CV:柏倉つとむ(コミックCD)
概要
魔界をも震撼させる程の力を持つ血と破壊と混沌を司る破壊神で、『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』におけるラスボス。
余りにも強大な力を持つため、自ら異空間にその身を潜ませていた(魔界を追われ空間に封印されていたという説もある)。
しかし、物語が始まる1万2千年前に、世界を我が物にしようという野心を抱く古代ムー帝国の魔導士にして科学者、そして太陽王ラ・ムー(後のタオ老師)の弟・ゴルゴナ(後の冥王ゴルゴナ)によって召喚される。
ゴルゴナ達の、「世界を支配した後、その世界の半分を渡す」代わりに、世界樹のエキスを分析して創り出した細胞を使った不死の肉体を得る、という交換条件を飲んで実体化する。
そして生き神としてムー帝国を恐怖政治で支配するも、実際の所は世界征服には全く興味は無く、ある目的(後述)のために着々と準備を密かに推し進め、ある日を境に暴走。
一夜にしてムー帝国を崩壊させ、暫く身を潜める。
数年後、再び姿を現したところを精霊ルビスの放った究極の大転移魔法「オメガルーラ」によって本体である精神を宇宙の彼方へ飛ばされてしまい、肉体は闇のオーブに封印される。
しかし、大魔王ゾーマによってルビスが封印されてしまったため、復活した冥王ゴルゴナによってゾーマが倒されてから数年後に、その精神が再び召喚されて現世に舞い戻り、世界に破壊と混乱をもたらす為の活動を開始する。
真の目的(ネタバレ注意)
上記にある通り、異魔神の目的は世界の征服ではない。
その真の目的は自身を疎み、異世界へと追放した精霊ルビスへの復讐である。
その手段として自身の聖核(セイントコア)と世界樹のそれを融合・臨界させて世界を破壊し、再び原初(カオス)へと戻す事。ようは世界を消滅させることが真の目的である。
その為にゴルゴナの野心を利用し、魔王軍メンバーを甘言で欺きつつ、自身の野望達成のため着々と時を待ち続けてきた。
そしてジャガンの暴走によって、遂に肉体を取り戻した異魔神は目的のために世界各地を襲撃、人々を虐殺して魂を奪い「幻の月」を作成したり世界樹を復活させる等、順調に事を運ぶが、アルス達の決死の活躍によって発動したオメガルーラにより再び肉体は封印され、精神はかつての様に宇宙の彼方に飛ばされたかと思われた。
しかし実は、密かに自身の精神をアランの体に移し難を逃れていたため、アランの体を乗っ取ることで再び復活。時が熟したため、世界を消滅させるため、世界樹の元へと向かうも、精霊ルビスの命がけの行動により世界樹が消滅していたため、目的が達成できない事を悟り激昂、闇のオーブの封印を解いて真の姿である最終形態となり、半ばヤケクソ兼八つ当たりでアルスたちのとの最終決戦へと挑む。
当初はその圧倒的(?)な力で次々とアルスたちやその仲間たちを追い詰めて行くが、アルスたちが今までの冒険で育んだ絆によって集った人々の尽力により次第に追い詰められて行き、産まれて初めて恐怖感を抱く。
最後は、アルスの元へ集まった世界中の人々の魔法力を結集させたミナデインの前に敗れ去り、その際「自らを破滅させる事こそが真の目的だったのかも知れない」と呟く。
散々の大量虐殺をしでかした後の、この身勝手な一言に激怒したアルスに剥き出しとなった聖核(セイントコア)を破壊されるが、そこへムラクのお札から飛び出た「世界樹の種」と接触。
その肉体は、瞬く間に新たな世界樹の母体となる。
完全版において、肉体が世界樹の母体となった瞬間に現れた精霊ルビスの言葉を聞き、自分の過ちを悟り精神的に救われて昇天した。
各形態の概要
異魔神(精神体)
物語当初の姿。ゴルゴナが制作した精神投影機に浮かび上がる強大な顔(もとい仮面?)の姿をしており、投影機に映し出されるホログラフィの様なものなのか、アステアから攫まされた偽の闇のオーブを精神投影機に挿入した所、画像が乱れるようなシーンが存在する。
