概要
タカキツヨシによる少年漫画。現代に生きる「隠密」たちの「物ノ怪」との戦いを描く。
作品名からわかるように本編中の描写は黒色の印象のものが多い。戦闘シーンは筆による描写が多用され、禍々しさや鮮烈な迫力の表現に成功している。
『ジャンプスクエア』(集英社)にて2017年2月号から2018年4月号まで連載され、2018年4月11日より同社のWEBコミック配信サイト『少年ジャンプ+』にて月一で配信。2018年7月11日に最終話である19話が配信された。
コミックスは全5巻。最終巻は2018年8月3日発売予定。
『BLACK TORCH(黒の灯火)』は、主人公たちの所属するチームの名前。
ストーリー
動物の言葉がわかる少年・我妻弍郎は、ある日一匹の瀕死の黒猫・羅睺を助ける。羅睺は悠久の時を生きる「物ノ怪」、その中でもかつて「黒き凶星」と呼ばれたほどの強力な存在であった。
その力を狙って彼らの前に突如現れた物ノ怪から羅睺を守ろうとし、弍郎は重傷を負ってしまう。羅睺は弍郎と融合し、彼の命を救うことを選ぶ。
そして協力して物ノ怪を撃退した二人の前に現れた集団・「公儀隠密局」。彼らとの接触により、弍郎は物ノ怪との戦いに巻き込まれていく。
登場人物
- 我妻 弍郎(あづま じろう)
動物の言葉がわかる少年。忍者の末裔であり、幼少の頃より祖父から忍びの体術の基礎を叩き込まれる。身体能力も高い。伝説の物ノ怪・羅睺との融合により、強大な力を持つことになる。
普段から喧嘩ばかりしており口も悪いが、曲がったことが嫌いで真っ直ぐな性格であり、人間も動物も物ノ怪も対等な存在として向き合う人物。
打たれ強さと根性を生かした近接格闘を得意とする。戦闘時はいつもステゴロ。
- 羅睺(らごう)
かつて「黒き凶星」と恐れられた伝説の物ノ怪。黒猫の姿をしており、背中に日輪のような白い紋様がある。瀕死のところを弍郎に助けられ、自分を守るため重傷を負った彼と「融合」することにより救う。弍郎とは口喧嘩が絶えないものの、信頼関係のようなものが築かれつつある。
- 鬼子母神 一華(きしもじん いちか)
『公議隠密局』特務二課の戦闘員で、本作のヒロイン。オレンジがかった赤髪をポニーテールにしている。代々隠密の家系だが、かつて母親を物ノ怪に殺されており、当初は弍郎を敵視していた。弍郎を拘束して護送したが、物ノ怪の襲撃に際して共闘したことにより態度が軟化。その後一緒のチームとなる。普段はそっけない態度も多いが表情は豊か。
戦闘時は小刀と拳銃を使用。スピードを生かした戦い方を得意とする。
- 桐原 零司(きりはら れいじ)
『公議隠密局』特務二課の戦闘員。黒髪短髪のメガネで、左眉に傷がある。かつて将軍家剣術指南役を務めたほど斬撃に特化した隠密の名家・桐原家の出身。当初は弍郎を認めていなかったが、課長の提案による本気の喧嘩を通して、ある程度認識を改める。一見真面目だが、可愛い女子を誉めまくり下心を隠さない一面を持つ。日課は女子アナの分析。
- 司場 涼介(しば りょうすけ)
『公儀隠密局』特務二課課長。伸ばした髪を後ろで束ねており、常にタバコを吸っているやる気のない中年。弍郎の祖父の知り合いでもある。弍郎を拘束するが、隠密局の上層部に彼の有用性を訴え、「対物ノ怪特別機動隠密部隊・通称号《黒の灯火》」を設立する。
とらえどころのない性格で、やる気のない印象とは裏腹に陰で様々な思案を巡らせる。
- 宇佐美 花(うさみ はな)
『公議隠密局』特務二課課長補佐で、数少ない司場の部下。ショートヘアの小柄な女性で、頭にアホ毛がある。常に敬語で礼儀正しく、司場の唐突な指示に困惑することも多い。非戦闘要員のためか出番が少なく、コミックスのおまけページでもイジられた。
弍郎と零司の喧嘩を録画しながら「これぞ青春」と言うなど、男同士の友情が好きらしい。
- 我妻 寿正(あづま としひさ)
元・隠密局の人間で、弍郎の祖父。幼いころに両親を亡くした弍郎を一人で育ててきた。白髪に髭を生やした老人だがその実力は健在であり、熟練の体術を駆使して弍郎を圧倒する戦闘能力を有する。喧嘩ばかりする弍郎をいつも怒鳴る厳しい性格だが、それは彼を心配する優しさの裏返しであり、本当は誰よりも弍郎のことを気にかけている。動物と話せるような描写がある。
- 那智(なち)
かつて弍郎の家にいた白い大型犬。弍郎曰く「婆ちゃんみたいに優しいやつ」。弍郎に対して母や祖母のように接しており、小学生でいじめられていた彼を励ましていた。寿正とも会話できるらしく、敬語で話す場面がある。寿正とともに隠密の任務にも出向いていた模様。
- 芙蓉(ふよう)
