「たとえ 一度は絶えようとも
ふたたび目覚めくる 神に代わりて
この者たちに 祝福をあたえん……」
概要
かつて神との戦いに勝利し、大陸を切り取って次々と封印した魔王。『ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち』(以下、本作)のPlayStation版はプレイディスクが2枚あるが、その両方で戦う事となる。肉体が倒されたとしても、魂だけでこの世に存在し続けることができる。
DISC1終盤では過去の世界にて、神との決戦直後の消耗した状態で主人公達と戦うことになる(いわゆるバラモスのポジション)。この際は消耗していたこともあり敗れるが、主人公達はその魂までは消し去ることができなかった。そこから長い潜伏期間へ入った。
DISC2では、長き(プレイ時間的にはすぐだが)雌伏の時を経て、現代で主人公達の働きによって執り行われた神の復活の儀式に便乗して姿を現す。自らを神と騙り地上に君臨し、主人公達が解放してきた世界を再度封印。今回は前回と違い四精霊が守護する4つの地域「エスタード島、エンゴウ、聖風の谷、砂漠の国」に的を絞り、精霊単体では封印を破れないほどの入念な封印を施し、同時に現代世界全体に魔物を派遣。
その後、四精霊全員の加護を受けた主人公達により世界の封印を再び解かれ、自身も四精霊に正体を暴かれる(正体を暴かれる際に四精霊を倒す)。そして神の居城(クリスタルパレス)の下にあった自らの居城、ダークパレスにて今度こそ主人公達を討ち取らんとしていた。しかしまたも敗れ、今度は完全に倒されることとなる。
世界の支配方法が恐ろしく陰湿で、シリーズ屈指のえげつなさ。特に人間の暗い部分を表出するような手段が多く、単純に魔物を倒してもなにかと禍根を残す結末となる。おかげでプレイヤーは何度も何度も鬱エピソードを体験、魔物よりも人間に対する不信が強くなりがち。彼の手下はその支配方針をあらわすが如く頭脳派な魔物が大半を占め、一配下にもかかわらずやる事成す事かなり高度なものとなっている。
仲間(魔族)思いな面もあり、神を騙って地上に君臨した際には人間に「武器を捨て魔族を殺めるな」との訓示を発している。
ドラゴンクエストシリーズのラスボスには「大変なところは部下に任せて自分は安全圏を確保している」パターンが多いのに対し、自力で封印だの神様とガチバトルだのをしているあたり、えらくアクティブである。
物語開始時点でエスタード島を除く全ての大陸を封印しており、シリーズでも世界征服に最も近づいた魔王として有名である。しかも前述の通り世界征服の濃度が非常に濃い。シリーズでも特に世界征服の功績が高いゾーマのアレフガルドやウルノーガのロトゼタシアも、デミーラに封印された国々や町の消耗具合に比べれば普通に生活できている方である。
ちなみにエスタード島だけ封印しなかったのは、劇中で説明はないが「後に主人公達に敗れる過去の世界」当時は無人島だったためと見られている(作中、エスタード島にある石碑の中に「われわれが この美しき無人島を 発見した 記録に この文字を記す。」というものがある。またそこから上記のように「人間の暗い部分を表出するような手段」を使って世界を征服しているため、人間がいなかったエスタード島を封印できなかったのでは?という説がある)。
小説版によると元々は闇の精霊で他の精霊と同じく神に仕える存在だったが人の悪意に飲まれ変質し邪悪な魔王となってしまったという。人間が人間にとっての脅威を生み出してしまったと言える。彼が引き起こした劇中の鬱エピソードも、ある意味では「人間」を暗示したものなのかもしれない。
各形態
オルゴ・デミーラは一定ダメージが蓄積するごとに変身してゆく(かと言って、瞑想などで体力を回復しても前の形態に戻ることはない……はず)。戦いによって変身の仕方が異なる。以下、過去と現代に分けて各形態の説明。
過去の世界でのオルゴ・デミーラ(DISC1)
(左が第1形態、右が第2形態)
魔空間の神殿に登場。
ややこしいが、ここでの第1形態は現代における第2形態の、ここでの第2形態は現代における第1形態の、それぞれ色違いである。
神との戦いで消耗していた関係なのか、現代での姿に比べると本体の配色は薄い褐色ベースで地味だが、第1形態は服が真紅でかなりビビッド。
第1形態は二段階のローテーションとなっているが、開幕からメラゾーマを放ってくる上に、イオナズンや念じボールといったこの時点ではかなり痛い攻撃を容赦なく使用する。
