本項は「エデン条約」編のネタバレを含んでいます
概要
長きにわたって敵対してきたゲヘナ学園との不可侵条約の締結を前に、トリニティ総合学園の内部では妨害勢力の存在が浮かび上がっていた。
一度は空中分解しかけた条約をまとめ直し、推進してきたティーパーティーのホスト・ナギサは、万全を期して"疑惑がある者"を一掃しようと目論み、当該生徒を問答無用で学園から追放してしまおうと暗躍する。
すべての準備が完了し、片が付くまで残り数時間……校内のセーフハウスでその時を待っていたナギサの前に侵入者が現れる。
それは彼女が裏切り者と目星をつけていた内の二名、浦和ハナコと白洲アズサだった。
裏切り者は一人ではなく二人だったのかとに狼狽するナギサに対して、ハナコはさらなる黒幕の存在を示唆し、“その人物からのメッセージ”を口調を真似ながら伝える。
「あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ」
耳に馴染んだ“笑い方”に動揺するナギサは次の瞬間、アサルトライフルを携えるアズサに至近距離から数十発の5.56㎜弾を撃ち込まれ、意識を失う──
真相
端的に言えば、大義と己が安心のため(注1)に友人を切り捨てようとしたナギサに対する、ハナコの個人的な意趣返し。
ナギサがまとめて退学に追い込もうとした補習授業部にはトリニティに害を及ぼそうとする生徒などおらず(注2)、セーフハウスへの侵入とナギサ誘拐も、「真の裏切り者」の標的にされている可能性が高いナギサを保護する目的で企てられたものである。
本来であれば計画には不要なやり取りなのだが、部内での情報交換から補習授業部が臨時編成されるに至った経緯を察していたハナコは、正義実現委員会への牽制として人質同然に部へ放り込まれたであろうコハルの事はもちろん、ナギサと懇意にしていたはずのヒフミが、他でもないナギサの謀略によって他の部員もろとも理不尽に晒されてきた事実に納得できずにいた。
表向きは部長として全員での学力試験合格を目指しながら、実際のところは裏切り者探しに協力させられるという不本意な役割を背負い、それでも部員たちの学力向上のため一途に奮闘する道を選んだヒフミ──そんな彼女と深めてきた親交すら切り捨てようとしているナギサの真意を、ハナコは面と向かって問いただす。
だがホストとしての重責と疑心に凝り固まっていたナギサは「悪い事をしたかもしれない」とハナコの憤りに理解を示しながらも、「後悔はしていない」「全ては大義のため」と返答。
この瞬間、ナギサに酌量する理由が無くなったハナコは意味深に微笑むと、「私たちの指揮官から」と嘘の前置きをしてささやかな狂言を企てた。
その後の展開は上述した通りである。当のヒフミはそんな人物像をでっちあげられたとは夢にも思わないだろう。
気絶したナギサを運びながら「あのセリフは必要だったのか」と問うアズサに、ハナコは「勝手な仕返し」「ちょっとくらいはショックを受けてもらおうかと」と答えつつ、すぐに誤解は解けるだろうと楽観視していた、のだが……。
そして……
一連の事件の収束後、先生はハナコからヒフミとナギサの和解について知らされる。
「阿慈谷ヒフミは水着姿の犯罪者集団のリーダーである」などという荒唐無稽な誤解(?)も解け、ナギサは己の見立て違いと数々の暴挙について、ヒフミをはじめとする関係者に謝罪行脚を実行。
ヒフミは大変だった事については認めながらも、ナギサを恨むような事などない、これ以上謝らないでほしいと応じ、ナギサは戸惑いすら覚えながらその理由を尋ねようとする。
お人好しな性根を上手く説明できないヒフミが困ったように「あはは……」と漏らした曖昧な笑い声を聞いた途端、ナギサの脳裏にはハナコに刻み込まれた偽ヒフミの虚像がフラッシュバック。一気に情緒不安定となり咳き込むナギサと慌てるヒフミの姿を映して、ハナコの回想は終了する。
既に嘘だったと伝え誤解は解いた、と付け加えるハナコも「少しやり過ぎた」と振り返りつつ、それ以上にナギサが抱えることになるであろう大きな罪悪感について気にかける様子を見せる(注3)。
彼女の脳が癒えるのはまだ時間が必要なようだ……。
しかしエデン条約の調印式は、その時間を待ってくれはしなかった。
また、前述の通りナギサの疑った候補とは別に「トリニティの真の裏切り者」は存在しており、その正体(リンク先ネタバレ注意!)は彼女の心に更なる影を落とす事となる。
加えて、“超法規的な手段を可能にする立場”を生徒の退学手続きの省略に利用するために呼んでしまった先生に対しても申し訳なさで顔を合わせ辛くなっているらしく、久々に対面した場では同席した他の学園幹部から条約絡みの非道について擦られる姿を晒す羽目になる。
