されている。
主人公。沖博士の息子で五郎の弟。年齢的にはまだ少年だが、礼儀正しくも勇敢な熱血漢。
父が残した手紙の指示に従いスーパー99の秘密書類を全て暗記した後に焼き捨てたため、99の全機能を知る唯一の人間となった。
父から託されたスーパー99と、兄から託された九九式ライフルを武器に、ヘルメット党との戦いに挑む。
- 沖博士
ススムと五郎の父。千年に一人とも称される天才科学者。
ヘルメット党の脅威を察知しており、ヘルメット党に対抗する切り札として秘密裏にスーパー99を開発。ススムにその鍵を託した。
「くろしお」で日本海溝の深海に潜航したが、ヘルメット党の攻撃を受け行方不明になってしまう。
- 沖五郎
ススムの兄。父と共にスーパー99を開発した共同設計者。第二次世界大戦では南方の戦場を転戦し、九九式ライフルのお陰で生還した。戦後苦心してスポーツ用改造型の九九式ライフルを入手しており、宝物のように大事にしていたが、日本海溝への出発前にススムに託した。
父と共に「くろしお」で潜航したが、ヘルメット党の攻撃で行方不明になってしまう。
- 大山
海上自衛隊一等海佐。スーパー99の艦長になった。五郎の親友であり、世界一の潜水艦乗りと称される。
潜水艦戦術のみならず古生物にも造詣が深い。
- 古井
海上自衛隊三等海佐。スーパー99の副艦長になった。あだ名は「タヌキ」。九州弁訛りがある。
第二次大戦で米海軍から恐れられた歴戦の潜水艦乗りだが、普段の振る舞いは人情味溢れるムードメーカーであり、コメディリリーフ的な役回りが多い。
ヘルメット党
世界征服を企む秘密組織。党員の制服を見る限り、ナチス・ドイツの流れを汲む組織と思われる。
ドイツ人以外にも様々な国の人間が参加しているが、党員はいずれも祖国を捨てており、総統も「強いて言えばヘルメット党が新しい祖国」と明言している。
日本海溝中央部の海底に本部基地が隠されており、ヘルメット党の潜水艦はいずれも1万~2万メートル以上の超深海を潜航できる能力を有している。本部基地の最下層には最重要機密が隠された「秘密室」が存在し、総統以外の者が入った場合は死刑に処される。
- ルドルフ・ヘチ
ヘルメット党の総統。
アドルフ・ヒトラーを尊敬しており、ドイツ生まれと語っているため元ナチス党員と思われる。
「何でも適当に決める」と言い放ち、決定したことは徹底的に実行する容赦無い人物。無関係な艦船を沈めて死者を出す作戦を立てたり、逆らう者を奴隷にするなど残虐な性格である。
理由は不明だが、秘密室に通信が入ると大急ぎで秘密室に駆け付ける。
- ワルター・フォン・モーゼル
ヘルメット党海軍提督であり潜水艦隊司令長官。
第二次大戦時代からドイツ国防軍の潜水艦戦で活躍してきた老将。
「勝利か、しからずんば死か」が信条であり、これまで決して降伏したことは無い。しかし同時に、間違ったことのためには戦わないという信念も持つ。
- カルカノ
ヘルメット党海軍大佐。潜水艦U-888の艦長。イタリア人。ヘルメット党員とは思えない程の小心者。
- ヘルメン
ヘルメット党の軍医。肝は据わっているが、人を食ったような性格の皮肉屋。
- クロイツ・H・ハイムマン
アクアラングで顔を隠した謎のダイバー。日本一の鉄砲狂を名乗り、ススムの九九式ライフルも欲しがっていたが、兄の形見と聞くと潔く諦めている。
ヘルメット党の脅威を把握しているらしく、何度かススムとスーパー99を危機から救っている。
その正体はヘルメット党日本支部長。何故ヘルメット党を妨害するような行動をとるのかは不明。
スーパー99
沖博士と五郎が秘密裏に開発していた世界最大の潜水艦。
五郎の愛銃である九九式ライフルが名前の由来である。
地球上のいかなる深海でも潜航できる水圧耐性をはじめ、あらゆる面で地球上に現存する全ての潜水艦を凌駕する性能を誇り、加えて他の潜水艦には無い特殊な装備を多数搭載している。