精神体そのものは未だ宇宙の彼方に追放されたこの状態でも強大な魔力を有しており、大魔王ゾーマが倒されてから約数年後にゴルゴナによって再び召喚された直後、世界中の旅の扉の使用を封印し、世界を混乱に陥れた。
なお、普段は闇の虚空に浮かぶ不気味な白い無表情の巨大な顔の身の姿だが、場合によっては巨大な腕を自身の精神の機能をつかい投影することが出るようで、また精神投影機の影響で自身が見る夢を周りに投影されることが有る模様。
ちなみに口数は少ないものの、彼のこの形態の時が一番、威厳がある姿だったりする。
また最終形態の胸部にもこの姿が潜んでおり、こちらが真の本体のようである。
異魔神(不死の肉体)
コルゴナとの契約により授かった肉体に精神を移した姿。回想にしか登場しておらず、この姿でアルスたちと戦うことはない。
異魔神(第一形態)
魔人王ジャガンが、そうとは知らずに闇のオーブを破壊したことで復活した肉体に呼応し、精神体が一つになろうとした際の姿。
スライム状の不定形の肉塊は周囲のエネルギーや生物を取り込んで成長していき、機が熟すと精神と肉体が一体化し第二形態へと成長する。
異魔神(第二形態)
異魔神(第一形態)が力を満し、成長した形態にして魔界の異空間に潜ませていた時の姿。
巨大な人型の姿、もとい怪獣形態。
この形態になる事で、「りゅうせい」に代表される幾多の高密度魔法言語と呼ばれる強力な魔法を使用することか出来るようになり、その凄まじい破壊力は周囲の地形さえ変化させる。さらにその咆哮の衝撃波だけでもあたりの物を破壊し尽すことが可能。
また、その巨体ゆえに通常の攻撃が殆ど通じず、さらに世界樹のエキスから生み出された細胞は極めて高い再生能力を持っているため、いくらダメージを与え続けてもすぐに再生してしまうほか、死者の魂を高密度魔法言語「げっこう」で幻の月を作り、それにより世界樹の活動を促進させることで、元からある再生能力を上昇さているため、脅威の回復力を得ている。
その代わり、強力な魔法攻撃には弱いという弱点を持つため、かつて大魔王ゾーマが纏っていた闇の衣を身に纏って魔法攻撃を遮断している。またオメガルーラ対策としてロトの血を引くアランの聖なる力を吸収しているため、多少の聖なる力には対抗で来るが、強力な聖なる力には流石に抗う事は出来ないようだ。
ちなみに、高密度魔法言語が全て平仮名になっていることや精神体時よりも更に口数が少なっている事などの影響であまり頭が良くないような印象を与えてしまうが、その圧倒的な攻撃力や都市を次々に襲撃し、大量虐殺や破壊活動をするその姿は物語中最大の絶望感や悲壮感差が漂っており、まさに破壊邪神としての姿を読者に焼き付けてくれた。
アイテムや魔法陣のような仕掛けを用いずに「己の魔法のみで大陸規模の破壊活動を行う」ので、それを止めるためには「本人を倒すしか無い」という、まさに「最後の壁」である。
なお余談だが、この形態の姿が明らかになるのは終盤であり、それまではシークレット扱いのはずなのだが、実は第1話の初期段階にて小さなシルエットとして何気にネタバレしてしまっている。
異魔神(最終形態)
魔界をも震撼させた異魔神の真の姿。
最終巻に登場した本作の真の最終ボス。アルスから「勝負しろ!」と言われたことでそれに応える形で変身した。
ロト紋ではグノンに続く一応、美形の男性の姿をしており、巨大な巨人(怪獣)形態~人型形態(ロ)へと変わるという形態変化はあまり見られない珍しいパターンである(ドラゴンボールのフリーザの変身と同じ系統と言える)。この形態へとなると口数が多くなり、常に他者を低く見た言動が目立つようになる。
実は、この形態の内部(胸部)に精神体の異魔神が潜んでおり、そちらが真の本体である。劇中では最終形態の頭上部を切断されたにもかかわらず死ぬ様子はなく、悲鳴を上げて苦しむだけだった。
なお、本人曰く「あれだけの質量のものが凝縮されたのだ。魔力は変わらないものの、パワーやスピードは以前とは比べ物にならない。よってお前たちには勝ち目はない」とのこと。
