概要
一般に、女子は男子以上に、トイレがすぐに満員になりやすいため、行列ができやすく、また長くなりがちである。
この我慢しながら列をなす様子はしばしば絵や小説に描写される。
なぜ女子トイレは並ぶのか
身体構造の問題
男女の身体構造の差異として排泄に関係する最も大きなものは陰茎がないことであるが、この一点が以下のように男女の運命を分ける大きな要因となる。
おしっこを我慢しにくい
陰茎がない分、尿道が男性より短いので我慢ができないといわれている。
尿をためる膀胱も子宮に圧迫されているせいか、体積も男性の3分の1と小さい。
下半身を丸出しにする
女性はおしっこするたびに、スカートを捲り上げるなどしてパンティーを降ろし、恥部をすべて露出しなければならない。
このことが、以下の2つの要素につながる。
個室を必要とする
男性は壁状のものに向かえば、陰茎を大部分隠せるが、女性が同様にすれば、真横どころか真後ろからでも尻が丸見えである。
もちろん、壁を背にすれば、陰部が丸見えである。
そしてどちらにしても、おしっこの軌道が丸見えである。
したがって、女子トイレの便器はすべて、鍵付きの個室とする必要がある。
時間がかかる
男性は便器の前に立ったあと、ファスナーを降ろして陰茎を取り出すだけで排尿ができるが、女性は、便器にまたがったあと、ドアを閉め、鍵をかけ、スカートを捲り上げるなどしてパンティーを露出し、パンティーを降ろさなければならない。
おしっこが終わった後は逆の動作が必要である。またトイレットペーパーも必要である。
一般に、女性の排尿時間は男性の3倍程度と言われている。
便器の数の問題
上記のことからすると、男女がほぼ同数いる学校(小学校、中学校、普通科高校)等においては、女子トイレの個室数が男子用小便器の3倍程度あれば、少なくとも女子トイレにだけ行列ができることは少なくなるだろう。
女性客の集まる百貨店等では、一部のフロアを女子トイレのみにするなどして、それに近い形をとっていることもある。
しかし実際には、すべての便器が個室でなければならないことから、以下のように、女子用個室の数が少ないトイレも多い。
面積を必要とする
女子はすべての便器を洋式便器または和式便器のどちらかにしなければならないので、男子用小便器より広い面積を要する。
男女のトイレ全体の面積を同じにするなら、女子トイレの個室数は、せいぜい男子トイレの小便器の数程度までしか確保できない。
費用がかかる
ドアの蝶番、鍵、便器の破損、水流や排出などの故障が、男子トイレに比べ起こりやすい。
トイレットペーパーや水道料金も多くかかるので、それらを節約するために女子にトイレをあまり使わせないようにしたがる設置者もいると思われる。
また、これらの設備の故障や紙切れ等により、使える個室の数がさらに減る事態も起こりやすい。
実際の個室数
女子トイレの個室数は、せいぜい男子トイレの個室の数の倍程度、そして小便器の数と同程度という場合が実際には多いと思われる。
かつては、小便器の半数程度しかない男子トイレの個室数と女子トイレの個室数が同じ、というトイレもよく見られた。古い高校や大学、高速道路網整備前のドライブインなどに多かった。
小用以外での利用
と、ここまでの説明はあくまで『並んでいる人全員が個室で小用を足している』という前提に立ったものである。
男性用トイレの場合は壁面に設置された小用便器と、大便も可能な個室に分かれているため、何人か個室で時間がかかる用をこなしている者がいても、おおむね個室より多い小用便器は本来の目的にしか使用できないことから、全体としては回転率が維持されることが多い。
一方、女性用トイレは基本的に全てが個室であるため、実際には利用している者が全員小用とは限らない。本来の用法に限っても、より時間がかかる方を足している場合もあるし、女性の場合は生理用ナプキンの処理・交換と言った特有の用途もあるため、ただでさえ男性より低い回転率が更に悪化するケースも少なくない。
また、本来の用途外の目的で使用している者がいる場合もある。男性でも個室を利用している際はついでにメールやトークアプリ、SNSなどのチェックをしたり、状況によって衛生面には多少目をつぶって着替えを敢行する者は散見されるが、女性の場合は個室でこなしたい用事が男性より多い。これらの用途だけでなく、『個室に入ってしまえばこちらの物』とばかりに、コンパクトを取り出して化粧の確認、手直しをしたりといった、外で尿意とトイレの大行列に参加するという羞恥に耐えている者からすれば噴飯物の行為に及んでいる例もある。
女子トイレの行列ができやすい状況
学校(主に小学校、中学校、高校)
学校行事では、女子便所の数が比較的確保されている学校でも並ぶことが多い。
通常授業ではそれほどでもないが、女子便所の数が少なければ行列ができやすい。
学校行事(入学式、卒業式、学芸会、映画鑑賞会など)
途中で便所に行くことは禁止されたり、禁止されなくても全校生の目に触れることから恥ずかしがる女子が多いため、集会の前、休憩時間、集会後の女子便所はかなり並ぶ。
