解説
III/IV号戦車(Panzerkampfwagen III/IV)は、第二次世界大戦期のドイツで計画されていたIII号戦車とIV号戦車の統合案。
対象となった2種の戦車は旧式化が著しく防御力に不安を抱えていたほか、III号戦車に関しては砲塔リング径の関係上で火力の強化が不可能となっていた。
そこで、2種の生産ラインを流用可能としつつ強化された新型戦車として数種類が計画されたものの、いずれも計画倒れに終わった。ここでは1944年春に立案されたものについて記述する。
1945年の夢
III/IV号標準車台(Einheitsfahrgestell III/IV)、後にIII/IV号戦車と呼ばれるものが存在した。
これはおおむねIV号戦車の改良型といったところで、武装に関しては変更が無いものの、砲塔駆動系がケーブル接続のため左右270°の旋回限度が生じたほか、車体の正面・側面装甲を傾斜配置することにより防御力の強化が意図されていた。
また、IV号戦車の更新に伴いIV号戦車の車台を流用するIV号駆逐戦車に関しても、III/IV号標準車台を利用した新型としてIII/IV号駆逐戦車(Jagdpanzer III/IV)が計画されることとなっている。
しかし、1944年からソ連赤軍が投入した新型戦車に対して性能不足と考えられたことから、III/IV号標準車台計画は同年夏に中止された。
一方、III/IV号駆逐戦車の開発計画はIV号戦車/70(E)(Panzer IV/70(E))への呼称変更を経つつしばらく維持されたが、1944年秋に将来的な駆逐戦車をパンター系、ティーガーII系、38式駆逐戦車系に統一するという方針が策定された後、消滅した。
防御力
通常のIV号戦車車体と比しての防御力強化の度合いは以下の通り。なお、ほとんどの場合に傾斜装甲は実質装甲厚以上の防御力を発揮する。
部位 | IV号(J型) | III/IV号 | J型比強化率 |
---|---|---|---|
前面上部 | 80㎜+80°⇒81㎜ | 80㎜+40°⇒124㎜ | +55% |
前面下部 | 60㎜+76°⇒61㎜ | 60㎜+30/45°⇒120/84㎜ | +96/37% |
側面 | 30㎜+90°⇒30㎜ | 30㎜+54°⇒37㎜ | +23% |
(傾斜角は水平+x度、垂直=90°で表記)
余談
- III/IV号自走砲車台
ナースホルン自走砲やフンメル自走榴弾砲に共通して採用されたIII/IV号自走砲車台(Geschützwagen III/IV)はIII号戦車およびIV号戦車の要素を流用したもので、実用段階に至り実戦にも投入されている。しかし、これは戦車としての利用を想定していなかった。