概要
経済産業省およびIPA(情報処理推進機構)が実施している国家試験「情報処理技術者試験」の区分の中で、専門性、複雑性、責任性、規模が大きい一部の区分の総称。
単に高度試験という場合もある。
情報処理技術者試験の制度においてスキルレベルを1~4に設定しているが、この中でスキルレベル4に相当するものを高度試験と規定している。
また、旧制度から運営されている、スキルレベル5に該当する試験も2009年の制度改正を目処にスキルレベル4に統合されている。
どの時期においても、情報処理技術者試験の中で難易度・専門性・対外的評価の高い区分を指すという点は変わらず、試験で計ることのできる能力としては最高のスキルレベルであることから、いずれの試験区分も各技術分野において事実上の国内最難関の試験にあたる。
これらに合格することはITエンジニア、広義のシステムエンジニア(SE)の能力認定に有効な手段となる。
そのため、省庁・裁判所・役所・民間企業では合格者への報奨一時金、昇格・昇給、採用条件の基準として扱われることが多い。
また、公共機関や民間企業のシステム開発案件への入札条件として、高度情報処理技術者の保有人数を指定されることがあり、大手IT企業では、技術者への資格取得奨励を経営戦略の目標に設定している例も見られる。
高度試験の対象となる区分
現在、以下の9区分が高度試験の対象となっている。
試験区分名 | 略号 | 重点分野 | 実施時期 |
---|---|---|---|
情報処理安全確保支援士試験 | RISS、SC | サイバーセキュリティ | 春・秋 |
ネットワークスペシャリスト試験 | NW | コンピュータネットワーク | 春 |
データベーススペシャリスト試験 | DB | データベース | 秋 |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | ES | 家電や自動車などの組み込みシステム | 秋 |
システムアーキテクト試験 | SA | システムアーキテクチャ | 春 |
ITサービスマネージャ試験 | SM | ITサービスマネジメント | 春 |
プロジェクトマネージャ試験 | PM | プロジェクトマネジメント | 秋 |
システム監査技術者試験 | AU | システム監査 | 秋 |
ITストラテジスト試験 | ST | ストラテジー(経営戦略、システム戦略) | 春 |
かつて対象となっていた試験区分
※一部のみ掲載。
- プロダクションエンジニア試験 → 2000年廃止。ソフトウェア開発技術者試験(現在の応用情報技術者試験の前身)に移行。
- 情報セキュリティスペシャリスト試験 → 情報処理安全確保支援士試験に移行。
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験 → 情報セキュリティスペシャリスト試験(現在の情報処理安全確保支援士試験の前身)に移行。
- テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験 → 情報セキュリティスペシャリスト試験(現在の情報処理安全確保支援士試験の前身)に移行。
- システムアナリスト試験 → ITストラテジスト試験に移行。
- 上級システムアドミニストレータ試験 → ITストラテジスト試験に移行。
特徴
いずれの試験区分も、午前1・午前2・午後1・午後2の4段階の形式で出題される。
午前1から順に採点され、不合格点であった場合は、その時点で採点は中断され不合格。
一度の試験で4段階すべてが合格基準以上だった場合のみ、最終的に合格となる。
午前1試験は、全試験区分で共通のマークシート形式・選択式問題が出題される。
情報セキュリティを含むストラテジー・マネジメント・テクノロジー系の全分野が対象である。
なお、応用情報技術者試験合格、または、高度試験のいずれかで合格、もしくは、午前1試験が基準点以上であれば、2年間は午前1試験が免除される。
午前2試験は、各試験区分毎に重点分野が異なるマークシート形式・選択式問題が出題される。
情報セキュリティ分野はITストラテジスト試験およびプロジェクトマネージャ試験の試験範囲から外されていたが、平成26年春試験以降は出題範囲となった。
これにより、情報セキュリティ分野はすべての試験区分で出題範囲の対象となっている。
午後1試験は、各試験区分に応じた長文の事例解析問題が出題される。午前試験と異なり、記述式となる。
午後2試験は、各試験区分に応じて記述式もしくは論文課題形式で出題される。
論文試験
高度情報処理技術者試験区分の中で、ITストラテジスト試験、システム監査技術者試験、プロジェクトマネージャ試験、ITサービスマネージャ試験、システムアーキテクト試験は午後2の問題で3000文字程度の論文課題を課している。
これは、技術系でありながらそれぞれの立場で第三者に状況を説明することが必要とされるためであると考えられる。
そのため、技術のみを深く追求するだけでなく、与えられた問題から的確に情報を把握し、正しく伝達するための技量を論文形式で表現する能力が必要となる。
課された設問に対して、実務経験を基に具体的に論述する必要があり、多くの受験者にとって難易度が高いと認識されている。
実施スケジュール
試験の機会は、下記のとおり春期(4月)と秋期(10月)の年2回である。
ただし、情報処理安全確保支援士試験を除き、実施されるのは春期または秋期の年1回のみである。
ネットワークスペシャリスト試験、システムアーキテクト試験、ITサービスマネージャ試験、ITストラテジスト試験は春期に実施される。
データベーススペシャリスト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験、プロジェクトマネージャ試験、システム監査技術者試験は秋期に実施される。
2020年度から年1回の区分の春と秋が入れ替わった。(例えば2019年度まではネットワークスペシャリストが秋に、データベーススペシャリストが春に実施されていた)
なお、高度試験で唯一、情報処理安全確保支援士試験のみが、春期と秋期の年2回実施されることになっているが、これは日本政府が国策としてサイバーセキュリティの専門家を確保することを目標としているためである。
その他
- いずれかの高度試験または応用情報技術者試験(前身のソフトウェア開発技術者試験を含む)に合格することで、弁理士国家試験の一部科目が免除される。
- 応用情報技術者試験および一部の高度試験に合格することで、中小企業診断士国家試験の一部科目が免除される。
- 警視庁特別捜査官のコンピュータ犯罪捜査官、各地方警察ハイテク犯罪捜査官等IT関連職の任用資格である。
- 予備自衛官の任用資格である。
- 各中央省庁のIT関連職ないし業務改善関連職の課長補佐等の任用資格である。
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