隠密局に協力している物ノ怪。ツインテールの少女のような姿をしており、老人のようなしゃべり方をする。寿正とは彼が若いころから知り合いのよう。花のように実体化した妖気を操り、幻覚や浮遊に応用できる。使用時には側頭部から黒い2本の角が出る。
弍郎達の修行などに付き合っており性格は協力的。人間は食べていない。
- 久澄 陶子(くすみ とうこ)
隠密局でも最大の人員と権力を持つ『公議隠密局』特務一課課長。右目から頬にかけて傷跡がある女性。常に冷静かつ威圧的であり、時には冷酷とも思える判断を下す。司場のことはあまり快く思っていない。「乾」という男性、「姫塚」という女性、「時枝」という老紳士を部下に持っており、それぞれの実力はかなり高い。
- 咬牙(こうが)
高校生ぐらいの少年の姿をした物ノ怪。黒いパーカーを着ており、よくチョコバーのようなものを食べている。羅睺の力を手に入れようと弍郎と零司を襲撃し、二人を相手にわたり合う実力を持つ。性格としては弍郎と似ており、人間のことは見下しているが、同じ物ノ怪同士で争うことは嫌っている。戦闘時は右のこめかみから黒い角が生え、自身の血液から大剣のような武器を取り出して振るう。扉を出現させて離れた場所に移動することもできる。
- 天鬼(あまぎ)
目の周りに隈のような模様があり、頭髪の左が黒髪、右が白髪の青年の姿をした物ノ怪。角は西洋の悪魔のような形状。人間を倒すために羅睺を利用しようと考え、羅喉の封印を解いた張本人。
用語
物ノ怪
悠久の時を生きる妖。古来より多くの種類が存在し、山林で人知れず過ごす者もいれば、人間社会に溶け込んでいる者もいる。姿も人間や獣・鬼など様々。人に友好的であったり神として祀られていたりもするが、隠密局に追われたことにより人間を恨む者も。
寿命がなく、「半不死」とも表現される存在だが、物理的な致命傷を負えば死に、食糧をとらなければ妖気も落ちてしまう。妖気を底上げする唯一の方法としては「人間を喰らうこと」である。
作中の発言によれば、羅睺はそうしなくても妖気を発し続けることができる希少な存在らしい。
公儀隠密局
現代日本において物ノ怪に対処する隠密部隊。江戸時代の御庭番衆が、明治維新に伴い幕府から新政府に移ったことで存続してきたものであり、表向きには存在しない影の公的機関。国内外の諜報活動や情報操作を行っており、近年では要人警護も務める。物ノ怪の監視と排除も含まれるが、友好的なものとは協力関係を結ぶことも。
「頭目連」と呼ばれる上層部が存在し、その下にいくつかの課が存在する。特務一課は人員・権力ともに最大であり、窓際課である弍郎たちの特務二課とは正反対である。しかし長らく人間相手の任務ばかりであったため物ノ怪と渡り合える人員は少なく、そういった意味では特務二課は重要な存在となってくる。
対物ノ怪特別機動隠密部隊・《黒の灯火(ブラックトーチ)》
弍郎を隠密として運用するために、司場が新たに設立した部隊。司場が直接指揮を執り、彼を含め補佐の宇佐美、戦闘員の弍郎・一華・零司の5名で構成された少数精鋭の試験部隊。本来物ノ怪の事件の管轄は特務二課であり、彼らが直接動くことで事態の収束を計る。
本作の作品名はこの部隊名からとっている。
結界
物ノ怪が発生させる妖気の霧。包まれた場所は一時的に物ノ怪の領域である「隠世(かくりよ)」となり、人間の「現世(うつしよ)」から隔絶されてしまう。広い範囲に展開するほど術者には大きな負担がかかる。
乙型隠密服・改
隠密用の戦闘服。隠密局の大半は黒いスーツを着用しており、隠密服を着ているのは現状特務二課のみ。耐熱・耐圧・耐刃・防弾・絶縁・防水、そして身体能力を強化する人工筋肉としての特殊繊維を搭載している。そして透明化の「量子迷彩偽装形態」の機能も持ち、さらに「改」には普段着に偽装する「量子迷彩偽装形態」が追加された。ただし量子迷彩機能を使用中は性能が落ちてしまう。
妖気中和機能である程度の結界を突破することも可能。
憑依
生物を依り代として対象と融合する術。妖気の全てを使い切る非常に強力なものであり、使用した物ノ怪自身にも解除はできない。
生物ではなく無生物を依り代とし、物ノ怪を強制的に憑依させることを「封印」と呼ぶ。その際には妖気を抑える希少鉱石「殺生石」が用いられる。身動きできない状態で妖気を吸われ続けるため、長く続くと物ノ怪も無事では済まない。羅睺も殺生石に封印されており、その影響で軽い記憶障害を起こしている。
余談
作者は黒い色の服を好むらしい。曰く「何色にも染まらないのに意外と何色とも合う」。本作もそういったものを目指しているとか。
因みに《黒の灯火》の戦闘員は弍郎・一華・零司と名前に一つずつ漢数字が入っている。