概要
グラフィック+テキスト形式での雑誌連載・テレビアニメ・テレビゲーム(PlayStation)の三つを主軸に、それぞれが相互補完しあうというコンセプトを持った、作品内容やその展開も含めて実験的なメディアミックス作品である。
企画がスタートしたのは1996年ごろであり、1998年3月ごろから本格的に展開し始めた。1998年3月にアニメおよび『月刊AX』(ソニー・マガジンズ)での雑誌連載がスタート、同年11月にゲームが発表されている。
世界観の根底には「存在は認識=意識の接続によって定義され、人はみな認識によって繋がれている。 記憶とはただの記録に過ぎない。」というテーマが存在し、少女岩倉玲音の体験を通じてリアルワールド(現実世界)とワイヤード(ネット上の世界、ひいては人々の無意識化における繋がり)の両方から世界と玲音の変化が描かれていく。
1998年当時のパソコン文化(ハッキングや自作PCなどはもちろん、デザインやデジタルアートなど分野を跨いでコアな内容が取り入れられている)に強く影響を受けており、また(特にアニメ版の)製作陣にはハッカーや「ギーク」と呼ばれるような存在が多かったことから、マニアックかつ精密なマシン・ガジェットの描写や、まだ一般に普及していなかったインターネットに対する価値観などが色濃く反映されている。
また、カール・グスタフ・ユングの提唱した「集合的無意識」の概念に絡めて、電脳世界と区別のつかない曖昧な現実世界への侵食・融合といった、同じく非現実でありながら現実でもある精神世界とネットワークのリンク、人々のコミュニケーションと内部世界の構築も大きなテーマとなっている。
日本はもちろん、アニメ版を中心に海外でも根強い人気を誇り、発表から20年以上経ってもファンコミュニティが活動を続けているほどである。
各メディアごとに概ねメインスタッフは共通しており、原案:上田耕行(production 2nd.)、アニメ版監督:中村隆太郎、脚本:小中千昭、キャラクター原案:安倍吉俊(アニメ版キャラクターデザインは岸田隆宏)といった面々が主軸となっている。
また、2009年には小中と安倍と中村の三人が主軸となって新たなメディアミックス企画『ですぺら』が立ち上げられたが、中村の死去により企画は終了している。
アニメ版
メインスタッフ
1998年春からテレビ東京で放送された。また、半年遅れでテレビ大阪とテレビ愛知でも放送された。
各メディアミックスの中でも通信技術用語を随所に用い、当時のリアルなコンピュータ関係の描写が特徴的な作品であり、セル画とCG、実写の入り混じった独特の画面構成により、暗澹たる1990年代末の時代の雰囲気が漂っている。
放送当時には普及の端緒についたばかりだった携帯インターネット端末(携帯電話、スマートフォンに相当)や、研究段階だったVR/AR対応ゴーグルなどが(現実とは完全に同じ形というわけではないものの)一般に広まった、人々が時間や場所を問わず常につながり続け、それが現実世界と複雑に絡まる世界が描かれており、ある意味では時代が追いついたと言えるかもしれない。早すぎた作品と言われることも。
一方でキーボードとアンテナがついたゴツい「未来」の携帯端末や、アナログの表現と両立しつつデジタルでの作業が浸透し始めたばかりの1990年代らしいフォント・エフェクトなど、レトロフューチャー的な楽しみ方もできる。
あらすじ
コミュニケーション用コンピュータネットワーク端末「NAVI」が普及した世界が舞台。
中学生の岩倉玲音は、死んだはずのクラスメート四方田千砂からのメールを受け取る。その日以来、玲音は見えないはずのものを見るようになる。千砂のメールの言葉に興味を持ち、大型の「NAVI」を手に入れるが、それ以来更に奇怪な事件に巻き込まれていく。
「プレゼントデイ プレゼントタイム」
オープニングで象徴的に用いられるセリフ。意味としては「今日、今この地点」となる。
ゲーム版
制作はSR-12W / PIONEER LDC.が手がけた。
公称ジャンルは「アタッチメントソフトウェア」。攻略性、競争性のある「ゲーム」というよりは「映像ファイル集」に近い。
プレイヤーはネットワーク内に散らばった『lain』に関する記憶を集め、lainと彼女の周りで何が起こったかを推測していく。
アニメーションを用いた動画ファイルとボイスドラマ形式の音声ファイルが交互に繰り返され、これらを視聴していくことで新たな情報が収められたファイルを入手していくことが主な目的となる。
基本的にできることは「ファイルの再生」(とホーム画面で過ごすlainの観察)のみであり、ストーリーの分岐などは存在しない。エンディングと呼べるものは一応あるが、明確に結論が示されるわけではなく、あくまでストーリーの解釈と、そこから導き出される結論はプレイヤー自身に委ねられている。
同じく「アタッチメントソフトウェア」を謳う『NOëL 〜La neige〜』とはスタッフの多くが共通しており、システムのほか、方向性は真逆であるものの、現実と仮想世界の境界が曖昧になるようなプレイ感覚や、断片的な情報を集めて物語の全容を想像していくという遊び方が類似している。
ゲームアーカイブでの配信や移植、公式でのリメイクなどは行われていないため、出荷台数がそれほど多くなかったことと併せてかなり入手困難な状況にある。
あらすじ
アメリカの大学院を卒業したばかりの新人カウンセラー・米良柊子は幻聴に悩まされる中学生の少女・岩倉玲音の担当を受け持つことになる。
玲音はカウンセリングにより順調に回復しているように見えたが…
登場人物
ゲーム版
アニメ版
二次創作の扱いについて
発表から20年以上が経った2019年、制作に携わった上田耕行によって「商業展開可能」な二次創作ガイドラインが公開された(詳細は下記外部リンクを参照のこと)。
2028年7月6日までの二次創作に関して商用・非商用関係なく無償許諾をするという物である。具体例として、3DモデルやVR・AR・MRコンテンツへの展開などが挙げられている。
ただし、本編素材そのままの使用は不可。今回の許諾は個人の為、法人の場合は別扱いとなる事も注意が必要である。
関連動画
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個別
毎月01日はlainの日 lainを好きになりましょう/lainを好きになりましょう!/玲音を好きになりましょう
lain100users入り lain500users入り lain1000users入り lain5000users入り lain10000users入り
- 清水香里(玲音役。本作が声優デビュー)
- iMac:本作後半に登場するコンピュータ。当時登場したばかりの機種である。
- 水谷絵理:アイドルマスターDSの主人公の一人。彼女のシナリオは本作の影響を受けている部分が多い。そもそもアイドルマスターという作品全体が影響を受けていると見られアイドルマスターワンフォーオールではそのまま「玲音」という名前のキャラクターが登場する。
- 鳩羽つぐ:本作からの影響があると推測されているバーチャルYouTuber。
- NEEDY_GIRL_OVERDOSE:2022年に発売されたADV。一部本作からの影響があると推測されており、実際に企画・原案のにゃるらは以前からlainのファンであることを明かしている。
- ありすインサイバーランド
表記ゆれ
serial_experiments_lain / serialexperimentslain / シリアルエクスペリメンツレイン