概要
虎(こ)の縞模様、狼(ろ)の顔、狸(り)の腹鼓を持つ姿、明治19年(1886年)の錦絵『虎列刺退治』では虎の上半身、狼の下半身に八畳敷きをぶら下げた姿で描かれる獣妖怪で、幕末のコレラ流行によって一般に流布されていたとされている。
安政5年(1858年)以降の十万人にも及ぶコレラ禍を記録した『安政箇労痢流行記概略』においては、黒船以降に流行って多くの犠牲者を出したコレラが、当時は未知の病であったことから、庶民の間でまことしやかに語られた妖怪変化であるとされ、文久2年(1862年)の『藤岡屋日記』では、コレラが快方したもの、もしくは死亡したものの傍らにイタチのような獣が現れたと記録されており、それを著者の須藤由蔵はアメリカのオサキと表現している。
要するに当時はコロリ(コレラ)の元凶はこの妖怪の仕業だとされ、恐れられていたという事でもある。
なおメイン画像の姿は、明治10年(1877年)の新聞『かなよみ』に掲載された錦絵「虎狼狸獣」によるものである。
病自体の名は虎列刺(コレラ)という表記が定着するまで、最初に確認された長崎ではトンと一声を聞くとコロリンと頓死することからトンコロリン、一見してわかる嘔吐と下痢の激しい症状と死亡に至るまでの早さから鉄砲、見急、頃痢、三日コロリ、一日で千里走るといわれる虎から虎狼痢などの表記があった。
また古書によっては難読漢字であるこの表記でも書かれている。
ただし、コロリ(古呂利)という言葉自体は、卒倒し瀕死の状態を表す言葉として古くから使用されていたので混同されてしまったと、幕末~明治期の漢方医・浅田宗伯が著した『古呂利考』で紹介している。(コレラ自体はギリシャ語で胆汁などの体液を意味する「khole, chole」が由来)
余談
現在では先進国でのコレラの発生は希であるが、発展途上国では未だに流行し犠牲者がでることがある感染症である。
しかし、日本では150年後の2018年に豚の伝染病である豚コレラ(豚熱)が発生し、2020年以降猛威を振るっている感染症COVID-19(コロナ)が、一文字違いであることから謎のシンクロ率を感じているものもいる。
そのため平成・令和の妖怪絵師によって亜種が考案されたのである。
虎狼魚(ころな) | 豚虎狼狸(とんころり) |