集会会場の体育館や運動場付近が特に並ぶことが多い(遠い女子便所だと空いていることもある)。
あまりに列が長いと、まだ並んでいるのに集会が始まったりしてしまう。
運動会(体育祭)
全校集会と違い比較的便所に行ける機会があるが、以下の理由から、女子便所の列は校内の行事の中でも特に長くなりがちである。
- 徒競走やマスゲームなど、生徒が特に緊張し尿意を催しがちなうえ、同じ学年・性別の生徒が一斉に出番となる出番が多い。
- 1階の便所しか使えない場合が多い。(女子の着衣等の盗難を防ぐため、校舎の2階以上が立入禁止となる。しかもそのような便所の中には、男女共用トイレや汲み取り式トイレがあり、女子が使用したがらないものがあることもある。)
- 保護者が来校するうえ、その性別は女性の方が多い。
場合によっては、閉会式後、校舎のすべての便所が使えるまで待たなければならない。
1980年代ごろには、女子便所の各個室の前にブルマ姿の女子が3~4人ずつ並んでいる光景もよく見られた。
遠足や修学旅行
出発前、帰校後、新幹線の車内や高速道路のサービスエリアなどでよくみられる。
試験
あまりに列が長く、試験開始時までにおしっこができない女子もしばしばみられる。
それでも本番の入学試験ではまだましで、予備校などで行われる模擬試験だと、休憩時間が10分程度しかないことも多く、女子便所は大行列となる。
通常の授業
女子便所が多い学校でも、給食の前後は混雑しがちなことが多い。
少ない学校では、給食の前後はもちろん、通常の授業の休み時間にも行列することもある。
さらに女子便所が少ない学校では、並んでいても休み時間が終わってしまい、おしっこできないまま次の授業を受けなければならないこともある。
この対策のため、一部の学校では、学年ごとに使うトイレが決められていることがある。その際、小学校では下級生優先のことが多いが、これによって上級生の列が長くなる。
区別のない場合、下級生が上級生に対して遠慮し、我慢を強いられることがある。
学校以外
花見や花火大会など、お酒の絡むイベント。居酒屋にできることも多い。
女性の多く集まるコンサートの類。
駅や百貨店やショッピングモールでは、毎日、あるいは毎週のようにできる場合もある。
コミックマーケットでは女性参加者が多い日は一部の男子トイレも女子用に開放され、その行列ぶりから最大手とも呼ばれている。
行列の作り方
個別並び
かつて日本で主流であった、各個室の前に列を作る方法。
全部の個室が閉まって満員になると、まず各個室前に1人ずつ、次にその後ろに1人ずつ並んで各個室前に計2人ずつ、次にまた1人ずつ並んで各個室前に計3人ずつ…となる。
「ちびまる子ちゃん」の「まるちゃん学校でお腹が痛くなる」の巻では、この並び方を見ることができる。
個室の中の女子や前に並んでいる女子がおしっこだけしかせず、さっさと済ませてくれればよいが、時間のかかる用を足したり、衣服の脱着に時間がかかったりすると、隣の列に後から並んだ女子に追い越されることもしばしばあった。また、遅いからと言って隣の列に並び直した瞬間、列が進み始め、並び直したことで損になるのも日常茶飯事。
さらに、ドアや鍵や水の故障、トイレットペーパー切れなどとなると、せっかく並んだのに使用できなくなって、これまた別の個室の前に並び直す羽目になったりする。
このように、非常に不公平な方法であったので、今ではほとんど見られない。
わずかに、イベント会場の仮設トイレなどでまれに見られる程度である。
フォーク並び
1990年頃より、欧米の習慣として日本にも紹介され、現在ではほぼ定着した並び方。
満員になると、女子トイレの入口か全個室の手前に最初の人が並び、以下、その後ろに1列に並んでいく。
個別並びの不公平は解消されたが、女子トイレの中には大人数が並ぶことができないので、列は女子トイレの外にはみ出し、並んでいるところが男子からも丸見えになることも多い。
女子からすると、外にまではみ出したトイレの列に男子の前で並ぶというのは、
「私は、こうして男子の前で『今からおしっこします』ということを宣言してでも並ばないといけないくらい、おしっこしたいんです!!!」
と、全身全力で主張していることになるのである。
今にも漏らしそうな女子の場合、個別並びであれば、とりあえず女子便所の中に飛び込めば男子に見られることなく前押さえをして並ぶこともできたが、フォーク並びであれば男子の前で前押さえをしなければならない。それが恥ずかしく、足踏みやジャンプで必死に耐えていることもある。
男子トイレでも
実はトイレ待ちの行列は女子ほどではないが男子でも起きる。
- コミックマーケットの男性参加者が多い日。
- G1開催日の競馬場など、公営ギャンブルの大一番の会場。
- 男性が多く集まるコンサートなど。
とはいえ比較的列は捌けやすい。
埒外
「今だけ男~」
こう宣言(?)しながら高速道路のSA・PAの男子トイレの大便器を分捕りにくる猛者もいる。
アカン、アカンでぇ。