ネット上での反応
一連のシナリオを読んだ上で、各要素を整理したプレイヤーからも、猜疑心に囚われて横暴な手段を取ってしまったナギサに対する非難は多い。
ヒフミを信じられなかったばかりに、ハナコが即興で生み出した「裏切り者の指揮官・阿慈谷ヒフミ」という出まかせを信じてしまった状況も、自業自得・因果応報であるという意見が見られ、後にナギサ自身もそのように悔いているからこそ、よりトラウマが深くなってしまったと言える。
もっとも、ヒフミに疑惑の目が向けられた点については、学外で知り合った先生と噂の犯罪者集団の悪ノリに巻き込まれた一件に原因がある事を忘れてはならないし、先生もナギサに直接釈明する機会はあったものの、藪蛇になる可能性を前に口を挟めなかったところもある。
ナギサからすれば信頼していたヒフミの非行疑惑を耳にしただけでも彼女を疑わざるを得なかったというのは想像に難くないだろう(注4)。
このような厳しい評価の一方、いくら親しい間柄でも、大局のために私情を挟まず冷徹な判断を下したナギサの生徒会長=為政者としての資質について(やり方の善し悪しはともかく)評価する声や、条約締結によって和平を実現しようとする姿勢については一貫して真摯であった点、テロリストの迅速な排除による自校生徒の安全の確保といった喫緊の目的に理解を示す声もギヴォトス/現実問わずある程度聞かれ、例えばこれらのリーダーシップについてはトリニティの他の幹部からも「血も涙もない残酷な方」との評を聞くことができる。
また、私怨と呼んで差し支えない動機でヒフミを利用した上にその後の二人の関係に亀裂が入る結果を作り出したハナコの行動や、補習授業部側に寄り添いすぎてナギサに対する諸々のケアを疎かにしてしまっていた結果、間接的とはいえ脳破壊に至る原因を作ることになった先生に対して不快感を示す者も一定数存在しており、後述の通りある種のミームと化している一方で下手に触れると大荒れしかねないかなりデリケートな話題となっているのが実情。
「楽しかったぜぇぇ!!お前との友情ごっこォォォォ」を思い出した先生もちらほら。その他白目を剥いて絶望する陸八魔アルのコラが出回ったり、「ナギサ様」を検索欄に入力した際のサジェストに「お友達ごっこ」「脳」が表示されるまでに至った。
実際にヒフミがこのセリフを言ったかのようなファンアートも多く、それ即ち、真に受けたナギサのショックはそれほどまでに深かったということなのだろう。
そして本編未プレイでこの情報の一片を目にし「えっ!?ヒフミが裏切り者なの!?」と早とちりをしてしまう先生も現れたという。
中には、ヒフミのような子が本当に「お友達ごっこ」をするようなキャラクターだったらド直球に好み、という業の深い先生も。
pixivでは
元来普及していたネットスラングとしての脳が破壊されるという意味を承け、ヒフミと他の生徒が仲良くしている様子に激しく嫉妬するナギサの絵に当タグが付けられることもある。
脚注
- 注1:ホストとしての大義もさることながら、ティーパーティー内部でも“裏切り者”による実害は「学園幹部への直接攻撃」という形で既に発生しており、予期せぬ事故から幼馴染の身を守るために不安要素の排除を急いでいたという理由が、後にナギサ本人の口から語られている。
- 注2:ただ、アズサはセイア暗殺に深く関わっていたため、そういった意味ではナギサの推測は的外れとは言えない。
- 注3:エデン条約編に続く「最終編」では、個人の感情からリオを過剰に非難するヒマリを諫める、イベントストーリー「隠されし遺産を求めて~トリニティの課外活動~」ではトリニティの隠蔽体質を嫌うような素振りを見せるなど、ハナコ本人もこの方法についてはかなり悔いている様子を見せている。
- 注4:ヒフミ自身も気性善良で穏健、学業成績も悪くないのは確かだが、そもそも厄介事に巻き込まれたのは学校で禁止されているブラックマーケットへの立ち入りを常習的に繰り返していたためであり、補習の直接的な理由である成績不振についても、落第に関わりかねない重要な学力試験を「日程の確認不足+純然たる私用」ですっぽかすという擁護しようのないやらかしのせいである。特大のファンブルを一度ならず引き当ててしまった点については同情の余地こそあるものの、事実だけを見れば素行不良を疑われるには十分だろう。
関連タグ
言ってないセリフシリーズ:ヒフミが実際に言ったセリフだと誤解している人もいる。まさに風評被害。
ブルアカ宣言:阿慈谷ヒフミという生徒の真髄とも言える「宣言」。本件とはあらゆる面で真逆の、対となるような信条。