An-2(Ан-2)は、1940年代後半にソビエト連邦で開発された単発レシプロ・複葉の航空機。
開発を手掛けたのはアントノフ設計局。
東側諸国の軍や官庁を中心に、物資や人員の輸送および空挺降下、農薬散布、消防、或いは旅客や貨物を運ぶ地方の民間航空事業など多くの用途に使われているワークホース的な機体である。
ソ連で生産されたものの他にライセンス生産された機体も含めて、17,000機以上が製造されたベストセラー。
概要
現在実用機として用いられている複葉機の中では最大クラスのサイズである。
全長12m 巾18m程で、貨物約2トンないし人員12名程度を輸送できる。
操縦士は2名でコックピットの座席はサイドバイサイド(並列配置)。
エンジンは星型空冷9気筒のASh-62(1000馬力)、最高速度は250km/h程度で巡航速度は200Km/hに満たず鈍足な機体であるが、50km/hでも失速しないため、低速でも安定した飛行が可能とされる。
主翼面積が広い複葉機であるため離陸距離(滑走路)が短く済み、主脚が頑丈でさほど整備されていない滑走路でも使用可能である。
機体には先進的な技術は用いられておらず、総じて厳しい環境や僻地、発展途上国でも扱いやすい機体であり、東側諸国や親ソ連政権の各国では非常にポピュラーな存在であった。
主脚の車輪をソリに換装して積雪地での運用を可能にしたタイプや、同じくフロートに換装して水上機(An-2V)としたものも存在する。
使用
登場以来、多くの社会主義国や発展途上国で小型輸送機として使用されたほか、中国やポーランドなどでライセンス生産された。
ベトナム戦争では、社会主義陣営である北ベトナム側によって軽爆撃機として使用された。
現在でも、ロシアやウクライナなどではパラシュート降下の訓練に用いられる機体である。
北朝鮮では、工作員や少人数の特殊部隊を侵入させる為に中国製と見られる機体が用いられている。が、2009年に韓国で起きた事故によって南側でも同じAn-2が使われているという事実が明らかになった。(軍は長らく使用を認めてこなかった為、どうやら特殊な用途らしい)
ソ連時代末期には、アントノフ設計局によってAn-2をターボプロップ化したAn-3も開発された。
2020年には、アゼルバイジャンがアルメニアの軍事拠点を攻撃する際、無人機(ドローン)として改造されたAn-2が、対空ミサイルの位置を炙り出すためのデコイとして使用された。