しかも、基本1〜2回行動なのだが、二段階ローテーションの仕様で最大で4回行動する。ローテーション切り替えのタイミングかつ2回行動を連続で引く…という、確率にして1.7%と低いものの、もし引いてしまうととんでもないダメージを受けることに。
第2形態は激しい炎、氷の息、真空波といった全体攻撃を駆使するが、本当に危ないのは「トゲを突き立てる」突進攻撃で、170ほどのダメージを受ける。この段階では最大HPでも瀕死一歩手前まで削られ、さらに追い討ちで攻撃を受けかねない。
前半最後の戦いにふさわしい強敵となっており、入念な準備をして挑まないといけない。
このときは「人型→ゴツい魔物」という典型的な変身パターンを見せ、口調も荘厳、と割とテンプレートな魔王である。
3DS版では後ろを向いてその体内から第2形態が吐き出されて現れる(第1形態は床に捨て置かれて消滅する)という、衝撃の形態変化となった。
現代でのオルゴ・デミーラ(DISC2)
ダークパレスで主人公達と戦う。
過去とは逆に「ゴツい魔物→人型→ドロドロ」という非常に珍しい変身スタイルをとり、また変身段階ごとに一人称も言葉遣いもコロコロ変わる多重人格であり、テンプレなラスボスとは色々な意味で一線を画している。
第1形態
脳が剥き出しの頭部に、悪魔の腕と翼、ムカデの胴体を合わせたような外見をしている。一人称は「われ」。
迫力その他の兼ね合いか、派生作品や関連商品、創作物などではこの姿が「標準形態」のように扱われているフシがある(実際、最終形態もこの形態が基となっているため、これが基本形態だと思われる)。
外見からはイメージし辛いが、ドラゴン斬りが効くので分類はドラゴン系といえる。
使用技は通常攻撃の他に、「しゃくねつほのお」「こごえるふぶき」「しっぽを振り回す」がある。1回行動。
第2形態
翼を生やした人間形。過去の世界での第1形態の色違いで、緑の肌に紫の服というこれまたビビッドな見た目。
過去の世界でこの形で登場した際にはラスボスらしい威厳のある喋り方をしていたが、なぜか今回はオカマ口調。
変身直後のセリフである
「オホホホ。それで わたしを たおしたつもり?おバカさんにも ほどがあるわね。わたしの美しさは不滅なのよ。 さあ ぼうやたち いらっしゃい。 美とは何かを おしえてあげるわよ。 」
はあまりにもショッキングな迷言である(パーティメンバーの反応は大半のプレイヤーが抱いたであろう感想と同様だが、唯一メルビンだけはこの発言に妙に納得している。またアイラは「言葉と裏腹に恐ろしい殺気を放っている」と警戒している)。
その絶大なインパクトのせいで、単に一形態での性格に過ぎないにもかかわらず「オルゴ・デミーラ=オカマ」という認識が広まっている。
堀井雄二曰く「ビジュアル系」とのコンセプトらしい。ビジュアル系…?
よりシンプルなフォルムに変わって強くなる、おバカさんという呼び方、などの要素はあのお方も彷彿とさせる。
使用技は、通常攻撃に加え、「メラゾーマ」「イオナズン」といった呪文、「念じボール」「かまいたち」「せいけんづき」「あやしいひとみ」「はげしくもえさかるほのお」といった特技を使う。また、「いてつくはどう」も使ってくる。基本1~2回行動だが、稀に3回行動することもある。
強力な「念じボール」や3回行動の可能性、そして他の形態と違って特効属性が無いので全形態で最も手強いという意見が多い。
PlayStation版では最初の形態がこの形態に変身するという演出だったが、3DS版では過去の戦いとは逆に、「最初の形態がこの形態を吐き出して、第1形態は消滅する」という演出に変更されている。
第3形態
人型のスリムな体に魔物型の大きな頭と翼という、いわば「(第1形態+第2形態)÷2」の造形をベースにしつつ、所々身体が崩れ落ち蒸気を発しているという不気味な姿。一人称は「オレさま」。
変身の過程はPlayStation版では第2形態が上半身の筋肉を発達させ、頭髪が全て蒸発し頭部が変形、変色する身体のあちこちから蒸気を発しつつ尻尾がダラリと生え出る演出。
一方で3DS版では第2形態が皮膚が剥げて飛び散るほどドラミングの如く胸元を激しく掻き毟った後、ほぼ一瞬で第3形態に変異する演出となっている。
マリベル曰く「オルゴ・デミーラの正体」。嗅覚に敏感なガボとの会話ではこの形態になる前から既に隠された腐臭に気づいていたような描写もあり、どうもこれが本来の姿であるらしい。その証拠か、素の攻撃力は全形態含めて最強である。
