概要
経済産業省およびIPA(情報処理推進機構)が実施している国家試験「情報処理技術者試験」の区分の一つ。略号ST。
スキルレベル4で、高度試験(高度情報処理技術者試験)の一種。
対象者像は「企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステムの企画及び開発を統括し新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者」としている。
超上流工程において、企業のトップマネジメントと共に、事業戦略・事業計画からシステム化計画の立案と実行を主導する戦略家(ストラテジスト)としての能力を認定する。
高度な経営戦略知識・IT戦略知識・コンサルティング能力を持ち、経営者の立場で、企業の経営方針を左右する意志決定能力を証明することから、経営企画や最高情報責任者(CIO)などの幹部候補、ITコンサルタントといった立場の者を想定した国家資格である。
当試験は、旧情報処理技術者試験のシステムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験(共にスキルレベル5)を前身とし、IPAの作成したロードマップにおける最終到達点という位置付けにあたる。
また、IT系の資格では唯一、弁護士、公認会計士、税理士、医師、技術士、一級建築士等と並び、厚生労働省によって「専門的知識等を有する労働者」に指定されており、労働基準法において特例扱いの対象となる。
形式的には他の高度試験と同じスキルレベル4であるが、これら歴史的な経緯や求められる水準・役割から、
「IT資格の最難関」「IT業界の司法試験」「高度試験の中でも最高峰の試験」と捉えられることが多い。
合格者の平均年齢は約40歳と高く、業界内でも経験を積んだ者が集大成として受験する試験と位置付けられている。
実施スケジュール
試験形式
午前1
試験時間50分。四肢択一式(マークシート使用)で30問出題され全問解答。
他の高度試験と共通のスキルレベル3相当(応用情報技術者試験の午前問題と同レベル)の問題が出題される。
満点の60%を基準点とし、基準点以上で午前1試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午前2・午後1・午後2は採点されない。
午前2
試験時間40分。四肢択一式(マークシート使用)で25問出題され全問解答。
「システム戦略」「経営戦略マネジメント」など、ストラテジー系の問題が中心に出題される。
満点の60%を基準点とし基準点以上で午前2試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後1・午後2は採点されない。
午後1
試験時間90分。記述式で4題出題され2題を選択して解答。基準点以上で午後1試験通過となる。基準点に達しなかった場合は不合格で、午後2は採点されない。
午後2
試験時間120分。論文課題形式で3題出題され1題を選択して解答。課題について実務体験をもとに概ね2000~3000文字程度で論述する。
A、B、C、Dのランクで採点され、Aランクで最終的に合格となる。Aランク以外の場合は不合格。
科目免除
下記の試験に合格又は基準点を得れば2年間、午前1の科目免除が受けられる。
その他
- 合格または午前1に基準点以上を得れば2年間、他の高度試験の午前1の科目免除が受けられる。
- 当試験に合格することで、弁理士国家試験の一部科目免除が利用できる。
- 当試験に合格することで、中小企業診断士国家試験の一部科目免除が利用できる。
- 予備自衛官の任用資格である。
- 警視庁特別捜査官の4級職(警部補)のコンピュータ犯罪捜査官の任用資格である。
省庁・裁判所・役所などでの階級評価試験として認知されており、国家公務員総合職採用試験、公認会計士試験、税理士試験などとともに最難関の試験として評価することが多い。
そのため公的機関のみならず、大手メーカーやサーチエンジン、テレビ局、銀行など、報奨一時金、昇格・昇給、採用条件となるなど民間でも評価する企業が多い。