概要
『金田一少年の事件簿』File:8。単行本9~10巻に収録。
「首吊り学園」の異名を持つスパルタ予備校・四ノ倉学園を舞台に巻き起こる連続首吊り殺人に金田一一が挑むという不気味な物語。
複数のゲストキャラクターが後に準レギュラー格で登場する。
ドラマ版では不動高校が舞台となっており、重要人物である千家は登場せず(千家のその後の扱いを考えれば、結果として好都合であった)、「学園七不思議殺人事件」でおなじみのイヤミ男な真壁誠が代役になっている。
当初の単行本27巻に収録の19の長編のうち、「異人館村殺人事件」ともどもアニメ化されていない2つのエピソードのうちの1つ。
サブタイトルが物騒・イジメ問題を扱っている・トリックの説明に尺を使う・事の真相があまりテレビ向きではないとの理由からか、OVAも含めアニメ化は行われていないまま。真相については短編「誰が女神を殺したか?」でも似通った描写がある。同話は発生したのが殺人未遂で被害者1人でもあったためアニメ化しやすかったと思われる。
あらすじ
進級すら危うい程成績が低空飛行を続けているにもかかわらず危機感がまるで足りない金田一一に、母は芝居を打って予備校に通わせようとする。『秘宝島殺人事件』同様にあっさりその気になった一は(学年トップの)七瀬美雪共々、都内有数の進学率を誇る四ノ倉学園に通うことになる。
通学初日、学園の校庭で幼馴染ぼ千家貴司と再会した一と美雪が談笑していたところ、ふと教室に目をやった一は、学園内で女子生徒が首を吊っているのを発見。
「この予備校には何かあるに違いない…」
不穏な気配に身をこわばらせる一であったが、予感は悪い方に的中する。担任の浅野遥子先生から学園内で巻き起こる不気味な嫌がらせの解決を打診されたのである。この学校の故事に準え、鶏の首吊り死体が教室に吊るされているというのだ。美人の頼みは断れない一はこれを快諾するも、一の健闘むなしく次々と学園内で不審死が巻き起こる。恐怖と焦燥に駆られる中、一は半年前に起きた悲痛な事故の存在を知ることとなる。
登場人物
教師・スタッフ
- 久米裕一郎:学長。見た目は威厳ある老紳士だが事なかれ主義者。
- 浅野遥子:数学教師。33歳。優しい人柄で親しまれているが、偏差値主義者という噂もある。
- 阿久津國男:常に白ランに身を包んだ硬派…を通り越して極右な熱血国語教師。古谷が大嫌い。
- 梶間軍治:校舎管理人の老人。浅野の祖父とは因縁がある。ドラマでは未登場。
生徒
- 千家貴司:一の幼馴染。
- 森宇多子:筋金入りの変態オカルトマニア。冒頭で首吊り自殺未遂を図ったり、深町に取り憑かれたような言動を発したりするが…名前があからさまに子守唄のアナグラムなだけあってか、ドラマ版では「吉岡里紗」という名前に。
- 宮園彰:予備校の花壇の手入れまでするというこれまた筋金入りの園芸好きの少年。眼鏡をかけている。古谷達にいじめられており、浅野先生に敬意を表している。ドラマ版では未登場。
- 古谷直樹:いじめグループの親分格。一見すると冷静沈着なちょいワルイケメンに見えるが、性根は蛇のように執拗なサディストで、教師にも反抗的。ドラマ版では気さくなヤツになっているが…
- 室井矢一:古谷の手下。エアガン持ちのデブ。見るからに態度が悪く、浅野を嫌っている。早い話、コイツが殺されるのだがコイツの死体が金田一全体でも稀に見るえげつないことになってしまっている。
- 仁藤伸幸:古谷の手下。マザコンで気が弱い。筆圧が異様に強く鉛筆をしょっちゅう折っているどんくさい男。
四ノ倉学園
都内有数の進学率を持つ優秀な予備校であるが、受験シーズンには決まって首吊り自殺が起こっているというろくでもない学校。
50年前は戦犯収容所が建っていたのだが、判決が下る前日に50人もの囚人が集団自殺した。その後も、建物が変わっても必ずと言っていいほど首吊り自殺が起こっている呪われた場所。
怪人『地獄の子守歌』
名前のみの登場。次々とターゲットの首に荒縄をかけ、天井からつるして絞め殺す殺人鬼。いずれも犯行現場には大量のテストの答案がばら撒かれた上で鶏の血が撒き散らされ、更に血文字が刻まれる。
ガイドブックにて一が最も解き明かすのに苦労したと発言している程に巧妙なトリックを汲んでいた。実際に推理において証拠は外的要因ばかりで金田一も偶然に助けられた形でしか証拠を得ておらず、終盤のテストを除いて犯人はミスらしいミスをしていないため、金田一史上最も凝ったトリックと評する読者も多い。
(某外伝においても、金田一が得た確信がほぼマグレである点を『地獄の子守歌』も突っ込んでいる)
読者にもまた「犯人当て」以外の部分が難解な事件であった。
関連項目
異人館ホテル殺人事件 → 首吊り学園殺人事件 → 飛騨からくり屋敷殺人事件
鬼火島殺人事件:曰く付きの予備校、苛め、首吊りを扱った事件繋がり。
異人館村殺人事件:当初の単行本計27巻に収録の19の長編のうち、同じくアニメ化していないエピソード。こちらも描写が際立って残酷ともいえるが、そうした以前に他作品は『占星術殺人事件』との著作権の問題を引き起こしており、実際にドラマ版の同話はVHSでは途中から、DVDでは最初から欠番になっている。そのため、アニメ化が現実的に見込めない。