ただし、腐っている点まで含めて真のオルゴ・デミーラなのか、またはこの形状が元々のベースではあるが本来腐ってはいなかった(例えば、神さまとの戦いで消耗した結果腐ってしまい治しきれなくなった)のかは不明。マリベルのセリフも「追い詰められて本性を表してきた」とも取れる。
「ゾンビ斬り」が有効なのでゾンビ系。純粋なラスボスがゾンビなのは前作のデスタムーア第3形態と並んで非常に珍しい例。
使用技は混乱攻撃や「もうどくのきり」、「叩きつける」「マグマ」「おぞましいおたけび」「いてつくはどう」など。こちらは1~2回攻撃だが、毎ターンHPを20自然回復する。
第4形態
見た目は「溶け落ちた第1形態」そのもの。メルビン曰く「死にかけ」でボロボロとのこと。ラスボス最終形態が満身創痍のドロドロな姿というのはRPGでみてもあまり例がない。
正直カッコイイとは言えないフォルムであり、最終形態にもかかわらず関連商品や派生作での出番は控え目。二次創作でも、マジなものではあまり描かれない。ちょっと不憫。一人称は「われ」。
3DS版では第3形態から液状の球体となり、第1形態へと再生しようとして失敗し崩れるかのような変身となっている。
滅びかけを演出するためか見た目通り守備力は各形態で最低で、素早さも低下している。攻撃力も控えめで、最終形態まで持ち越せたのならそれほど苦戦はしない。ただしHPは最も高く、自然回復持ち。しぶとく抵抗しているということだろうか。
但し「マダンテ」→魔力回復や麻痺攻撃、仲間生成など、それまでの形態とは全く異なる独特な攻め方をしてくる。見た目から想像されるほどヌルい消化試合では決してない。
見た目からもわかるように第3形態同様にゾンビ系に属する。
使用技:通常攻撃、麻痺攻撃、「しゃくねつほのお」、肉片を飛ばす(実質仲間呼び。ドゴロク、ブロブロスのいずれかを生成、戦闘に参加させる)、「いてつくれいき」、「マダンテ」、邪悪な祈り(MP全快)、「めいそう」、「まきつく」、押しつぶす、「ラリホー」、「マジックバリア」、「いてつくはどう」など。
1~2回行動だが、稀に3回行動をし、HP50の自然回復する。
アイラ曰く「死に物狂いだから油断しないように」とのことで、3DS版ではまさにその通りな荒々しいモーションとなっている。
- ドゴロク
肉片から生まれる魔物。くさったまじゅうの色違い。炎ブレス攻撃を使いこなすが、ラスボス戦まで来れた段階ならそれほど怖くはない。
- ブロブロス
肉片から生まれる魔物。ゾンビーアイの色違い。攻撃力は乏しいが「スカラ」「ルカナン」「なめまわし」と補助に徹するため、ドゴロクより鬱陶しく厄介。
その他の作品への登場
ドラゴンクエストⅨ
追加クエストで入手できる大魔王の地図のボスの1体として登場。
ドラゴンクエストモンスターズシリーズ
『ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵 ルカの旅立ち・イルの冒険』より登場。????系。人間形態は「サイコピサロ×ナイトリッチ」、モンスター形態は「オルゴ・デミーラ(人間形態)×しんりゅうおう(又はオリハルゴン)」の組み合わせで誕生させることができる。配合の頂点の1体。両形態共にメタル化が可能。メタル化可能な上、????系で最も会心の一撃が出やすい人間形態はこの作品で事実上最強のモンスターであった。
- 説明文
- 人間形態「紳士的な姿とは裏腹に野望を秘めた恐怖の魔人」
- 魔物形態「その姿はおぞましさ以上に深い恐怖を感じさせる」
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー』では「デスタムーア×はくりゅうおう」で配合できる。AI2回行動の特性を持つ希少なモンスター。スキルは固有スキルではなく「じごく」だが、これで覚えるマダンテは超強力。
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2』ではフォロボス×セルゲイナスと困難な組み合わせに。2枠になり、魔王の中でも屈指の能力値を持つようになった。スキルはやはり「じごく」。マダンテ弱体化で不遇気味。
『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド3D』では人間形態も登場。MPが低いが耐性が高く悪くはない。モンスター形態は素早さを除き優秀で特に賢さは凄まじく高い。さらに呪文会心が出やすく最大3回攻撃の可能性も秘めている。
位階値は魔王の中でも上位に君臨し、ライバルの「神さま」よりも上である。