但し、スーパー99の全ての秘密を知っているのは開発者である沖博士と五郎と、二人が残した秘密書類の内容を完全暗記したススムの3名のみである。
諸元
全長 | 全幅 | 排水量 | 水中速力 | 水上速力 | 潜航深度 |
---|---|---|---|---|---|
約120m | 約16m | 約12500t | 60ノット以上 | 50ノット以上 | 2万m以上 |
この諸元はあくまで戦闘を通してヘルメット党側が推定した数値であり、正確な数値は判明していない。
装備
- L動力機関
沖博士が開発した新型エンジン。原子力よりも強力かつ安全で、放射能は発生しない。
燃料補給しなくても半永久的に稼働できる。
- 放射能探知機
海中の放射能を探知する装置。ヘルメット党の原子力潜水艦は国際協定に背いて放射性廃棄物をそのまま海中に撒き散らす構造になっているため、放射能探知機で位置を特定することができる。
- 対潜ミサイル
後部上甲板のVLSから発射するロケット魚雷。L動力を爆薬に変化させた弾頭を持ち、威力は高い。
発射後は海中から海上へ飛び出し、空中を飛行して敵潜の真上から海中に再突入して命中するミサイルであるため、ハイドロフォーンで音を探知される心配は無い。
- 非常制動魚雷
岩壁などに突き刺して艦体を固定する特殊装備。
海底海流に流されて止まらなくなった時に、岩に衝突することを回避するために使用する。
- 磁力吸着式時限魚雷
命中した時点では爆発しないが敵艦に磁力で接着され、指定した時間が経過すると爆発する。
一度敵艦にくっ付いた後も99側の遠隔操作で切り離すことが可能。敵艦を降伏させ拿捕するための装備。
SUBMARINE SUPER 99
2003年5月から放送されたテレビアニメ。全13話。
人物設定などに大幅なアレンジが加えられ、本作でスーパー99が戦う敵勢力は「海洋帝国」になっている。
登場人物
スーパー99
主人公。両親が早逝し祖父と兄に育てられた。まだ遊びたい盛りの高校一年生だが、父譲りの知性と兄譲りの正義感を併せ持つ。
祖父と兄が行方不明になったことを悲しむが、真相を突き止めるために海洋帝国との戦いを決意する。
- 沖五郎(声:水島裕)
進の兄。両親の死後は進の父親代わりを務めつつ、沖海洋研究所の副所長として祖父を支えている。
強い正義感の持ち主。政府の極秘依頼で日本海溝付近の海難事故を調査していたが、海洋帝国の攻撃で行方不明になってしまう。
- 沖重造(声:長克巳)
進と五郎の祖父。海洋学博士。沖海洋研究所の創設者にして所長。
副所長だった息子・一郎の死後も生命の起源を追う研究を続けていたが、五郎と共に日本海溝付近の調査に赴いた際に海洋帝国の攻撃を受け行方不明になってしまう。
- 大山築(声:森川智之)
海洋国防隊の潜水艦長。
国防省と沖海洋研究所による共同極秘作戦の実行指揮官に抜擢され、スーパー99の艦長になる。
- 森木深雪(声:堀江美都子)
スーパー99の分析士。五郎と惹かれ合う。
- 田貫虎吉(声:中博史)
スーパー99の機関長。演じる中博史氏はナレーションを兼任している。
海洋帝国
海洋帝国の国民の大半は、人類に似た外見・同じ起源を持ちながらも独自進化を遂げた水棲人である。
- ヘル・デスバード(声:沢木郁也)
海洋帝国の総督であり帝国軍の最高指令官。
水棲人でないのにもかかわらず海洋帝国の実権を掌握しており、実質的な支配者となっている。
- ゼ・ストレート(声:井上喜久子)
水棲人だが、現在はヘル総督の秘書として仕えている。
- ゼ・ストロネストロ(声:成田剣)
海洋帝国のシンジケートで工作員のチーフを務める水棲人。
既に事故死したロイター通信特派員の名を騙って地上に潜伏し、スパイ活動を指揮している。
- ゼ・ストロン(声:成瀬誠)
精悍な容姿を持つ水棲人の少年。ストロネストロの部下として働く工作員。
- ゼ・ストロガー(声:雪乃五月)
清楚な美貌を持つ水棲人の少女。ストロネストロの部下として働く工作員。