鴛淵 孝(1919年 - 1945)は日本の海軍軍人。海兵68期。戦闘機搭乗員であり、太平洋戦争における撃墜王。戦死による一階級進級で最終階級は海軍少佐。
経歴
旧制長崎中学校を経て、1937年(昭和12年)4月、海軍兵学校68期に入校。
同期に直木賞作家・豊田穣(とよだ じょう、1920年 - 1994年)がいる。
1940年(昭和15年)8月卒業、鴛淵は香取乗組となり、練習航海を行う。
練習航海後の10月、鈴谷乗組。
1941年(昭和16年)4月、任海軍少尉。5月、第36期海軍練習航空隊飛行学生被仰付。
1942年(昭和17年)2月、同課程卒業。同月、大分海軍航空隊付、戦闘機を専修。3月、任海軍中尉。6月、同教程修了。同月横須賀海軍航空隊教官。8月、大分海軍航空隊教官。
1943年(昭和18年)3月、第二五一海軍航空隊分隊長。5月、ラバウルに進出、ソロモン・東ニューギニアにおける航空戦に参加。
同年9月、第二五三海軍航空隊分隊長。11月、任海軍大尉後、厚木海軍航空隊附。
1944年(昭和19年)2月、厚木海軍航空隊は第二〇三海軍航空隊と改称された。
4月、戦闘第三〇四飛行隊長に就任。5月、占守島進出、北千島防空に従事。10月、台湾沖航空戦に参加。同月、フィリピンに進出、捷号作戦に従事。11月1日、セブ島上空の空戦で負傷し内地に帰還して11月15日付で横須賀鎮守府附被仰付、12月5日付で佐世保鎮守府附被仰付となり別府の海軍病院で療養した。
1945年(昭和20年)1月1日、第三四三海軍航空隊(剣部隊、以下「343空」とする)戦闘第七〇一飛行隊(維新隊)の飛行隊長に就任、先任飛行隊長を務める。
同年7月24日、鴛淵率いる21機で10倍以上の米海軍機動部隊艦載機を豊後水道上空で迎撃。鴛淵は敵編隊に三回の攻撃を加えたがエンジンに被弾し、初島二郎上飛曹機に付き添われている姿を僚機が確認したのを最後に未帰還となった。この戦闘で、米海軍VF-49所属ジャック・A・ギブソン中尉が鴛淵機と思われる白色の胴帯を描いた指揮官機クラスの「紫電改」を午前10時15分頃に撃墜したことを報告している。 享年25。この日の343空の戦闘は昭和天皇から嘉賞された。
性格
- 妹思いの兄であり、妹の光子にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のレコードをプレゼントしたり、手紙も送っている。
- 343空司令の源田実大佐は、鴛淵は「性質温厚で、紅顔の好ましい青年であったが、こと戦闘となれば、その温厚さも吹き飛んでしまうような闘士」で、343空の戦果の裏には彼の卓越した空中指揮に負うところが大きいと評している。また343空の3人の飛行隊長(鴛淵、林喜重、菅野直)は兄弟のようであったという。
- 他にも「知将の鴛淵、仁将の林、猛将の菅野」「殺伐としたところがなく、品行方正だが、芯は強い。てきぱき仕事を進め訓練計画も理詰めでこなす。参謀になっても腕を振るっただろう」「学業・技量・人格ともに優れた青年士官の鑑のような人であった」などとも評価されている。
余談
- 戦後、部下の山田良市は、鴛淵に遺品がないことから自分の時計を鴛淵の遺品として届け、その時に妹の光子と出会い結婚に至る。
- 同期だった豊田は鴛淵の戦記『蒼空の器―撃墜王鴛淵孝大尉』を執筆している。
関連タグ
雁淵孝美・・・アニメ『ブレイブウィッチーズ』の登場人物で鴛淵が元ネタ。
雁淵ひかり・・・同上。妹の鴛淵光子が元ネタ。