『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議なふしぎな鍵』でも同じく続投。大きな変更点はない。
- 説明文
- 人間形態「全知全能の神をも倒す驚異的な強さを誇る魔王。美しさにも自信があり、美とは何かを教えてくれる」
- 魔物形態「かつて神との戦いに勝ち、世界中の大陸を封印した魔王オルゴ・デミーラの真の姿。その脳には邪悪な心が宿る」
『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3』及び『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3 プロフェッショナル』、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』では魔物形態のみ登場。
ドラゴンクエストタクト
第一形態と第二形態でそれぞれ登場。
ドラゴンクエストライバルズ
アップデートで参戦。
りゅうおうのように、第1形態が倒されると次の形態となるのだが、りゅうおうと違ってその場で変身するのではなく、次の形態のユニットカードが手札に加わるという一風変わった性能をしている。1~最終に渡って実に合計3回も手札に戻ってくる。第1形態は「倒されたら次の形態のカードを手札に加える」以外に特に特殊な能力はないが、それ以降の形態は第1形態の能力に加えて、第2形態は「二回攻撃」、第3形態は「召喚時場のユニット全員に3ダメージ」、最終形態は「におうだち」と「攻撃時に上下のユニットにもダメージ」と各形態毎に異なる能力を持っている。
余談
オルゴデミーラは『ロトの紋章』のラスボスである異魔神と類似点が多い。
以下は異魔神について。
- 大昔に召喚され神として大陸を統治するが、人間たちが与えた不死の肉体を得た後で暴走した(かつては崇められていたが人間が原因で狂った。また一時的とはいえ神として君臨していた)。
- 精霊ルビスとの戦いに敗れ精神を世界から追放され、肉体を封印された(過去に世界を守る存在と戦った結果、不完全な状態になっていた)。
- 復活して間もなく主人公たちに再封印されるが、実は精神だけ別人に憑依しており、そのまま成りすまして主人公たちを欺いた。物語序盤では配下の魔物が国王と擦り替わり、側近の老人を追放した(いずれも神に成りすましたデミーラと同じである)。
- ある男に幻覚を見せ、ある少年が魔物に見えるようにして殺し合いをさせる。少年が男を返り討ちにするが、その人物が父親だったと知る(つまりこれである)。
- 形態によって言葉遣いや態度が変わる(最終形態は翼を生やした人型の男性であり、少々気取った言動になるなど人型のデミーラと似ていなくもない)。
- 一見すると外から見える姿が本体のように思えるが、実は体内に真の本体が潜んでいる。また側近の冥王ゴルゴナも大蜘蛛のバケモノの内部に人間の本体が潜んでいた(上記の通り3DS版ではデミーラの体内から第2形態が出現しており、体内に本体が潜んでいるとも取れる描写である)。
- ダメージを受けても即座に自然回復するが、これの効果を半減させられたところでマダンテが直撃して大ダメージを受ける(デミーラの第三形態と最終形態も自然回復を行う。しかし最終形態はボロボロの姿でマダンテを使うなど、マダンテを喰らってボロボロになった異魔神とは逆)。
と、このように人の心に付け込むやり方を多用している。
ちなみに同作に登場する「バラモスゾンビ」は、肉片から魔物を生み出す能力を持つ。外見もドロドロした体液を撒き散らすゾンビそのもの。
更に『ロトの紋章』の主人公は、精神だけ過去の世界に向かい、当時の勇者アレルに乗り移って世界の脅威と戦い倒したという設定である。これもまた過去の世界で主人公たちに倒されたデミーラを想起させる。
関連イラスト
関連タグ
デミウルゴス ヤルダバオート…彼のモチーフのひとつと思われる…
オムド・ロレス…こいつも神と呼ばれる存在を倒し、異空間で休んでいた。
キーファ・グラン…同作品のキャラで主人公の兄貴分。ストーリーの途中でパーティーを永久的に離脱することや、エスタード島だけが封印されていないこと、作中使用する場面がないのになぜか存在しているラーの鏡(しかも入手できる場所がラストダンジョン)、エンディングの彼からの唐突なメッセージ等から「キーファ=オルゴ・デミーラ説」という考察が生まれる要因になったが、あくまで憶測の域を出ない都市伝説である。