ところが実際には魔法の規模は縮小されている上、剣等による物理攻撃でもダメージを受けやすくなっているため、全くそのようには見えない。
ただし、第二形態では闇の衣無しだと瀕死にまで追い込まれていたトリプルギガデインを難なく跳ね返したり、三人のケンオウ達が命懸けで放ったマダンテも大ダメージは受けたものの耐え抜いた等、呪文に対する耐性は格段に上がっている。
というか、闇の衣が光の玉によって剥がされた以上、呪文に弱いという明確な弱点が存在し、的がデカく動きも遅い第二形態に比べると、虐殺や大規模破壊を目的としないなら確実にこちらの形態の方が対人戦では上回っている。
そのほか、アルスたちと戦う理由が自分の真の目的を邪魔したことによるただの八つ当たりだったり、ポロンの放ったマダンテで瀕死の重傷を負った際、回復が遅い原因がタオ老師が幻の月を2つ浄化した事を知った途端、怒りに任せて大事な月をタオ老師ごと吹き飛ばしてしまったり(これで3つ目を消し、「りゅうせい」で最後の一つまで消してしまった)と、感情に任せて行動する場面が多くなったことやセリフがいちいち小物くさいため、全く強そうに見えないのが玉に瑕。
ただし勝負自体は「りゅうせい」で決めるつもりだったので月の破壊にはこだわっておらず、また戦いの最中にアルスからロトの紋章を奪ってオメガルーラを二度と使用できないように転送したりと、先を読んでの行動は取っている。
その幻の月が健在だった時の反則級の回復能力や次々とアルスたちのかつての仲間を惨殺していくその姿はある意味絶望感を漂わせているため、全く弱々大魔王という訳ではない。
ほか、アルスたち勇者パーティー最終決戦仕様となってパワーアップして再集結しており、しかも世界中の戦士たちが集結してアルスたちを援護している。そんな状況でラスボスが1人で戦っていることから、第二形態時点に比べでさらに一皮むけた強さを得ていることも補足しておきたい。
余談
同時期に連載していた『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のラスボスである大魔王バーンとは、たびたび比較される対象である。
バーンは主人公一人では歯が立たないほどの強さを誇り、仲間たちを次々と戦闘不能にするなど圧倒的な実力を持つ。しかも最終形態は見上げるほどの巨人であり実力的には主人公を完全に上回っていた。
上記と比べると異魔神との最終決戦は地味ではないかと言われているが、そもそもバーン戦とは戦いのシチュエーションがまったく違う。
バーン戦は主人公含む強豪メンバーが次々と離脱しながらも死力を尽くし、最終的にバーンと主人公の一騎討ちになるというもの。
対して異魔神戦は主要メンバーに加えて世界中の戦士たちが一堂に集結し、主人公たちは重ね掛けされた強化呪文や回復呪文による援護付きという状態である。バイキルトやスカラを常時重ね掛けされていると言えば恐ろしさが伝わるだろう。
いわば“異魔神一人で世界中の人々と戦っている”状況なのだ。
上記の「りゅうせい」を使った時点で主人公以外の主要メンバーは全員死亡してしまい、主人公が生き残ったのも単なる幸運である。
仲間たちが死力を尽くしたからこそ再生能力を封じ、世界中の人々が集ったからこそミナデインで最後の一撃を決めることができたのだ。
どれが欠けても異魔神を倒すことはできなかっただろう。
またバーンは技のレパートリーこそ異魔神に引けを取らないが、「りゅうせい」のような都市を滅ぼすほどの超広範囲攻撃は使えない。これはバーンが劣っているという話ではなく、単純に戦闘スタイルの違いである。
バーンはどちらかというと1人1人を確実に仕留める技の持ち主で、強力なカウンター技を持っている。
異魔神にはこうした技はないため集団戦では不覚を取ってダメージを受けてしまっている。
さしづめ「広域魔法の異魔神」と「対人技のバーン」といったところか。
関連タグ
大魔王バーン:『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場人物。同じくドラゴンクエストを基にした漫画のラスボス。